Let’s Dig!〜詩人 あずま菜ずなの世界〜


一月の空の母に

笹舟を
小川の流れに
ゆだねるように
ひとつのふくよかな丘と
惜別したあの夏
ひまわり 野ぎく 水仙畑
そして桜 季節は巡る

術後の生存率
50パーセントをクリアした
いまだ せめぎあい
もてあまし 騒ぐ
胸もとの焼け跡

風にこんな話を聞く
高齢で乳房が失せた胸を
野のごときとたとえ
著名な歌人は
ひばり 野うさぎ
虫どもも来よ と詠んだ
貧しきわたしの焼け跡
を 恥じ入る

風花が吹雪く
焼け跡をたがやし
賛美と
祈りの木を植える
葬送の調べをかなで
さやかな香煙を
天使の羽をいただいた
一月の空の
母にとどける

野菜畑にとびはねる
バッタやハナアブのように
働き者だった
嗚呼 母よ





戻る