予州喜多郡の茶谷と長田のあいだの道にあった「えんちょやぶ」という木がいっぱいしげってたあたりに出たという化けだぬき。
むかし、わっぱ(木で出来た曲げ物の容器)をかぶっておまわりさんや兵隊さんに化けてひとを化かしたりしてたそうですが、狩りの罠にはさまれて泣いてたのを、よしごろうというひとに助けられて以後、悪さをしなくなったといいます。
悪さをしなくなってからは、ひとが通りかかると「よしごろうよーい、よしごろうよーい」と呼ぶ声をたてたりしたそうです。
☆ 莱莉垣桜文 附註
「よーい」というのはひとを呼ぶときのかけ声で「やーい」と同じようなもの。各地の狸のはなしには、悪さをしてたので人間に焼き殺されそうになったり、ぶたれたりした狸が、その後、そのひとの名を呼んだりするようになったものがいくつもいて、これはそれに似た感じのおたぬき。
和漢百魅缶│2013.05.05
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