死後の世界と魂はあるのか

生まれ変わりはあるのか

イントロダクション

それは、永遠の謎です。

Danny moorjani「突然、恐怖に襲われました。」

あの世を見た、という人もいます。

エベン・アレグザンダー3世「まるで布が裂けるように、目の前が開けたんです。」〔Eben Alexander III, M.D. Neurosurgeon(医学博士:神経外科医)〕

Peggy Kay, Ph.D「そこではもはや、もとの自分はなくなり、時間も、空間もなくなります。」〔Dept. of Religion, George Washington Univ.(学術博士:ジョージワシントン大学宗教学部)〕

Lakhmir S. Chawla, M.D.「人の命の終わりという問題は、もっともっと研究されるべき分野です。」〔Critical Care Physician(医学博士:救急救命内科医)〕

死は、すべての終わり?

Kevin Nelson, M.D.「死後の世界があるという証拠はありません。」〔Neurologist(医学博士:神経学者)〕

それとも、その先がまだあるのでしょうか。

ホーリー・アレグザンダー「まさに奇跡です。」〔Holley Alexander Wife of Dr.Alexander〕

〔「死後の世界」 LIFE AFTER LIFE〕

クリスティーナの事故

ドイツ、コブレンツ近郊。19歳のクリスティーナ・シュタインは、幼稚園の仕事を手伝いに行くところでした。毎日同じ道を通ります。しかしこの日はたどり着けませんでした。代わりに彼女は、死への旅路をたどることになります。彼女を車から助け出すのに、1時間半を要しました。

Hans-georg Kaulbach, M.D.「深刻な状況でした。大動脈に大きな損傷があったんです。体内で酷く出血していました。あの状態で、病院に運び込まれるまで持ちこたえていたこと自体、奇跡的でした。なんとか、出血を止めようとしていた時です。突然、彼女の心臓が止まってしまったんです。」〔Cardiac Surgeon(医学博士:心臓外科)〕

アレグザンダー一家

いっぽう、遠く離れたアメリカのバージニア州でも、アレグザンダー一家が、危機的な状況に立ち向かおうとしていました。

ホーリー・アレグザンダー「日曜日の夜、夫のエベンが体調を崩したんですが、最初はインフルエンザねと、あまり深刻には考えませんでした。」〔Holley Alexander Wife of Dr.Alexander〕

エベン・アレグザンダー4世「父は咳をしていましたが、僕らも…風邪だったので、気にせず寝ました。」〔Eben Alexander IV Son of Dr.Alexander〕

しかし、神経外科医エベンが感じていた痛みは、風邪の域を遥かに超えていました。

ホーリー・アレグザンダー「様子を見ようと思って部屋をのぞいたんです。発作を起こしていました。それはもう…なんていうか、苦しそうにもがきながら、震えていました。何か言ってと声をかけたんですが、夫は何も答えません。すぐに救急車を呼びました。」〔Holley Alexander Wife of Dr.Alexander〕

エベン・アレグザンダー4世「父は病院に担ぎ込まれました。」〔Eben Alexander IV Son of Dr.Alexander〕

ホーリー・アレグザンダー「あんまり激しく苦しんで暴れるものだから、点滴を打つのも一苦労でした。結局9人がかりで夫を抑えつけたんです。」〔Holley Alexander Wife of Dr.Alexander〕

そして、エベンは昏睡状態に陥りました。

エベン・アレグザンダー4世「辛かったです。…あの日、病室で初めて父の姿を見たときのことは、今でもはっきりと、覚えています。部屋は真っ暗で…そして、何とか父のベッドまでたどり着くと、父の顔からは、完全に血の気が消えていました。」〔Eben Alexander IV Son of Dr.Alexander〕

ホーリー・アレグザンダー「昏睡状態が続いていたんですが、でも一瞬だけ――牧師さんも一緒にいたんですが――夫が、叫んだんです。神様助けて、助けて、って。私は思わず牧師さんに、喋ったわ!って。」〔Holley Alexander Wife of Dr.Alexander〕

エベン・アレグザンダー4世「でもそれが、最後の言葉でした。」〔Eben Alexander IV Son of Dr.Alexander〕

原因は、抗生物質に耐性のある、珍しいタイプの細菌性髄膜炎でした。皮肉なことに、病気はエベンの専門である、脳を襲ったのです。

エベン・アレグザンダー4世「父のような場合、助かる確率は1パーセントから2パーセントだと。」〔Eben Alexander IV Son of Dr.Alexander〕

