No.47
ばぁちゃんの呟き

― 人としての「愛する心」を ―



山 口 紀 代


山口 紀代 (武生30会会員)
YAMAGUCHI, Kiyo

 旧姓住吉。1952年武生第二中学校、1955年武生高等学校を卒業。同年ミドリドレスメーカー学院に入学、1959年同校卒業。同年結婚し、その後、夫(銀行員)の転勤にて金沢、小松、敦賀の各市に居住し、1979年武生へ戻る。1984年現代俳句武生南俳句会に、続いて現代俳句水脈(みお)俳句会に入会。2009年に現代俳句協会会員となり現在に至る。この間、1985年〜1999年、武生市婦人ボランティア連絡会の指人形グループにて活動、1986年より真向法体操にも参加し、2001年からは日本舞踊も趣味としている。(福井県越前市在住)




 朱の橋を 押す子と曳く子の 車椅子
            力む笑顔に 緑の風吹く
       
 この歌は、俳句作りの私が書くのも変かも知れませんが、10年ほど前の大会で取上げていただき、心に残っている短歌です。穏やかなある日の午後のこと、友だちと式部公園へ遊びに行き、藤棚の下を巡って太鼓橋を渡り切ったところで出合った光景です。

 兄弟の少年二人が、祖母らしき人の車椅子を押して橋を登り渡ろうとしていましたが、勾配が強くてなかなか動かないようでした。その真剣さに惹かれ、近くにいた私たちも手伝って一生懸命に押したのですが、結局は駄目でした。手を振りながら去っていく兄弟の黄色いTシャツ姿が、大変清々しくて美しく、日野山を越して吹いてくる風も優しく心地よかったことを今でも覚えています。

 文化・文明の発達とともに、様々に広がる曲線が多くなり、次第に複雑になっていく現在の社会。でも、どんなに変化していっても、この少年たちのように、人としての「愛する心」を失わず、勇気と正しさを持って爽やかに歩んでいけたらと思っています。そしてこれからの若い人たちが、人間の未来についてもさることながら、より広く、地球の未来についても良く考えて進んでいって欲しいと心から願っています。

 以下に、私が最近詠んだ俳句を幾つか掲載させていただき、稿を終えます。


俳誌「海程」に掲載した句
  指なげく 文楽の夜の 白桔梗
オートバイ 除夜をぶちぬき 海へ行く
この大樹 銀河へ遊ぶ 始発駅
蟻流る 黄河の水に 出逢うまで
神父来る 森の匂いの 冬帽子
 
越前市俳句大会で詠んだ句
夏帯の 高さできまる 舞扇
空ばかり 掬って戻る 蜻蛉とり
菊着せて 命通わす 菊師かな
クレヨンの 向日葵どれも 空に咲く
眠る嬰の 拳にこもる 冬構


― 完 ―