国際パターン認識連盟 IAPR



1 IAPRとは何か?
 国際パターン認識連盟のこと。正式名称を International Association for Pattern Recognition といい、略してIAPRと呼ばれている。数年の準備期間を経て1978年に正式に発足し、今では世界の主要40数ヶ国が加盟する国際的な研究者組織に成長している。この連盟の最大の目的は、パターン認識、画像処理、コンピュータビジョンなどの分野における研究活動の活性化と、国際的な研究交流の促進にある。


2 IAPRの会員は?
 IAPRに加盟できる会員は各国の学会に限られ、個人は会員となることができない。原則として1つの国からは1つの学会だけが加盟を許され、日本からは情報処理学会がIAPR創設以来の代表会員となっていたが、数年前から電子情報通信学会が代表会員へと変更された。ちなみに米国からはIEEE Computer Societyが会員である。なお、参加国を下表に示す(202311月現在)。
Argentina Australia Austria Belarus Brazil Bulgaria
Canada Chile China Colombia Cuba Czech Republic
Denmark Finland* France Germany* Greece Hong Kong
Hungary India Indonesia Ireland Israel Italy
Japan* Korea(South)* Macau Malaysia Mexico Netherlands*
New Zealand Norway Pakistan Poland Portugal Russia**
Singapore Slovenia Spain Sweden* Switzerland Taiwan*
Tunisia Turkey Ukraine UK* USA** Uruguay
Vietnam          
注) **印:理事4名、*印:理事2名、無印:理事1


3 IAPRの組織
 IAPRの組織は図1のようになっている。会長(President)、副会長(1st and 2nd Vice President)、総務担当理事(Secretary)、財務担当理事(Treasurer) 、および前期会長(Past President)が役員会(Executive Committee)を構成し、これがすべてを統括し、その運営にあたっている。各国は人数を登録し、それに応じて会費を分担し、その多寡によって14名の代表理事を出している。上表中、**印の国は4名の代表理事を、*印の国は2名の代表理事を、また無印は1名の代表理事を出し、全体で約60名からなる理事会(Governing Board)を構成している。この理事会がIAPRの最高意思決定機関である。

 現在この理事会には、2名の日本代表理事が参画し、運営方針の策定に寄与している。IAPRには幾つかの常任委員会と幾つかの技術委員会(TC:Technical Committee)がある。常任委員会は規約、表彰、教育など、IAPR運営にかかわる基本事項の改革・提言を行うものである。また技術委員会は、それぞれの特定分野ごとに、パターン認識技術の発展・交流を目指して活動している。日本からも各種委員会に活発な参加がある。
役員会
(Executive Board)
―――― 理事会
(Governing Board)
 会 長 (President)  各国代表理事   各国代表理事 
 第一副会長 (1st VP)  各国代表理事   各国代表理事 
 第二副会長 (2nd VP)  各国代表理事   各国代表理事 
 前期会長(Past President)   各国代表理事   各国代表理事 
 総務担当理事(Secretary)    各国代表理事   各国代表理事 
 財務担当理事(Treasurer)    各国代表理事   各国代表理事 


4 IAPRの諸活動


4.1 パターン認識国際会議 ICPR

 IAPRの最も大きな行事として、2年に1度ずつ開催されるパターン認識国際会議 ICPR International Conference on Pattern Recognition) がある。会議は招待講演、オーラル発表、ボスター発表などから構成され、合わせて8001000件ほどの発表がある。参加者は、世界各地からほぼ10001200名にのぼる。2006年には香港で第18回会議が、2008年には米国フロリダ州タンパで第19回会議が、2010年にはトルコのイスタンブールで第20回会議が、2012年には日本のつくば市で第21回会議が開催され、いずれも盛況であった。