仮に助かっても、そのあとが問題です。

ホーリー・アレグザンダー「お医者さんの一人に、夫の脳の状態が、とても心配だと言われたんです。それは…つまり…命が助かっても、植物状態になってしまうかもしれない、ということです。それで…私は…涙が止まらなくなって。あれは本当に、最悪の、瞬間でした。」〔Holley Alexander Wife of Dr.Alexander〕

エベン・アレグザンダー4世「すごく不思議だったのは、抗生物質を3種類も投与されたのに、まったく反応がなかったことです。」〔Eben Alexander IV Son of Dr.Alexander〕

ホーリー・アレグザンダー「半ば覚悟してました。」〔Holley Alexander Wife of Dr.Alexander〕

エベンは、少しずつ、死に近づいていました。

Lakhmir S. Chawla, M.D.「普通、死ぬときは一瞬ではなく、段階を踏みます。多くの人は、脳死、イコール死と考えます。確かに脳死で人間らしさは失われますが、臨床的にはまだ、この段階では、安易に結論を下すことはしません。」〔Critical Care Physician(医学博士:救急救命内科医)〕

しかし、やがて命も燃え尽きます。

Lakhmir S. Chawla, M.D.「血圧が下がってゼロになれば、心臓が血を送り出さないので、呼吸は止まります。それでもまだ、電気的活動によって心臓は動いているんです。通常は、いよいよ臨終のそのとき、最後の息をつきます。そして心電図がフラットに。これが臨床的に、死亡したという状態です。…でもときには、死亡したと思われても、しばらくして息を吹き返す場合があります。ですから、死亡宣告をするときは、細心の注意を払います。」〔Critical Care Physician(医学博士:救急救命内科医)〕

エベンの身体は人工呼吸器によって生かされていましたが、脳は髄膜炎に破壊されていました。

ホーリー・アレグザンダー「私が一番つらく感じたのは、看護師さんが来て、夫のまぶたを持ち上げて、ペンライトで目を照らして、のぞき込むときでした。反応がないんです。瞳孔は大きくも小さくもなりません。」〔Holley Alexander Wife of Dr.Alexander〕

エベン・アレグザンダー4世「普通は瞳孔が収縮するんです。脳の制御機能が正しく働いている場合は、そうなります。でも父の瞳孔は、まったく反応しません。つまりバクテリアは、健康だった父の脳を、それほどまでに蝕んでいたんです。」〔Eben Alexander IV Son of Dr.Alexander〕

家族にとって、エベンは事実上の脳死状態でした。

クリスティーナの臨死体験 1

いっぽうドイツでも、クリスティーナの担当医たちが、苦戦をしていました。心臓は止まったままです。脳の機能が停止するまで、あと数分しか残されていません。

Hans-georg Kaulbach, M.D.「私たちは、除細動器を使って心臓を動かそうとしていました。同時に薬も数種類投与しました。出血が多すぎて、内臓に十分な量の血液が行きわたりません。クリスティーナを救うのは、無理かもしれないと思いました。」〔Cardiac Surgeon(医学博士:心臓外科)〕

クリスティーナの心臓は止まりました。ところがこのとき、死んだと思われた彼女の頭の中で、何かが起きていたのです。

Christina Stein「気が付くと私は、オペ室の天井の下を、ゆらゆらと漂っていました。手術台の上の自分や、ドクターの姿が見えました。話している内容も、全部聞こえました。凄く慌ただしくて、これは、生きるか死ぬかの瀬戸際なんだと気づきました。」

臨死体験について理解するためには、その内容に注目すべきだと考える専門家がいます。

Jeffrey Long, M.D.「臨死体験の話で共通する要素の一つは、いわゆる幽体離脱です。自分の意識が肉体を離れて、上から見下ろすようにして、その状況を見たり聞いたりするわけです。必死で蘇生を試みる医師の姿が見えた、と言います。」〔Oncologist & Near-Death Researcher(医学博士:腫瘍学者、臨死体験研究者)〕

クリスティーナに起きたことを、医学的に説明してもらいましょう。

Kevin Nelson, M.D.「神経外科医から見れば、臨死体験は危険そのものです。クリスティーナの脳は、非常に危険な状態にあったといえます。意識をコントロールするスイッチが、正常に機能しなかったんです。そのせいで、目覚めている状態と、レム睡眠状態の境目が、あいまいになるという非常に珍しい現象が起きました。」〔Neurologist(医学博士:神経学者)〕

