トップエーイとの対話

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死にたい…

そのホールから、さらに奥に入ったところに喫茶店や、
パン屋のような店が幾つかありました。

そこでは、彼女に、そのときの様子を、
彼女自身が動きながら説明するように指示します。

そのあたりは改装されていて、
当時のままではなかったのですが、
戸惑いながらも何とか説明していました。

その説明によると、
彼女と彼は 「ここは気に入らないから出よう…」
ということになったそうです。

この間、どんは彼女の内の意志は受けていないようで、
ただ聞いていました。

そして…

「彼は、しめた! …という気持ちだったんだよね!」

「……」

我々も、その時の2人のように、そこには入らず、
もと来た通路を戻っていきます。

その時の、どんと彼女は、
あの時の 「彼と彼女」 を演じる必要があったようでした。

どんが 「どん」 として言います。

「やっと、体を休ませて、
乾いた喉を湿らせることができると思ったのにーっ!」

…と冗談ぽく言いました。彼女は笑っています。

でもこれは、どんの肉体の正直な叫びです。

でも…

「まだまだやることがある、まだ彼女に伝えることがある…」

という感じがしていましたので、
この流れに任せることにしました。

4日間、東京方面にいたのですが、とても疲れていました。
しかも寝不足が続いていて、歩くだけでも苦痛でした。
それに右足の裏は、皮が磨り減ったようで痛かったんです。(笑)

「まだまだ歩かされそうだ…」
何となく、そう感じていました。

彼女との対話が、今回の旅の最後の予定でしたから、
なんとか頑張って歩きました。(苦笑)

別れた彼について、どんが感じるままに彼女に話します。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

彼女は、男としての彼を、父親の姿と合わせて見ていた。
対立を続けてきた父親からの 「男」 の印象と、彼女の理想像とで、
彼女の中では、「男には、こうあってほしい!」 という
一方的な「歪んだ理想像」を作り上げていた。

そのため、彼の中に父親の姿を見ると我慢できなかった。
男に対する偏見がとても大きく、その歪んだ人間像は、
どうしても修正できないで今まできた。

そのために、どうしても素直になれずにいた。
それが、相手が彼女を嫌う一番の理由だった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

…と話しました。

彼女は、何も言いません。

彼女が、シュタイナーについて話し始めました。

どんは、再び彼女の内側を代弁していきます。
少しだけ話しかけた彼女の言葉から、
すぐに、その裏側や、その様子について、
こちらから先回りして説明してしまいます。(苦笑)

断片的ですが、次のような内容でした。

彼女が行ったアメリカの学校の先生の話題になると、
すぐに、どんが言ってしまいます。

「その先生は嫌いだったよね。
その人は女の人で、臨時の講師、といった人だよね!」

そのとおり、という反応でした。

宇宙の話とシュタイナーの話を組み合わせて
講義する先生がいた話を始めると…

「あなたは英語がよく分からないまま、宇宙と教育の関係の
講義を受けてはいたが…
実は、宇宙は彼の趣味であって、教育についての講義と、
それとは特に関係なかったんだ。
それを、そのように勘違いしていたんだね!」

これには返事がありません。
しかし、その先生には宇宙の趣味があったという認識はありました。
少し気を悪くさせてしまったようです。(苦笑)

でも、どんは、彼女の内の声を伝えただけでした。

英語はよく分からなくても、
彼女の内では、たとえ難しい英語でも、
それが持つ意味を、ちゃんと理解していたわけです。

これは、精神世界ではよく言われていることですが、
あの世に行くと、外国人とも自由に意思が通じるそうです。

肉体の無い、あの世での人間の交流は、
どんの言う 「内と内との対話」 と同じものなんですね!

現地で一緒だった日本人の仲間の話題になると…

「その人は、英会話が得意な人、でも文法は弱い…、でも、
現地の人と気楽に話せるだけの会話の実力がある人だったね!」

「だから、あなたは、その人をとても頼りにしていた」

彼女はうなずいた。

「しかし、その彼女は、あなたが迷惑だった。
というところもあったんだ。気づいてた?…」

「……」

「あなたが頼ってくるから…
仕方なくお付き合いをしていた…、という感じだった。
もちろん、それだけで付き合っていたわけじゃあないが…」

彼女は困惑の表情を表わします。

「彼女にとっては、あなたと2人でいることは、
身の安全のためでもあった。それに…、見知らぬ土地だから、
あなたがいてくれたおかげで、孤独にならずにすんだ…」

彼女は少しうなずきました。

「ある日、2人で歩いていると、現地の人達が
2人を見て、からかったことがあるけど、覚えてる?…」

「その時、その人は後ろを振り向いて、何か叫んだよね。
何て言った?」

「えーっ、分かりません!」

「いや、分かっている、感じるままに言ってみて!」

しばらくたってから…

「関係無い…?」

「そう!! そういったんだ、それは吐き捨てるように言った…」

「その人は、自分が太っていて、あなたがスマートだったから、
いつも劣等感を持っていた。そして、それを彼らに言われたんだ」

「だから、彼女は怒って言い返した。
関係ねーだろーっ!! という感じでね…」

「えーっ…、彼女…、そんなに太くはないですよ?」

「それは、あなたがそう思っていただけ!」

「彼女にしてみれば…
自分が太いことを、いつも悲しんでいたんだよ。
それに、いつも、あなたがくっ付いているため、
いつも比較されて見られているような気がしていて、
ますます面白くなかったんだ…」