 過去に第4回会議が1978年に京都(日本)で開催されて以来、2012年のつくばでの会議は34年ぶり、第2回目の日本開催となった。下記のURLにこのときの会議の状況が掲載されている。

         http://www.icpr2012.org/ 
 
 なお、ICPRの歴史と今後の予定ついては別項を参照されたい。


4.2 賞の授与

 このICPRの創設に中心的な役割を果たし、かつ初代の会長を務めたのが、故 King Sun Fu 博士(アメリカ)であった。その功績にちなみ、その遺族から寄贈された基金をもとに King Sun Fu Prize が準備されている。受賞者は会議の開会式で記念講演を行う慣わしである。今までの受賞者を下表に示す。過去に適任者はかなりおられたものの、残念ながらまだ日本からは受賞者が出ていない。

1988 Azriel Rosenfeld (USA)   2006 J.Kittler (UK)
1990 R.L.Kashyap (USA) 2008 Anil Jain (USA)
1992 Laveeb N. Kanal (USA) 2010 Horst Bunke  (CH)
1994 Herbert Freeman (USA) 2012 Rama Chellappa (USA)
1996 Teuvo Kohonen
(Finland)
2014 Jitendra Malik (USA)
1998 Jean-Claude Simon (France) 2016 Robert Haralick (USA)
2000 Theodosios Pavlidis (USA) 2018 Matti Pietikainen (Finland)
2002 Thomas Huang (USA) 2020 Ching Yee Suen (Canada)
2004 J.K.Aggarwal (USA) 2022 Tieniu Tan (China)

 この他に、ILC委員会 (Industrial Liaison Committee) が選定するBIRPA (Best Industry-related Paper Award) がある。これは、産業への貢献が最も期待できる論文に対する賞であり、その回の講演論文の中から事前に選定され、晩餐会の席上で表彰が行なわれる。またこの晩餐会では、雑誌 Pattern Recognition などのBest Paper Award Best Student Paper Award なども、併せて表彰される。2006年からは、若手研究者の奨励のために、J.K.Aggarwal賞が新設された。


4.3 Fellowの顕彰

 ICPRの晩餐会では、毎回、開催地特有のアトラクションが披露されたあと、IAPRの公式行事として上記の各種論文賞の授与式が行われる。その席上、Fellow委員会を中心に選定され、新しく認定されたIAPRフェローが紹介される。ICPR 2002では、世界各国から計18名、日本からは1名のフエローが新しく認定され、顕彰された。ICPR 2004ではさらに2名が、2006年には1名が、2008年には3名が、2010年には2名が、それぞれ認定された。これにより日本からは、表3に示すように、すでに20名を超えるフエローが誕生している。しかし2012年以降、受賞者は激減した。これは日本に適任者がいないのではなく、どうやら、適任者を日本からきちんと推薦するメカニズムが機能していないことを意味するのではないかと想われる。

1994 坂井利之 長尾 眞 高木幹雄 木戸出正継  
1996 辻 三郎 江尻正員 松山隆司 山本和彦  
1998 阿部圭一 白井良明 鳥脇純一郎    
2000 藤澤浩道 井口征士 中野康明 小沢慎治 西田広文
2002 田島譲二        
2004 大田友一 酒匂 裕        
2006 坂上勝彦          
2008 工藤峰一 井宮 淳 中川正樹      
2010 木村文隆 佐々木繁      
2012   (該当者なし)
2014   (該当者なし)     
2016 金谷健一 横矢直和      
2018   (該当者なし)     
2020 池内克史        
2022 村瀬 洋        


4.4 機関誌、論文誌の発行

  IAPRでは、その公式機関誌としてIAPR Newsletterを発行し、関連情報を流している。このNewsletterは年46回出版され、 IAPRの諸活動についての最新の情報が掲載されている。2006年ころから電子版に変更され、日本では電子情報通信学会と情報処理学会の関連研究会会員を中心に、メールでその出版が通知されるようになった。 さらにIAPRでは、下表のような研究論文誌をその公式論文誌として認定し、この分野での活発な論文発表を奨励している。

略称 正式名称 出版社
MV&A Machine Vision and Applications Springer-Verlag
PRL Pattern Recognition Letters North-Holland
IJDAR International Journal of Document Analysis and Recognition Springer-Verlag