Peggy Kay, Ph.D「幽体離脱で、心が身体から離れた状態は、ある一線を越える、第一歩となります。つまり、この世からその先にあるであろう、あの世への旅が始まるのです。この世とは別の、死後の世界ですね。」〔Dept. of Religion, George Washington Univ.(学術博士:ジョージワシントン大学宗教学部)〕

Christina Stein「はっきりとは覚えていないんです。天井の下から素敵な場所へ…その世界はとても暖かくて、明るい光に包まれていました。」

Kevin Nelson, M.D.「臨死体験でよく語られる、明るい光というのは、神経外科医に言わせれば、視覚が激しく活性化されている状態です。視覚を活性化する方法はいろいろありますが、レム睡眠はまさに、その代表例といえます。」〔Neurologist(医学博士:神経学者)〕

Jeffrey Long, M.D.「クリスティーナが見た天国のイメージは、典型的です。臨死体験者の多くは、この世のものとは思えぬ、美しい世界を見た、まさに天国だったと語ります。」〔Oncologist & Near-Death Researcher(医学博士:腫瘍学者、臨死体験研究者)〕

Christina Stein「地球に似てはいるけど、何もかもがずっと色鮮やかで、優しくて、とにかく美しいんです。地面はまるで綿わたみたいにふかふかして、暖かくて。

私、裸足でした。着ていたのは、とてもきれいな、水色のロングドレスです。そんなドレス持っていなかったから、おかしいなと思いました。」

Hans-georg Kaulbach, M.D.「心臓を動かすことができず、薬も電気ショックもだめで、どうしようもなくて、直接手で心臓マッサージをするしかありませんでした。それでも心臓は動かず、脈も振れません。そのときは、思わず神に救いを求めましたよ。我々がどんなに頑張っても、この若い女性の命を救うことはできないんだと、思い始めていたからです。」〔Cardiac Surgeon(医学博士:心臓外科)〕

エベンの蘇生

アメリカのエベン・アレグザンダーにも、望みはほとんどありませんでした。――ところが。

ホーリー・アレグザンダー「5日目の金曜日に、夫が、私の手を握ったような気がしたんです。目を開けようとしていました。驚きました。」〔Holley Alexander Wife of Dr.Alexander〕

エベン・アレグザンダー4世「父は目を開けて、自分で口からチューブを引き抜いて、自分の力だけで、呼吸を始めたんです。」〔Eben Alexander IV Son of Dr.Alexander〕

ホーリー・アレグザンダー「先生がたは言いました。これは医学の力ではないと。夫が生きているという奇跡を、ただただ、噛み締めました。」〔Holley Alexander Wife of Dr.Alexander〕

しかし、その奇跡が起きた直後、家族は何かがおかしいと気づきます。

エベン・アレグザンダー4世「父に話しかけて最初の2、3分で、様子が変だと気づきました。まるでゾンビですよ。以前の父とは違いました。以前と同じだけの生命力が、そのときの父には、感じられなかった。あのときが、一番恐ろしかったかもしれません。生き返ったのはいいけど、父さんは一生このままなのか。生きるためにそこまでの代償が、必要なのかって。」〔Eben Alexander IV Son of Dr.Alexander〕

クリスティーナの臨死体験 2

いっぽう、ドイツのコブレンツでは、クリスティーナが、さらに深く臨死体験の世界に入りこんでいきます。

Christina Stein「誰かが、私の名前を呼ぶ声が聞こえました。声のするほうを見てみると、二人のお年寄りが、こっちに向かって歩いてくるのが見えたんです。一目見てそれが誰か、すぐにわかりました。それまで一度も会ったことなんてなかったんですが、私のおじいちゃんとおばあちゃんでした。二人のことは、写真でしか見たことがありませんでした。二人とも、ずっと前に亡くなっていたからですが、その二人が、目の前にいたんです。」

Jeffrey Long, M.D.「臨死体験中に、すでに亡くなった先祖や家族の誰かに会って、しかもそれが誰なのかが即座に分かった、という話は、数多く報告されています。面識のない親族や、本人が生まれる前に亡くなった家族に会った、と言うんです。」〔Oncologist & Near-Death Researcher(医学博士:腫瘍学者、臨死体験研究者)〕

