社団法人 日本ロボット学会
日本ロボット学会誌 創立20周年記念号 会長挨拶 平成14年9月
創立20周年にあたって
(社)日本ロボット学会会長 江 尻 正 員
日本ロボット学会は、文部科学省をはじめ、関連する内外の諸学会・諸団体からの暖かいご支援を受けつつ、本年、創立20年目を迎えるにいたりました。お蔭様でこの間順調な発展を遂げ、今では世界的にもユニークな専門学会として、その地歩を固めるにいたっております。ここに、先輩諸氏ならびに会員の皆様の、これまでに至る並々ならぬご努力に対し、まずは深甚の謝意と敬意を表します。
当学会は、1983年1月に約800名の賛同者を得て設立されましたが、以来会員数は着実に増加し、現在では約4000名の参画を得ております。このうち海外からの会員は100名余を数え、少しずつではありますが国際的な学会への道を歩んでいるところです。今までの20年の歴史の中で、当学会は、ロボットに関する学術研究のみならず、産業用ロボット技術、計算機制御による知能ロボット技術、スカラ型を初めとする精密組立ロボット技術、マシンビジョン技術などの進展に積極的に関与し、応用技術の育成と産業の発展に直接・間接に貢献してまいりました。現在では、非製造業でのサービスロボットなどの新用途に向け、歩行技術を初めとする種々の新しい学術・技術の進展にも注力しております。引き続き今後も、工場の自動化、オフィスの自動化はもとより、環境・福祉・医療応用や防災・災害復旧・救助応用など、ロボット技術の多様な応用に向け、会員の皆様とともに歩んでまいります。
ご承知のように当学会の主要な事業として、現在、大きく次ぎの3つがあります。まず第1は、講演会・シンポジウム・研究会などの行事の開催です。当学会は、年間100件を越える行事を主催・共催・協賛・後援しておりますが、その中でもとくに重要な行事として、毎年秋に開催される学術講演会があります。お蔭様で最近では、600件を越える発表と、約1000名の参加者のある大きな会議へと成長しております。本年度の学術講演会は、大阪大学を会場に10月12日から14日まで「日本ロボット学会創立20周年記念学術講演会」と銘打って開催される予定であり、今まで以上に多くの参加者が期待されます。恒例の論文賞、研究奨励賞、実用化技術賞の表彰のほか、創立20周年を記念して新しく制定されたフェロー制度に基づき、第1回の「日本ロボット学会フェロー」が数名誕生する運びであり、同じくこの学術講演会の席上にて紹介される予定です。一方、当学会の共催する重要な国際行事の1つとしてIROSがあります。これはIEEEとともにRSJが会議タイトルに名を連ねたユニークな国際会議であり、SICEの協力も得つつ、当学会として最も力を入れて運営に参画している会議の1つです。本年はまもなくスイスのローザンヌで開催される運びとなっております。
事業の第2は学会誌の発行であります。創立以来今日まで、すでに第20巻目を数えております。とくに今年は、創立20周年記念事業の1つとして、会誌編集委員会が中心となり、当学会会員が過去に発表して世の中にインパクトを与えた著名な論文をDVD-ROMに収録・発行し、過日、本誌への綴じ込みによって会員の皆様に配布いたしました。これは、約30年前から数年前までの、すでに評価が定着した著名な論文100編余を集めたものであり、その論文を執筆した当時の実験風景や、当時の装置の写真やビデオも併せて収録することにより、我が国のロボット技術開発の歴史を物語る興味深い内容となっております。採録された論文の幾つかは、もともと当学会以外の学会に投稿され掲載されたものでありますが、今回、その発行元である内外の諸学会から快く転載許可を頂きましたことをここにご報告するとともに、この場を借りて厚くお礼申し上げます。会員の皆様の参考資料として、今後の研究開発に是非ご活用頂きますようお願いいたします。
事業の第3は欧文誌の発行であります。これは今では、当学会を特徴付ける重要な事業となっております。学会設立の数年後、国際的なロボット技術への関心の高まりに応えるため発行を開始し、今年で第16巻目を迎えるに至りました。発刊当初は、学会誌に発表された論文の英訳が主体でしたが、その後独立した編集委員会のもとで発行されるようになり、最近では、世界中から優秀なオリジナル論文を集めて掲載しております。お蔭さまで最近では、掲載された論文が他から引用される指標(インパクトファクター)も着実に増加しております。また、この欧文誌の使命の1つとして、日本で研究される技術の発信には今後も力を入れていく所存ですし、前述のIROS会議などで発表された論文の中から、とくに注目すべき発表を選定し、さらに詳細な論文として紹介するのも欧文誌の1つの役目として位置付けております。今後も欧文誌では、論文発表の場の提供とともに、新たな応用分野の記事の導入など、その内容の充実を図ってまいりますので、会員の皆様のご協力・ご支援を是非お願いいたします。
以上、当学会の最近の状況について概略をご紹介しました。今後もこれらの諸事業を通じて、会員の皆様のユニークな学術研究・技術開発を側面から支援させていただく所存です。また、若い次世代ロボット研究者・技術者の育成についても、現在、幾つかのロボット競技会で日本ロボット学会賞を授与するなど、地道な努力を開始したところです。今後も当学会は、会員の皆様とともに歩みつつ、繁栄ある未来にむけて社会に夢と希望を与え続ける努力を行ってまいります。またそれらが、単なる夢だけに終るのではなく、社会にとって有用な技術へと大成させて行く努力もまた、学会としての大きな使命と考えております。
以上、次ぎの20年に向けて日本ロボット学会がさらに大きく飛躍することを祈念しつつ、創立20周年に際しての私のご挨拶といたします。