すいませんもーやりたいことをやってしまいました。
なんかテレビを見てて、子供の運動会で奮闘するお父さんと言う図に萌えてしまい(!)、衝動で書きたくなったのですが、いかんせん父親きゃらくたーなんぞ管轄外ですし。
と言うわけでオリジナルなのですが、それもそれでシリーズのくせにサイトに他のおはなしをいっこものっけてない状態だってのにしかもさらに完結後の未来のおはなしなんぞ書いてしまいましたあほですあはは。
ので、人物間に妙な人間関係が見え隠れしますが、無視して単発として読んでくださると嬉しいなん…。
気分的には原作者が出した同人誌ってテンションなんですが。
「おー」
「おー、じゃない。遅い」
手を上げて呼びかけると、あいさつより前に小言をいただいた。
悪い悪いと言いつつ悪いと思ってない事もお見通しのようで、結局眉間にシワを寄らせてしまうばかりだった。なんか昔からこんな顔ばかり見ている気がする。
「ったくよ、いくらなんでもこんな早くなくてもいいじゃねーかよ」
「なに寝ぼけたこと言ってるんだ、晴れ舞台だぞ、初の!」
ついさっき聞いたばかりのせりふをまたそのまま聞いた。初の晴れ舞台はそちらのではなくこちらのだと言うのに。結局はこちらの初めてにかこつけて自分たちの尋常じゃない気合を誤魔化しているのだ、この夫婦は(しかも厳密には幼稚園で済ませているからはじめてではない)。
ひとまず行くぞと持っていたやたらと重たい水筒を押し付けられると、歩き出した蒼梧のあとをとぼとぼとついていく。いい男とビニールシート、の組み合わせがなんとなくおもしろかった。
「あやめちゃんは?」
「先におまえんちに送ってきた。ていうかおまえらふーふ揃って同じこと言ってくれるな」
「悪いけど連帯感バッチリですので」
まだあたりはうす暗い。街頭の光とやっと昇り出した朝日がかろうじて道路を照らしているだけだ。
歩調が合ってるのに気づいて、うわ気持ちわりぃとわざとずらした。男と女ならともかく男同士はあまり嬉しくない。
「卯月も来れたら来るかもって」
あいつ今日仕事だからと言うと、隣を歩いていた蒼梧はわかりやすく顔を顰めて振り向いた。真夏が追いついて、ふたりは結局並んで歩いた。
「えー別にいいのに」
「おまえなぁ、あいつだって落ち着いたんだしいー加減にしろよな、それ」
「だいたい来てもらう義理は無いぞ」
「…そういうの大人気ねえっつうの」
もういい歳だろと付け加えると、あからさまに肩を落としたのがおもしろくて、追い討ちをかけるように言葉を続けた。
「あー、しかし年取ったよなお互い」
「言うな言うな。気づいてないフリしてんだから」
きっと本人よりその相方のほうへのコメントだろう。大台に乗ってからというもの、冗談めかして言っても睨まれることが多くなった。
それからもとりとめのない話をぽつぽつと続けていると、目的地を目の前にして気がついたように蒼梧がこぼした。
「おー、明るくなったと思ったら」
その言葉にうん、と顔を上げてみると、夕陽のようなオレンジ色の朝日がまぶしかった。
朝日なんか見るのいつ以来だろう。ってこないだ飲み明かしたときに拝んだばっかりだったな。
「あーちくしょう、何が悲しくて男ふたりで朝日なんぞ拝まにゃならんのだ」
などと言えば、それはこっちのせりふだとあっさり返されてしまった。
蒼梧がビニールシートを抱えなおした。校門を抜けると、すでに観客席には何枚かシートが敷かれていた。
(20040918)