Christina Stein「突然、自分が天国にいることに気づきました。おじいちゃんとおばあちゃんに会って気づいたんです。子供のころ、人は死んだら天国に行くって習ったし。あの場所が天国じゃなければ、何でしょう。」

Kevin Nelson, M.D.「死に瀕した人間が、どんなことを考えると思いますか。愛する人を思うのは、自然なことです。他界している人だろうと、関係ありません。」〔Neurologist(医学博士:神経学者)〕

Jeffrey Long, M.D.「生前、知っていた人や家族とよく似た人に、あの世、つまり、天国で会ったという体験談はとても多いんですが、一つ大きなポイントは、相手が長い闘病の末に亡くなっていても、臨死体験の中では完璧に健康な姿で現れるということです。」〔Oncologist & Near-Death Researcher(医学博士:腫瘍学者、臨死体験研究者)〕

Christina Stein「おじいちゃんとおばあちゃんのほかにも、たくさん人がいて、二人、知っている人がいました。二人とも病気で亡くなったけど、天国では、凄く健康でした。私がそこで見た人は、みんなそう。幸せそうで、きらきらしてて、にっこり笑ってました。だから私、思ったんです。死んだ人はみんな、とても幸せな場所に行くんだわって。」

エベン・アレグザンダーの臨死体験

クリスティーナが見たという、穏やかな世界。神経外科医のエベンも、昏睡中にある場所へ行ったといいます。しかし天国とは、かけ離れた場所でした。

エベン・アレグザンダー3世「私がいたのは、地下で、地面はぶくぶくと泡立ち、周りは泥だらけでした。自分が生きていたころの記憶は全くなくて、話すこともできず、地面の奥深くから何かの機械が動くような、単調な音がしていました。

ほかに感じたのは、木の根です。黒くて細い、木の根。永遠とはいわないまでも、何年も、その状態が続くように思えました。」〔Eben Alexander III, M.D. Neurosurgeon(医学博士:神経外科医)〕

エベンが臨死体験中に見たのは、とても暗い世界でした。

Jeffrey Long, M.D.「臨死体験者の数パーセントが、恐ろしい世界を見ています。本当に恐怖を覚えるそうです。しかし、なぜ怖いものを見る人と、そうでない人がいるのか、その理由はわかりません。ライフスタイルや信仰などとは一切関係ないようです。」〔Oncologist & Near-Death Researcher(医学博士:腫瘍学者、臨死体験研究者)〕

クリスティーナの臨死体験 3

医師がクリスティーナを救おうとするなか、彼女の臨死体験は、急展開を見せようとしていました。

Jeffrey Long, M.D.「元の世界に戻りなさいと説得された、というケースはとても多いですね。」〔Oncologist & Near-Death Researcher(医学博士:腫瘍学者、臨死体験研究者)〕

Christina Stein「おじいちゃんもおばあちゃんも、こう言うんです。あなたはまだ、ここに来ちゃだめ。元の世界に戻って、あなたの使命を果たしなさい、って。」

Hans-georg Kaulbach, M.D.「ようやく、大動脈の裂け目をつまむことができ、血圧が少し、回復しました。再び心拍が戻り、輸血と投薬で、血流を安定させることができたんです。」〔Cardiac Surgeon(医学博士:心臓外科)〕

Christina Stein「おじいちゃんとおばあちゃんが、手術台の上にいる私の姿を見せてくれたんです。

ドクターたちが、やったぞ、この子は生き返ったって、大声で言うのが聞こえてきました。二人と別れるときは、泣いてしまいました。私もみんなと一緒に、天国に残りたかったんです。」

Hans-georg Kaulbach, M.D.「それからおよそ2時間後、私たちは手術を終えました。クリスティーナの容体は安定していたものの、時間がかかりすぎたのではないかという懸念がぬぐい切れず、心配になりました。もしそうだとしたら、脳が深刻なダメージを受けた可能性があったからです。彼女は、目覚めたとき、涙を流していました。これはとても珍しいことです。普通は泣きながら目覚めるなんてことは――ありません。」〔Cardiac Surgeon(医学博士:心臓外科)〕

体験者と医師の意見

無事に回復したクリスティーナは、自分は啓示を受けたのだといいます。

Christina Stein「実際に経験したことです。夢なんかじゃないって100パーセント、確信を持って言えます。夢じゃありません。私の臨死体験はすべて、実際に起きたことなんです。」

