Let’s Dig!〜詩人 あずま菜ずなの世界〜


無  花  果

小さな青い壷のなかの
うす紅の花の床
雌雄異花
はつ夏の秘めやかな営みがある

緑のてのひら
いちように空へ向けて
ぐんぐん伸びる無花果の枝
素焼きの鉢の底をまさぐり
したたかに根を張る

人間は 木や草花のようには
根が生えていないと言うが
現在(いま)もはらわたに蠢く
否めない罪の根っこ

薄皮をゆるりと剥いて
初なりの花床をいただく
ぽつぽつと 乳白色のなみだ
明日へ繋ぐいのちの粘り

「あなたはどこにいるのか」
眼差しの尖端の 行方から降る
光の声
厳かに聞く者がいる



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