さなだやまのようかい 真田山の妖怪

さなだやまのようかい(真田山の妖怪)

安永3年(1774)、山寺[やまでら]というおさむらいが摂州の真田山をとおった時に出会ったというおばけで、誰かの姿はまったく見えないのに後ろから誰かが話しているような声が聴こえてきたというもの。
気になりつつも歩いていると、後ろから妙な虚無僧[こむそう]が町人と一緒に歩いて来て、「この虚無僧こそ妖怪なるべし」と感じた山寺がものすごい勢いでふり返って見ると、町人が腰をぬかしただけで、妙な虚無僧はいつのまにか消えていたんだトサ。

☆ 莱莉垣桜文 附註
橘南谿『北窓瑣談』曰
「あまりに不思議にてうしろを遥に見るに半町許[ばかり]も隔たりて羽織著[き]たる町人と天蓋[てんがい]を上にぬぎかけたる虚無僧と同道して物語し来るあり。此[この]虚無僧の顔を見るに塵がみにて作りたる顔のごとし。不思議に思ひながら行[ゆく]に耳もとの噺声頻[しきり]なり。山寺氏思ふに此虚無僧定[さだめ]て妖怪[ようくわい]なるべし。」

和漢百魅缶│2011.03.01
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