Hans-georg Kaulbach, M.D.「確かに、私の患者さんの一人に、オペ室で自分が手術を受けているところを眺めていたという人がいました。驚いたことに、その話の内容は、現実に起きたことと、まったく同じでした。」〔Cardiac Surgeon(医学博士:心臓外科)〕

Kevin Nelson, M.D.「危篤状態で病院のベッドに寝ている患者は、身体を動かせないために、昏睡状態と判断されても、実は、非常に意識レベルが高く、何もかも理解していることがあります。会話を聞き、誰が出入りしたかも、半分開いた目で見ているんです。こうして見たものが、記憶にはっきりと残っていて、それが、臨死体験の一部となるのかもしれません。」〔Neurologist(医学博士:神経学者)〕

Hans-georg Kaulbach, M.D.「とはいえ、宙に浮かんで我々を見ていたとか、会話を聞いていたというのは、いくらその人が信用のおける人物であっても、信じがたい話です。私は医師ですから、臨死体験を肯定することはできません。確かな証拠がありませんからね。はっきりいって、ばかげています。天使の歌声に、明るい光に、トンネル。何もかもが素晴らしい世界。そんなのは、あり得ません。一種の妄想ですよ。」〔Cardiac Surgeon(医学博士:心臓外科)〕

Christina Stein「たとえ科学が証明できないとしても、天国は、本当に存在するんです。これは、私の妄想なんかじゃありません。事実なんです。」

Hans-georg Kaulbach, M.D.「臨死体験をしたという人が、そのなかで何かを見たり聞いたりしたというのが、嘘だとは思いません。ただそれは現実ではなく、死にかけた脳が見せる、幻覚だったのではないでしょうか。」〔Cardiac Surgeon(医学博士:心臓外科)〕

臨死体験者たち

しかし、幻覚を見たのはクリスティーナだけではありません。大勢います。臨死体験者の数は、数百万人にも及びます。

Kevin Nelson, M.D.「臨死体験と呼ぶのは、誤りです。必ずしも医学的に死が近いわけではありません。我々の調査では、臨死体験を引き起こす要因で、最も多いものは、失神です。」〔Neurologist(医学博士:神経学者)〕

Jeffrey Long, M.D.「臨死状態になる原因は、様々です。心停止がその一つですね。自動車事故や病気、手術による合併症などもあります。心停止、心臓が止まった状態から蘇生した人のうち、およそ10パーセントから20パーセントが臨死体験者です。」〔Oncologist & Near-Death Researcher(医学博士:腫瘍学者、臨死体験研究者)〕

ロング博士の研究では、臨死体験者のほとんどが、幸せな体験だったと語っています。エベンのように、悪夢のような恐怖の世界を見た人は、ごく少数です。

エベン・アレグザンダーの臨死体験 2

エベン・アレグザンダー3世「人生の記憶が何もなくて、話すこともできず、社会のことも、この宇宙のことも、覚えていませんでした。ただぶくぶくと泡立つ、真っ暗な、地下の世界です。」〔Eben Alexander III, M.D. Neurosurgeon(医学博士:神経外科医)〕

ところが、突然その光景が一変します。

エベン・アレグザンダー3世「そのうち――どこからか、きらきらした光が、回転しながら現れました。そしてまるで、ぬのが裂けるように、目の前が開けたんです。

私は闇の世界から、美しい新緑の谷にやってきました。蝶になって飛んでいるような感覚でした。空は真っ青で、そこに雲が、波のように広がり、歌声も聞こえてきました。

なかでも、特に素晴らしい記憶として残っているのは、その場所全体を包み込む、神々しい存在と、その無償の愛がもたらす、言葉にできないほどの、大きな安堵感でした。そして、自分がここに来たのは、もっと多くのことを学ぶためだと悟ったんです。それでも戻らなければ。そう思いました。

臨死体験をして生き返った人の多くは、愛というものの力が、どれほど大きいものであるかを知って、戸惑いさえ覚えるものです。でも、その経験を一生懸命伝えようとすれば、きっと――言葉は使わなくても、世界中に伝わるはずです。」〔Eben Alexander III, M.D. Neurosurgeon(医学博士:神経外科医)〕

エベン・アレグザンダー4世「父は目覚めたあと、宗教とかではなくて、霊的なものを信じるようになりました。」〔Eben Alexander IV Son of Dr.Alexander〕

