技術の散歩道 17
 プ ロ と は 何 か  
   
 プロフェッショナルという言葉には心地よい響きがある。日本語の玄人とはまた少し違った趣である。同じことを何年もやっていれば玄人にはなれるが、プロフェッショナルになれるとは限らない。受け身的な玄人でなく、プロにはもっと積極的な雰囲気を感じるのである。

 これらはアマチュアとか素人に対比した言葉であるが、あることに秀でていてそれで生活が出来る人、というような単純なことではない。スポーツでのプロも、プロ宣言するだけで昨日までのアマチュアが今日からはプロになれるわけで、本来のプロという言葉とは少し意味合いが違う。プロには、もっと人から尊敬される精神的な何かが必要のようだ。

 そこで、ここでは技術者のプロフェッショナルについて考えてみたい。私の考えるプロの技術者の要件とは以下のようなものである。

 まず第一に、プロとは定量的にものが言える人である。自分の技術分野の現状や動向を数値的にしっかりと掴み、未来に向かっての確かな指針を持つ人である。その定量的な指針は、時と共に変わってもいい。世の中で良く言われる頑固さはプロの要件ではなく、むしろ時代を先読みして対応しようとする柔軟さが重要である。耳学問だけでは、知識は豊富になっても定量性に欠け、それを役立てることが出来ない。したがって技術者としてのプロとは見做せない。

 第二に、プロとは任せなさいと言える人である。周りからの要請を断ったり、周りの期待を裏切るような人は、その理由が何であれ迫力はなく、プロとは言えない。難しい仕事でも「よし俺に任せろ」と言えるような人はまずプロに間違いない。たまたま予期せぬ事態が生じて期待にそえないこともあり得よう。しかしプロなら言い訳はしない。いつか必ずやってのける。安心して任せられる人のことである。

 第三に、プロとは正しく前を向いて歩く人である。上を向いて他人に媚びを売るようなことはしない。他人にへつらわず、他人を馬鹿にもせず、自ら正しいと信じる道をまっすぐ進む人である。自分のしていることに何らやましいことはなく、組織の中にあっては、決められたことはたとえそれに不服があってもきちんと守った上で文句を言える人である。決められたことが自分の性に合わないからといって、守らずに文句だけをいう人は決してプロではない。

 第四に、プロとは匂いを嗅ぎ分ける人である。自分の進むべき方向を、持ち前の鋭い嗅覚で感じ取れる人である。周りの声や雑音に悩まされ、悩み苦しむことはプロにもあろう。しかし自らの道を見失うようではプロではない。自らの道が間違ったとあとで分かっても、すぐ軌道修正のための的確な判断が出来る人である。

 第五に、プロとは何にでも興味を持ち、かつ、感動する人である。これ一つという道だけを歩んでいて、他の道には何の興味も示さない人はプロではない。他人の話に耳を傾け、感動し、少しでも良いところがあれば自分の歩む道に取り入れようとする人はプロと言える。

 第六に、プロとは次に何を知るべきかがわかる人である。技術の道を歩むかぎり、判らないことが実に多い。とくにシステムの開発では多くの技術の統合となるので、むしろ知らないことの方が多いはずである。そのようなとき、プロは次に何を知るべきかを知っている。自分の知識として何が欠けているかを知らない人は、仕事の計画も悪く、効率も良くない。何を知らないかを知っている人は、効率的に知らないことを知ることができるのである。

 第七に、プロとは自らが燃え、また周りを燃えさせる人である。自ら燃えても周りが燃えるとは限らないが、自ら燃えなければ、周りは確実に燃えない。情熱をもって周りに夢と重要性を語りかけ、周りの人にも自分の仕事と思わせることが出来ないと、良い仕事は出来ない。もし周りが、さらに周りに働きかけるようであれば、まさに燃えてきたという証拠である。

 第八に、プロとは夢を持ち、仕事を楽しむ人である。実現出来そうにない夢よりも、努力すれば実現できるかも知れないと思える夢が望ましい。単なる理想ではなく、熱くなれる夢である。しかもそれが実現されるとしたら、さらにその先の夢が待っているというように、手順を踏んだ一連の夢が望ましい。夢に向かって歩む道筋は、本来は苦しい。しかしそれを楽しさに転嫁できれば、足取りも軽くなる。実現する過程も楽しめるようならまさにプロである。

 第九に、プロとは10年の執念が持てる人である。たとえ仕事がうまく行かなくても、それが真に重要なものなら、たとえ10年掛かろうともやり抜こうとする執念が重要である。途中で失敗して一休みすることになっても、いつもその失敗を心に留めて、「いつか見ておれ」と再挑戦の機会を伺う執念が重要である。

 第十に、プロとは未知の分野に跳び込める人である。自分の今までの専門に大きなこだわりを持たず、何にでも挑戦しようとする気力を持った人である。今やろうとしていることを自分の専門に加え、その分野でも短期間で一流を目指す人である。ただし、未知の分野に跳び込んでばかりいて、一つも自分の専門がないというのでは困る。

 以上の十項目を要約すると、プロの技術者とは、自分の学術・技術分野をきちんと把握し、その分野の発展に尽きない興味を持ち、常に改革を目指して努力する人のことであろう。現状に安住しないで歩み続ける人のことのようだ。歩み続けるには自信と謙虚さの二面が必要である。自信がなければ前に進めないし、謙虚さがなければ正しい道を歩めない。その歩む姿や生活信条の中に、他人にはない精神的な逞しさと風格が隠されていて、そこに人は真のプロらしさを感じるもののようである。
(平成10年12月)