しょぼしょぼ雨の降る日などに現われて人をびっくりさせたりするおばけで、豆腐のおつかいスタイルが特徴。
三世河竹新七の作詞による常磐津の一曲『蜘糸宿直噺』[くものいとおよづめばなし…明治22年]に「是は葛西の源兵衛堀、川童[かっぱ]にかいる竹の笠、みぞふる雨も雪の日も子供は風に小商い」という詞があるように、かっぱや、たぬきなどの化け種目の一ッとして親しまれていました。
☆ 莱莉垣桜文 附註
仮名垣魯文『東海道中栗毛弥次馬』池鯉鮒 曰
北「弥二さんモウ宿屋のあるとこまではたんとあんめえ
弥「そうョ二三丁だと思ッたが夜の道だからよっぽど遠いなァ
北「それにこの逢妻川からかっぱが出ると言ふこったが今夜の様なしょぼしょぼ雨の降る晩にゃァ出かけるかも知れねへ気をつけて行こうぜ
弥「なんのお前はもとが蔭間だらうかっぱとは親類だそんなに怖がるなあった所がたかが尻子玉を抜かれる斗りだ
北「串戯(じゃうだん)じゃねへ小気味(こきび)がわりぃ晩だ急がう急がう
弥「ヲヤヲヤヲヤヲヤ向かうの土橋(どばし)に白いものが見へるなんだらう
ト段々ちかづき提灯に透かし見れば小さな小僧が豆腐と徳利を持ち大きな笠を冠りつつちょこちょこと歩み来るを北八はこれこそ世に言ふ豆腐小僧のかっぱのばけもの亦はたぬきかむじなならんと思へばびっくりキャッと言ふて後ろのかたへひっくり返るに弥二もぶるぶる半丁斗り迯げてやうやく心づきあとへ戻れば小僧は居ぬゆへ腰の抜けたる北八を肩に掛けて引きずり行く
〔万治元年 当世堂〕
「ばけこぞう」など、べつな呼び名も存在していて、呼び名もそう一定したものではありませんでした。
和漢百魅缶│2006.10.03
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