大正のはじめごろ、防州の下松駅に現われたことがあったというもの。ぼろぼろな着物を着たきたないお坊さんで、「銭がないので、無賃で汽車に乗せておくれ」と駅員に話しかけて来たので、「そんなのはいかん」とおことわり。何度たのんでも駅員が首をたてにふらないので、「では乗らぬ、そのかわり汽車も動かぬぞ」と言い捨ててお坊さんはいなくなってしまったそうですが、その後、汽車が発進しなくなってしまい、駅員たちはびっくり困ったトカ。
☆ 莱莉垣桜文 附註
瓜をわけてあげなかったら瓜をぜんぶとられてしまった徐光の話や、弘法大師にいじわるしたら、芋が石になったとか、しぶい柿しかとれなくなったとか、井戸が涸れた、といった話に近いもので、道具立てがモダンになったものです。
和漢百魅缶│2012.12.12
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