エベン・アレグザンダーと、クリスティーナ・シュタイン。二人は死と向き合い、その衝撃的な経験を通して、死後の世界をのぞき込んだ、特別な存在に変わったのです。

文化的経験の影響

Peggy Kay, Ph.D「ストーリーには、驚くほどの類似性があります。」〔Dept. of Religion, George Washington Univ.(学術博士:ジョージワシントン大学宗教学部)〕

Kevin Nelson, M.D.「その人の、過去の個人的経験、あるいは文化的経験によって、色付けされているのは間違いありません。臨死体験は当事者の記憶に基づいているということに、注目すべきでしょう。」〔Neurologist(医学博士:神経学者)〕

Peggy Kay, Ph.D「死という概念が、宗教と関連付けて理解されてきたことで、人々は、あの世、つまり、死後の世界が存在するのか、しないのかを考えるようになったのだと思います。死の概念は宗教には不可欠なものですし、それが宗教を発達させ、また、死後の世界に対する私たちの考えかたや感じかたに、大きな影響を与えてきたわけです。

しかも、そういう文化的背景は、生まれたときから、始まっています。」〔Dept. of Religion, George Washington Univ.(学術博士:ジョージワシントン大学宗教学部)〕

Kevin Nelson, M.D.「子供のころに、教会の日曜学校に通っていれば、その教えが体に染みついているので、臨死体験でキリストを見ても、不思議ではありません。」〔Neurologist(医学博士:神経学者)〕

しかし、神経科医のネルソンは、臨死体験の類似性には、もっと根本的な理由があるとみています。

Kevin Nelson, M.D.「彼らの話に似ている点が多いのは、体内で起きる生物反応が、同じだからなんです。」〔Neurologist(医学博士:神経学者)〕

脳波計の記録

実際、ある専門家が、臨死体験中の患者の脳の状態を記録していました。

Lakhmir S. Chawla, M.D.「私はICUで、病院の中でも最も症状の重い患者を担当しています。重体患者のなかには、我々の力が及ばず、亡くなるかたもいらっしゃいます。大事なのは患者の苦痛を和らげることです。基本的には十分な量の、痛み止めを与えます。たいていの場合、患者の状態を見るために、脳波を測る機械を使って、意識レベルをチェックします。

死が近づくと、脳波計に現れる意識レベルの数値はどんどん下がっていって、危険な数値になり、そして、最終的にはゼロになります。この時点で呼吸は止まっているので、基本的には、死亡したということになります。」〔Critical Care Physician(医学博士:救急救命内科医)〕

ところが、そのあとに、脳波が回復する患者がいるのです。

Lakhmir S. Chawla, M.D.「意識があって、話せる状態の人と、同じような波形です。この状態はたいてい、2~3分続きます。本質的には死んでいるはずなのに、脳波的には意識があり、こちらのことを認識できているわけです。そういう患者をそばで見ていると、本当に信じられない気持ちになります。実に驚くべきことです。この現象に対する、医師や看護師の反応は様々で、気味が悪い、どう解釈すべきかわからない、という人もいます。時系列的には、この波形は血圧がゼロになってから、現れる場合がほとんどです。正常な血圧で、この波形が出たことはありません。我々が推測するに、その後、回復した人がこのときのことを思い出して、いわゆる、臨死体験だと思うのではないでしょうか。こうした症例から、臨死体験は、頭の中の想像ではなく、生理学に基づいた現象だと思います。」〔Critical Care Physician(医学博士:救急救命内科医)〕

エベン・アレグザンダーの意見

しかしエベンは、これには反対です。彼は、意識と肉体は別物であり、そう考えれば、昏睡中の出来事も説明がつくというのです。

エベン・アレグザンダー3世「私は、神経外科の専門医です。20年以上、一流の施設でこの分野に従事してきました。経験を積めば積むほど、脳や肉体が死んだあとに、意識だけが残っていることはあり得ないと、強く、そう思うようになりました。

脳が、意識をつくっていると、思っていたからです。そんなときに起きたのが、あの理解しがたい、臨死体験でした。理解しがたいというのは、当時の私の脳には、あんな現象が起きるはずが、なかったからです。」〔Eben Alexander III, M.D. Neurosurgeon(医学博士:神経外科医)〕

