2021年 第18回ショパン国際ピアノコンクール第2次予選レビュー
参考リンク
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ⅩⅧ KONKURS 18TH CHOPIN COMPETITON WARSAW
各予選・本選の記事
第18回ショパン国際ピアノコンクール・予備予選レビュー
第18回ショパン国際ピアノコンクール・第1次予選レビュー
第18回ショパン国際ピアノコンクール・第2次予選レビュー
第18回ショパン国際ピアノコンクール・第3次予選レビュー
第18回ショパン国際ピアノコンクール・本選レビュー
ショパンコンクール日程
第1次予選:10月3日~7日
第2次予選:10月9日~12日
第3次予選:10月14日~16日
本選:10月18日~20日
2021年第18回ショパン国際ピアノコンクール・第2次予選
ショパンコンクール第2次予選は、10月9日から開始されています。
実況中継リンク
第2次予選:10月9日前半
第2次予選:10月9日後半
第2次予選:10月10日前半
第2次予選:10月10日後半
第2次予選:10月11日前半
第2次予選:10月11日後半
第2次予選:10月12日前半
第2次予選:10月12日後半 ← 今ここです
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第2次予選出場者一覧
10月9日前半 10時~14時(日本時間:10月9日(土)午後5時~9時)
1. Mr Arsenii Mun, Russia
2. Mr Szymon Nehring, Poland
3. Mr Viet Trung Nguyen, Vietnam/Poland
4. Mr Georgijs Osokins, Latvia
5. Mr Evren Ozel, U.S.A.
6. Mr Kamil Pacholec, Poland
10月9日後半 17時~21時(日本時間:10月10日(日)午前0時~4時)
7. Mr Hao Rao, China
8. Mr Sohgo Sawada, Japan
9. Mr Aristo Sham, China, Hong Kong
10. Ms Miyu Shindo, Japan
11. Mr Talon Smith, U.S.A.
12. Mr Kyohei Sorita, Japan
10月10日前半 10時~14時(日本時間:10月10日(日)午後5時~9時)
13. Ms Szuyu Su, Chinese Taipei
14. Mr Hayato Sumino, Japan
15. Mr Yutong Sun, China
16. Mr Tomoharu Ushida, Japan
17. Mr Andrzej Wierciński, Poland
18. Mr Yuchong Wu, China
10月10日後半 17時~21時(日本時間:10月11日(月)午前0時~4時)
19. Mr Lingfei (Stephan) Xie, Canada/China
20. Mr Zi Xu, China
21. Mr Piotr Alexewicz, Poland
22. Ms Leonora Armellini, Italy
23. Mr J J Jun Li Bui, Canada
10月11日前半 10時~14時(日本時間:10月11日(月)午後5時~9時)
24. Ms Michelle Candotti, Italy
25. Mr Kai-Min Chang, Chinese Taipei
26. Mr Xuehong Chen, China
27. Mr Hyounglok Choi, South Korea
28. Mr Alberto Ferro, Italy
29. Mr Federico Gad Crema, Italy
10月11日後半 17時~21時(日本時間:10月12日(火)午前0時~4時)
30. Ms Yasuko Furumi, Japan
31. Mr Alexander Gadjiev, Italy/Slovenia
32. Ms Avery Gagliano, U.S.A.
33. Mr Martin Garcia Garcia, Spain
34. Ms Eva Gevorgyan, Russia/Armenia
10月12日前半 10時~14時(日本時間:10月12日(火)午後5時~9時)
35. Ms Wei-Ting Hsieh, Chinese Taipei
36. Mr Adam Kałduński, Poland
37. Mr Nikolay Khozyainov, Russia
38. Ms Su Yeon Kim, South Korea
39. Ms Aimi Kobayashi, Japan
40. Mr Mateusz Krzyżowski, Poland
10月12日後半 17時~21時(日本時間:10月13日(水)午前0時~4時)
41. Mr Jakub Kuszlik, Poland
42. Mr Shushi Kyomasu, Japan
43. Mr Hyuk Lee, South Korea
44. Mr Bruce (Xiaoyu) Liu, Canada
45. Mr Marcin Wieczorek, Poland
管理人的ランク・各コンテスタントの演奏に対する感想・コメント
