ハーケンクロイツ ~ドイツ第三帝国の要人たち~

カトリン・ヒムラー

ナチスの親衛隊長ヒムラーの弟の孫ーカトリン・ヒムラー

「親族にああいう人がいるのは、大きな重荷です。この名前のせいで、神経が擦り減る思いをしてきました。良かったことなど何一つありません。強いて言えば、ハインリヒ・ヒムラーの存在が余りに大きかったので、他のことを思い悩む暇がなかったということぐらいでしょうか。一族の中には、他にも熱心なナチ党員がいたんです。でも、怪物のようなハインリヒに比べれば、取るに足らない存在でした。ですから誰も、他の家族のことには触れませんでしたし、訪ねもしませんでした。」

カトリンの祖父の兄、ハインリヒ・ヒムラーは古参のナチ党員で、親衛隊とゲシュタポを指揮、ユダヤ人強制収容所を造り数百万人を殺害。ドイツ降伏後、拘束されたのちに自殺した。

「ドイツにいるときはまだいいんです。でも外国に旅行すると、とても不安でいたたまれない気持ちになりました。オランダ人とかスウェーデン人に間違えられると…嬉しかったです。大事なのは、私がドイツ人だと誰にも気づかれないことでした。ドイツなまりがわからないくらいになろうと、一生懸命外国語を勉強したものです。そうすることが、私にとっては大事だったんです。」

「自分は何かを受け継いでいるかもしれないとか、ハインリヒ・ヒムラーのおぞましい血が流れているかもしれないなんて恐れたことは、一度もないんです。そんなことを言えば、すべては血筋で決まるという、ナチスのばかげたイデオロギーを、肯定することになります。そういうたわごとは、信じていません。そんなことを考える必要があるとも思いません。」


(写真右:『ヒムラー兄弟』カトリン・ヒムラー著)「私のことを――一族の平穏をかき乱した人間とみている親族が、何人かいます。確かに、特殊といえばそうです。イスラエルのユダヤ人で、ホロコーストを生き抜いた家の人と結婚したんですから。一部の親族とのきずなが断ち切られたことは悲しく思います。私のことを苦々しく思っている人がいることに、心が痛みます。それに向き合うのは、苦しいです。」

「わからないことがあるんです。自分の心に従った結果、親の犯した罪を知ってしまったとき、どのように親と接すればいいのでしょうか。それでも愛することは可能なのでしょうか。どこで一線を引くのでしょうか。

ヒムラーと同じぐらいの罪を犯した人たち。それよりは少し罪の軽い人たち。そしてヒムラーより、さらに深く犯罪に関与していた人たち。この境界線はかなりあいまいで、簡単に定義することはできません。私は何度も自分に問いかけました。どの程度の罪なら、そうした親を愛することができるのか。限界はどこなのか。とても難しい問題です。そして実際に、それぞれが異なる答えを出しています。

ナチの戦争犯罪人の子供たちは、大部分が、バランスをとるのに苦しんでいると思います。ほとんどの人は、自分自身の人生を生きられるように、親との絶縁を選んでいます。いっぽうで、親に忠実に、無条件の愛情を捧げると決意した人たちもいます。否定的な事実は一切受け入れないと決めて。」

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