モンゴルのハルハ族につたわるもので、おおむかし、ある汗[ハーン]が世界随一の汗になろうとして「まずは全ての汗を殺そう」と考え、生み出したという巨大なつのを生やかした駱駝[らくだ]です。つのをつかって次々に汗や人間を突き殺していましたが、ある別の汗がこれを取り押さてこらしめ、以後は人間の荷を運ぶ家畜にし、いまの駱駝[らくだ]というものが生まれたそうです。
またその後、ボグが「アルスランとバルの祝言に招かれてて立派に着飾りをせねばならぬ、そなたのつのを貸してくれ」と頼んできたのでテメンがつのを貸したのですが、ボグはそれ以後今に至るまでつのを返してないそうです。
☆ 莱莉垣桜文 附註
「ボグ」は鹿「アルスラン」は獅子「バル」は虎のこと。駱駝がもともと殺人バイオ兵器のようなものとして生み出されたところが少し怖いですがその後のくだりはふつうの動物昔話になっていて、その突如の変貌がすごいです。
和漢百魅缶│2013.10.31
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