4.5 MVAなど、国際会議の主催・共催

 このICPRのほかに、各技術委員会が主催する会議やワークショップがあり、また他の多くの国際会議についても協賛し支援している。

 日本でも、2年に1度ずつMVA IAPR Conference on Machine Vision Applications)と呼ぶ会議が開催され、マシンビジョンの応用に関して広範な議論が展開されている。200212月には、初めて開催地が関東を離れ、奈良県新公会堂で開催された。その後、2005年につくばで、2007年に東大生研で、2009年に慶応大学日吉キャンパスでそれぞれ開催され、2011年には再度、奈良で開催された。さらにその後、2013年会議を京都の立命館大学で、2015年会議を東京の科学みらい館で開催し、いずれも盛況であった。


 なお、MVAの歴史については、別項を参照されたい。



5 ICPRIAPRの歴史

 国際会議ICPRは、国際パターン認識連盟IAPRが主催する2年に一度の会議であり、その会議の都度、理事会にて次の2年間の活動のために新役員が選ばれる。最初のころはまだIAPRが組織化されず、名称も IJCPR と、Jointを意味する J が入っていたが、第4回京都大会が IAPR組織後の最初の会議となった。以来、日本からの役員・委員としての貢献も大きく、また発表論文数、参加者数でも多く、毎回、米国に次いでほぼ2位の位置にあったが、最近では中国など、新興国からの発表と参加が増えてきた。ICPRの歴史を、IAPRの役員名とともに次表に示す。

ICPR IAPR 日本
代表
理事
開 催 地 発表数 会 長 第1副会長 第2副会長 国数
1973 第1回 ワシントン   81 King Sun Fu H. Freeman C. K. Chow    
1974 第2回 コペンハーゲン  141 King Sun Fu C. K. Chow H. Freeman





1976 第3回 コロナド  157 King Sun Fu M. Aizerman T. Vamos  
1978 第4回 京都 (Chair:
長尾 眞)
 231 H. Freeman M.S.Watanabe  (vacant) 13
1980 第5回 マイアミ  290 A. Rosenfeld P.W. Becker 坂井利之  


1982 第6回 ミュンヘン  306 J-C Simon T. Kohonen 長尾 眞  


1984 第7回 モントリオール  388 坂井利之 P.A. Devijver T. Pavlidis  
1986 第8回 パリ  343 P.A. Devijver P-R Danielsson M.D. Levine  
1988 第9回 ローマ  336 M.D. Levine 高木幹雄 S. Levialdi 22
1990 第10回 アトランティック・シティ  316 M.J.B. Duff S. Levialdi 江尻正員 25
1992 第11回 ハーグ  600 J. Aggarwal 辻 三郎 J. Kittler 26


1994 第12回 エルサレム  449 J. Kittler G. Borgefors 鳥脇純一郎 32
1996 第13回 ウイーン  703 R.M. Haralick E. Gelsema 木戸出正継 33
1998 第14回 ブリスベーン  484 E. Gelsema H. Bunke R. Kasturi  


2000 第15回 バルセロナ  973 G. Sanniti di
Baja
June
R. Kasturi H.Baird 37
2002 第16回 ケベックシティ  805 R. Kasturi W. Kropatsch 白井良明 38





2004 第17回 ケンブリッジ  951 W. Kropatsch K. Tombre S.Abrameyko 41
2006 第18回 香港 1168 K. Tombre S. Abrameyko 池内克史 42
2008 第19回 タンパ (Chair:
江尻正員 他)
1006 B. Lovell A. Antonaco-
poulos
I. Nyström 42
2010 第20回 イスタンブール 1162 D. Laurendau K. Boyer Tieniu Tan  
2012 第21回 つくば (Chair:
大田友一 他)
 942 K. Boyer Tieniu Tan A.Antonaco-
poulos
 
2014 第22回 ストックホルム    I. Nystrom M. Tistarelli S. Marinai 47

 