彼女は黙ってしまった。

「これは、俺が言うんじゃないよ…
あなたの内がそう言っているのを、ただ伝えた。
ただそれだけだからね(苦笑)」

つまり、彼女の表では感じなくても、
彼女の内は確実に感じていた。…ということです。

それは、英語であっても、「言葉なき言葉」 でも、
「内同士では、全く関係が無い」
ということの証明だと思いました。

彼女は、スマートな体型で背も高いために、
普通の体型の人が並んで歩いても、太く見られそうだなー…
と思いました。これは、どんの想像です。

彼女は、自分の体型は父親似だと言いました。

「それだけでも、父親に感謝しなくちゃいけないね!(苦笑)」

「…(苦笑)…」

これは、どんの内と彼女の内の共通な想いだったと思います。

念のため、説明しますが…

これらの会話で、どんが言ったことは、
彼女からは一切、聞いていません。
でも、分かってしまうんです。

どんが言います。

「いままでの話の意味は… 分かる?」

「過去の自分の行いについても、
内は、もちろん、ちゃんと分かっていて、
その時も、ずっと、呼びかけていたんだ…」

「そして、それについて、今、気づかせてくれたんだね」

「……」

我々が、その建物を出たところで、

「二人目の、今の彼とは結婚するつもりはないね?」

どんは、いきなりそう言いました。

彼女は何も言いませんが、そんな気持ちのようでした。

その時に感じたことを、すぐその場で話してきたのですが、
きっと、その建物の出入口には、その言葉が現れてくるだけの、
その要因があったのだろうと思います。

彼女はその場所で、2度目の彼とは結婚しないことを
無意識のうちに決めていたのかもしれません。

彼女は、2人目の彼のときも同じ場所に行き、
自分を主張し、相手を試していたのかも知れません。

我々は、もと来た道を戻り始めます。

彼女は、その日、リュックのような、
よく自転車に乗っている学生が使っているような
袋のようなものを背負っていました。
「デイバック」というもののようです。

また、それはいつものことで、たとえ荷物が無くても、
それを背負っていると話していました。

それについて彼女は、腰が悪いために、いつも背中に
何かを背負うことで、腰が安定するのだと説明していました。

しかし…

「あなたは、腰は悪くないと言ってるよ、内がね…」

「今、あなたは、悲しい出来事を感じているから、
それを出してみて!…」

「それほど…、ひどい悲しさでは……ないけれど…
とても重要な出来事だったから…」

何のことだか分からない様子でしたが、
間をおきながら、少しずつ話し始めました。
もちろん、どんにも聞くまでは分かりません。

「それは、小さい時のことですか?…」

「ああ…、道で転んだこと…、
父の前を歩いていて転んで泣いたんです…」

「どっちへ?」

「前へ…、あっ、後ろへ…?」

「その話は、ちょっと違うよ!」

「本当は、父親が、あなたを後ろから蹴飛ばした…
それを、あなたの内は知っている…」

「その時、後ろに転んでしまい、とても痛かった。
そのため、それからは、身の安全のために、背中に
防弾チョッキ(笑)のようなものを付けることになった。
…そう言ってるよ!(笑)」

「そういう事実を、あなたの内は知っていたんだけど…
それは内に秘めたまま、今まで生きてきた…」

「もし、それが表でも分かっていたら、大変なことになるよね!」

我々は顔を見合わせて苦笑です。

「そういうことを、全て内だけでなく、表で感じてしまったら、
つまり、全部が分かってしまったら、どうなるか…?
きっと悲惨のことになるぞー!!(大笑)」

これについては、最後の方で詳しく話すことになります。
それは、とても重要なことでした。
そして、ちょっぴり悲しいことでもありました…。

歩いていると、突然、どんの足が止まります。
そこは、先ほど気持ち悪くなった所でした。

止まってから気がついたのです。
その場所だったことに…。

今度は、さっきとは逆に、彼女をフェンスの前に立たせ、
過去世での記憶を呼び戻します。
(実際は呼び戻すのではないそうですが…)

頭の上には鉄道が走っていて、その直下に我々はいました。

「さあーっ、もう分かっているはずだから、
それを口に出して!」

「もう目を閉じなくても出来る!」

「素直に感じるままに、それを言って!!」

「死にたい…」

「そうっ!!! そう言った!!」

「今生でも、今まで幾度も自殺を考えたことがあるよね?」

彼女は小さくうなずきます。

「過去世での、その時、そこにいた男、
つまり、俺が立っている所に、その彼がいた。
そして…、彼が、あなたに対して言ったことは?」

「…そんなこと言わないで…」

どんは、ちょっと首をかしげてしまいます。

そして、彼女の内から受け取ったことを、
そのまま彼女に伝えます。

「それは、あなたが、そう言って欲しい、
 という強い願望があったからだね!」

「……」

「彼の言った、本当の言葉を、あなたは強く否定しているため、
彼が実際に口に出したことを言いたがらないでいる!」

「……」

「彼は…、俺はイヤダ! 勝手にしてくれ! …と言った!」

「……」

「その時の男は、今の、二人目の彼ですよ…」

彼女は、うつむいてしまいました。

その場所は、過去世で、彼女が自殺しようとした所に
似ているようでした。

それを彼女の内が感じ、どんの内に知らせ、
どんの足を止めさせたのでした。
行きも、帰りも…。

我々は、また歩き始めました。

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どんは、小さい頃は、体が弱く、痩せていて、引っ込み思案で、
恥ずかしがり屋で、臆病で、消極的で、おとなしい子供でした。

つまり、「ひ弱な子」 でした。(笑)

しかし、意外なことに、精神は結構強かったんです。
いつも 「劣等感の塊」 ではありましたが…
それに押しつぶされることは無かったんです。

今になって、このことを考えてみますと…

そういう弱い肉体を持つことで、
精神面で、「何かを取得」 することを目標にして
生まれてきたように思います。

でもこれは、想像です。(笑)

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(続きます)


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