芸州加茂郡につたわるもので、子供のなかったおじいさんとおばあさんに「子供になってやろう」と言って来た「ままこじる」。しばらく一緒に暮らしていたら人間の男の子に成長しますが、ふと「泊まりにいって来る」といって消えてしまいます。
おじいさんとおばあさんが悲しんでいると、数日後に帰って来て「これをおみやげに持ってきた、欲しいものを言いながら木をきるとそれが出て来るよ」と、ふしぎなひかる斧[おの]をおじいさんに渡し、その斧のためにしあわせに暮らしたと言います。
☆ 莱莉垣桜文 附註
「かたつむりむすこ」はほぼ同じ展開のもの。「ままこじる」は「なめくじ」の方言で、「なめくじら」の転訛。もちろん、隣の悪いおじいさんがこれを真似して山でむりやり「ままこじる」を持って来て育てて、「そろそろ泊まりに行けよ」と追い出したら、何も出て来ない斧を持って来たので怒って地面を打ったら地面がパックリ裂けて吸い込まれてしまった、という悪人がわのおはなしも続きます。
和漢百魅缶│2012.04.23
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