細菌性髄膜炎のせいで、エベンは完全に仮死状態にあったといいます。

エベン・アレグザンダー3世「髄膜炎が仮死状態を引き起こす理由は、この病気が、脳の表面全体、つまり、人間を人間たらしめる部分を、攻撃するからです。」〔Eben Alexander III, M.D. Neurosurgeon(医学博士:神経外科医)〕

思考と言語能力を支配するのは、脳の表面にある新皮質です。

エベン・アレグザンダー3世「これは、私の脳のCTです。発症してから3日目に撮ったものなんですが、見てください。

脳の表面に穴がたくさん開いていて、この細かい裂け目の部分にまで、達しています。」〔Eben Alexander III, M.D. Neurosurgeon(医学博士:神経外科医)〕

しかし、脳の機能が停止していたにもかかわらず、意識はあったと、エベンは確信しています。

エベン・アレグザンダー3世「このように、当時私の脳の新皮質は、破壊されて機能しない状態でした。つまり、あのような複雑な体験を認識するのは、不可能な状況だったということです。――ということは、脳とは完全に別の次元で意識が働いていたと、考えざるを得ません。」〔Eben Alexander III, M.D. Neurosurgeon(医学博士:神経外科医)〕

しかしネルソン博士は、懐疑的です。

Kevin Nelson, M.D.「臨死体験が脳の働きと無関係だという証拠はありません。いつその体験をしたのかは、エベンにも誰にも知りようがない。回復の過程だったかもしれないし、そもそも本人も、時間の感覚がなかったことは、認めているんです。」〔Neurologist(医学博士:神経学者)〕

いずれにせよ、臨死体験は、エベンとクリスティーナの信念を変える出来事でした。

アニータの奇跡

香港には、臨死体験によって、肉体にも不思議な変化があったという女性がいます。アニータと、ダニー・ムジャーニが、人生を一変させる体験をしたのは、結婚7年目の年でした。

Anita Moorjani「2002年の4月のことです。私は、左側の鎖骨のあたりにしこりがあるのを感じたので、検査のために、お医者さんに診てもらうことにしたのです。生体検査をしました。」

3日後に、結果が出ました。

Danny moorjani「二人で、病院で待ちました。医者がやってきて、こう言うんです。検査の結果、がんの一種の、ホジキンリンパ腫が見つかりました、って。……突然、恐怖に襲われました。それまで味わったことのない、強烈な恐怖です。」〔Husband of Anita Moorjani〕

Anita Moorjani「金縛りにあったように、身体が、固まりました。――病気は進行し、3年10か月もの間、腫瘍は体中に転移し続けました。化学療法を受けるつもりはありませんでした。

私の親友も、夫の義理の兄弟も、化学療法の最中に亡くなったからです。というよりむしろ、化学療法のせいで亡くなったように思っていました。」

アニータは代替療法を受けますが、病気は悪化。

Anita Moorjani「肺に水が溜まって、酸素ボンベがないと、息もできません。皮膚には穴が開き、筋肉が衰えて、体重も40キロくらいしかありませんでした。自分は死ぬんだという事実を、受け入れ始めました。」

時間は、どんどん奪われていきます。

Anita Moorjani「2006年、2月2日の朝、私は目覚めませんでした。」

Danny moorjani「医者に、言われたんです。あと数時間が山だ。明日まで持たないかもしれない。連絡したい人がいれば、今してください、と。思えばあの瞬間…そう、まるで――私自身が、命が吸い取られたように感じました。」〔Husband of Anita Moorjani〕

一晩じゅう、危険な状態が続きましたが、彼女の魂は飛び回っていました。

Anita Moorjani「そのとき、私は、自分がどこか別の次元にいるように感じていました。そこでは、自分がいる病室だけじゃなく、何もかも、見渡すことができたんです。」

アニータは、死後の世界で見たものを、鮮明に記憶しています。

Anita Moorjani「がんで亡くなった、親友の姿が見えました。彼女に対しては、ずっと、負い目があったんです。私も病気だったから、彼女の死を見るのが辛くて、最後を一緒に過ごせなかった。

あちらの世界で会った彼女からは、無償の愛と、思いやりが感じられました。私の気持ちを全部わかってくれていて、それが、ほんとに、私にとっては、大きな救いでした。元の世界に戻るか、このまま死後の世界に旅立つか、選択肢を与えられました。

あの世があまりにも素晴らしいものだから、最初は死を選ぶつもりでした。凄く美しかったんです。それに、病気の身体には戻りたくなかった。でも次の瞬間、突然、はっきりと分かったんです。元の世界に戻ることを選べば、病気はあっという間に治るだろうって。

