ますばみのろうじん 枡食の老人

ますばみのろうじん(枡食の老人)

越前につたわるもので、ある酒屋さんにきたない老人がやって来て、枡酒をたのんだかと思ったら、あっという間に一升枡いっぱいのお酒をほしてしまうので酒屋さんが驚嘆。「枡食っぷりがすごいから酒はただでいいよ」と言うと老人はよろこんでもういっぱい。話をしているうちに「酒屋、お前の家では子の嫁をさがしとるだろう」と老人が言ってきたので「えぇそうです」と答えたら「なら、礼として世話してやろう」といってどこかに帰っていってしまいます。

すると、間もないうちに店の奥でドサッという音がして、すっぱだかの若い女が座ってたそうで、話をきいてみると「湯に入ってたら急にわきのしたがくすぐったくなって、気づいたらここにいた」と女がしゃべったので、あの老人は「てんぐ」だったんじゃなかろうか、とわかったんだソウナ。

☆ 莱莉垣桜文 附註
「枡食」というのは、枡からお酒をいっきのみすること。お酒に関する点では、「やまんば」が見た目より多く入る徳利を持って酒屋に来る話などもありますが、これは少しおもむきの違うもの。

和漢百魅缶│2012.06.05
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