2016 第23回 カンクーン    S. Marinai M. Tistarelli E. Handcock  
2018 第24回 北京    A.Antonaco-
poulos
A.B. Albu L. Akarun 50


2020 第25回 ミラノ   Daniel Lopresti Lale Akarun Terence Sim 50
2022 第26回 モントリオール   Arjan Kuijper Lale Akarun Cheng-Lin Liu 49
2024 第27回 コルカタ              
2026 第28回 リヨン              


6 MVAの歴史

 1988年のICPRは、当初北京で開催される予定であった。当時の中国は、まだ工業国としての評価は低く、欧米からの出席者も激減するのではないかと懸念された。そのため日本の研究者が中心となって、日本でICPR直前に関連会議を開催することで、日本が飛び石となってICPR北京への参加者が増えるようにという配慮がなされた。しかしこのICPR北京は、その後、中国入国の際の人数制限など、政治的問題で混乱し、開催地が急遽ローマへと変更された。しかし、日本で計画された会議 CV 88 (IAPR Workshop on Computer Vision) は中止されることなく、そのまま継続開催された。このCV 88が発祥となり、以後 MVA (IAPR Workshop on Machine Vision Applications) へと名称を変え、現在もなお継続して2年に一度ずつ開催されている。下表にその歴史を示す。ただし第9回は種々の理由で少し遅らせ、20055月につくばで開催された。なおこの回から、Workshop Conferenceへと衣替えし、IAPR Conference on Machine Vision Applicationsという名称となった。

会議名称 開催場所 都市 主協力
機関
発表
チェアマン
General Organizing Program
1988 CV 88 私学会館 東京    114 辻 三郎・
木戸出正継
高木幹雄
1990 MVA 90 日立中央研究所 東京 日立 113 江尻正員
P.Jonker

R.Kasturi
高木幹雄 坂上勝彦
1992 MVA 92 NEC Super Tower 東京 NEC 146 高木幹雄・
田島譲
江尻正員 末永康仁
1994 MVA 94 川崎市産業振興会館 川崎 三菱 139 高木幹雄
前田 
江尻正員 小澤慎治
1996 MVA 96 慶応大学 東京 慶大 134 高木幹雄・
小澤慎治
坂上勝彦
1998 MVA 98 富士通幕張ラボ 千葉 富士通 136 高木幹雄・
佐々木繁
池内克史
2000 MVA 2000 東京大学 東京 東大 148 高木幹雄・
池内克史
田島譲二
2002 MVA 2002 奈良県新公会堂 奈良 奈良
先端大
156 木戸出正継
高木幹雄
輿水大和
2005 MVA 2005 つくば国際会議場 つくば 産総研 145 坂上勝彦・
高木幹雄
久野義徳
In So KWEON
2007 MVA 2007 東大生研 東京 東大 137 田島譲二 池内克史 酒匂 裕
2009 MVA 2009 慶応大学 横浜 慶大 122 斉藤英雄 前田賢一
2011 MVA 2011 奈良百年会館 奈良 奈良
先端大
144 山田敬嗣 喜多泰代
2013 MVA 2013 立命館大学 京都 立命館
大学
112 佐藤洋一 諏訪正樹
2015 MVA 2015 科学みらい館 東京 産総研 140 喜多泰代
石川 博
増田 健
B. Stenger
2017 MVA 2017 名古屋大学 名古屋 名古屋
大学
130 石川 博
岡田隆三
浮田宗伯
G. Mori
2019 MVA 2019 オリンピック記念
青少年総合センタ
東京 東芝   岡田隆三
浮田宗伯
牧 淳人
P.Favaro
2021 MVA 2021 名古屋国際会議場
(オンライン)
名古屋    65 浮田宗伯
数藤京子
川上 玲
Minsu Cho
2023 MVA 2023 浜松コングレス
センター
浜松     数藤京子・
工藤俊亮
井手一郎
Wei-Ta Chu
2025 MVA 2025  ー未定ー