彼女がこう言ってくれているようでした。戻って人生を突き進みなさい。そしてその瞬間、私は目を開けて、昏睡から目覚めたんです。」

Danny moorjani「人生で一番幸せを感じた瞬間でした。我を忘れるくらい、嬉しくて。あのときは、自分が世界一、いや、宇宙一、幸せな人間だと思いました。」〔Husband of Anita Moorjani〕

しかし、アニータの身体はぼろぼろでした。

Anita Moorjani「大丈夫、絶対治るから心配しないでと、言い続けました。」

Danny moorjani「そのときは、そう、絶対治るよ、と返事したものの、やっぱり酸素が足りなくて、脳がダメージを受けたんだと、思いました。」〔Husband of Anita Moorjani〕

ところが状況は、思わぬ方向に向かいます。

Anita Moorjani「みんな私が昏睡状態だったと言いますけど、私はそうは思っていません。だって、周りで起きていることが、全部見えていたんですもの。執刀医に会った時も、すぐに誰かわかりました。私が手術の内容を事細かに覚えてたから、凄く驚いてましたよ。何で知ってるんだ、昏睡状態だったのに、って。」

Danny moorjani「彼女が、オペ中に起きた出来事を話し始めて、僕は即座に思いましたね。ちょっと待てよ、今のこの状況は…あー。普通じゃないぞ、って。」〔Husband of Anita Moorjani〕

普通じゃない状況は、奇跡に変わりました。

Anita Moorjani「みんな本当に驚いていましたけど、その後4日間で、腫瘍が70パーセントも縮んだんです。さらに3週間後には、どんな検査をしても、がん細胞は見つからなくなりました。」

Jeffrey Long, M.D.「文献にもありますが、悪性腫瘍が自然に退化するのは極めて稀で、おそらく10万人に一人くらいでしょう。この場合、がん細胞が小さくなるだけでなく、完全に消えたのですから、さらに異例です。」〔Oncologist & Near-Death Researcher(医学博士:腫瘍学者、臨死体験研究者)〕

Anita Moorjani「その後何人もの医師が、私の事例を研究しましたけど、みんな見解が違うんです。治療してくれた先生がたは、治療のおかげだって言いますけど、私は自分の意識が変化したからだと思っています。自分が本当は何者なのかを理解したとたんに、病気は治るんだってわかりましたから。」

Kevin Nelson, M.D.「アニータは、二つを結び付けて考えています。臨死体験と、がん細胞の消滅。その両方を経験したからといって、両者に因果関係があるとは、限りません。」〔Neurologist(医学博士:神経学者)〕

死後の世界の希望

アニータ・ムジャーニ。クリスティーナ・シュタイン。エベン・アレグザンダー。みな、死の淵に立たされました。健康を取り戻した彼らは、死後の世界をのぞき見たことを、確信しています。

エベン・アレグザンダー3世「この素晴らしい体験について、人に話して聞かせるとき、私が感じるのは、本当は誰もが、心の深いところでは、わかっているんだということです。」〔Eben Alexander III, M.D. Neurosurgeon(医学博士:神経外科医)〕

死後の世界は、科学的な思考を否定する概念です。

Hans-georg Kaulbach, M.D.「むしろ、密教の教えですね。不安感や不信感に基づくものです。科学的要素は、まったくありません。」〔Cardiac Surgeon(医学博士:心臓外科)〕

Kevin Nelson, M.D.「天国を信じることは、信仰の問題であって、科学の問題ではないんです。」〔Neurologist(医学博士:神経学者)〕

真実はどうあれ、臨死体験は、現実の世界に影響力を持ちます。

Peggy Kay, Ph.D「死後の世界の存在は、人々に希望を与えます。心理学的研究からも、死後の世界を信じるほうが、思いがけずにやってくる困難に、より強く耐えられることが分かっているんです。」〔Dept. of Religion, George Washington Univ.(学術博士:ジョージワシントン大学宗教学部)〕

Christina Stein「私、死ぬのが怖いとは思わなくなりました。明日死んでも構わないという意味ではなくて、いつか寿命で死ぬときが来ても、楽しみだってことです。だって、その先にある世界を、私は知っていますから。そう思えることは素晴らしいことだし、私にとっては、凄く安心できることです。」

<終>

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