各コンテスタントの演奏を、管理人的な好みに合うかどうか、好みに合わなくてもレベルが高いかどうかで、A,B,C,D,E,?でランク付けしました。
A:非常に素晴らしい・感動した
B:好ましい演奏だと思う
C:どちらとも言えない
D:やや不満
E:大いに不満
?:演奏を聴いていない
お気に入りの中国人ピアニストを2人も落とされてしまったことから、この2次予選の評価はかなり辛めになると思います。
気分を害される方がいらっしゃるかもしれませんが、他意はありません。どうもすみません。
10月9日(第2次予選:1日目)
前半:10時~14時(日本時間:10月9日(土)午後5時~9時)
B~C 1. Mr Arsenii Mun, Russia
(リアルタイムでは聴けず、10/10に記載)
ヤマハCFXを使用。
マズルカ風ロンドOp.5は、軽妙なタッチで洒脱な音色で高いセンスを感じさせる演奏。
難所になると技術的に少し乱れますが、音の少ない部分の音の出し方や音の運び方にはずば抜けたセンスを感じます
(この人が予備予選で弾いたマズルカOp.17-2、Op.17-4は絶品でした)。
ワルツOp.18はオーソドックスで良い演奏だと思いましたが、やや弾き急ぎすぎでしょうか。
技術的には比較的易しい作品のため、音楽的にはより高度なものが求められてしまいます。
この作品でポイントを稼ごうとすると、スタッカートとレッジェーロの弾き分け、
技術的に精妙なコントロール、聴く人を惹きつけるエンターテイナー的な遊び心、
などが求められると思うのですが、そこまでの域には到達していないようでした。
スケルツォOp.20は主部の速いパッセージ部分はそこそこ粒立ちもよく良い演奏だと思いました。
中間部の旋律も流れが自然で美しいと思います。
アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズOp.22:
アンダンテスピアナートはキラキラと輝く美しい音色で自然な抑揚を付けてピアノを歌わせていて良い演奏でした。
華麗なる大ポロネーズは、ペダルを控えめにして、1つ1つの音型をくっきりをした輪郭で
メリハリを付けて弾こうという意図を感じました。
とてもすっきりとした響きで好感が持てる演奏ですが、技術的にはやや粗い部分があり決め手に欠ける印象でした。
全体としては色々突っ込みどころを挙げればきりがないのですが、この人の音色や演奏スタイルは好きですし、
見た目や雰囲気にスター性がある点がこの人の強みです。通過への希望的観測を込めて、B~Cとしておきます。
やや甘いでしょうか?
C 2. Mr Szymon Nehring, Poland
(リアルタイムでは聴けず、10/10に記載)
スタインウエイ479を使用。
即興曲Op.51はかなりテンポを自由に動かした濃厚なロマンティシズムを基調にした演奏。
テンポが恣意的で流れが停滞する感じで正直あまり好きではありませんでした
(この曲に関しては僕自身は流れが良いスマートな演奏が好みです)。
ポロネーズOp.61はこの人の体格同様、巨大なスケールの演奏。各フレーズに濃厚な味付けを施していますが、
間延びしているような感じで、聴いていて疲れてしまいました。
ワルツOp.64-3はこの曲の舞曲的性格よりも詩情に重きを置いた演奏という印象です。
とても豊かな表情付けで聴かせてくれますが、この作品にしては重いと思いました。
アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズOp.22:
アンダンテスピアナートは、かなり大きくルバートをかけて旋律を美しく歌わせていました。
華麗なる大ポロネーズは、全体として1つ1つのフレーズ、モチーフの表情付けは興味深いのですが、
やはり流れが悪いのと技術的な粗が耳についてしまい、どうしても好きになれない演奏でした。
全体として濃厚な表情付けのロマンティシズム漂うスケールの巨大な演奏ですが、
僕はもっと爽やかでスマートな演奏が好きです。
このような演奏スタイルは正直苦手なので、Noを付けたいですが、再挑戦の人ですし、
前回ファイナルまで進んだ実績を考えると、ここで落とすのは可哀そうという気持ちもあり、複雑な思いです。
C~D 3. Mr Viet Trung Nguyen, Vietnam/Poland
プレリュードOp.28-13はペダルを控えめにして、簡素な響きで比較的淡々と歌い上げたセンスの良さを感じる演奏でした。
舟歌Op.60は自然な流れで好感が持てる演奏ですが、僕が求める官能の極みような舟歌ではありませんでした。
ワルツOp.34-3は即興的で自然で好感が持てる演奏でしたが、もっと軽快な演奏が好みです。
ノクターンOp.48-1はこの曲にふさわしい深く透き通る音色に変化。後半の盛り上がりも情熱的・ダイナミックで
胸に熱く迫るものがあり、なかなかの好演でした。ただ大事なところでもったいないミスが多い印象でした。
ポロネーズOp.53は、精度がやや粗いのとこの曲における僕自身のストライクゾーンが異常に狭いこともあり、
正直に言えば今一つでした。
全体としては微妙と思います。今回の2次予選の基準になりそうでしょうか。
ここで小休憩。どうでもよいことですが、毎回このCMで流れてくるノクターン遺作・嬰ハ短調の最初の右手の
トリル、なんでこんなに不自然で下手なんでしょうか?(笑)インパクト狙いでしょうか?
皆さんはどう思っていますか?
B 4. Mr Georgijs Osokins, Latvia
ヤマハCFXを使用。
ポロネーズOp.61は1つ1つのフレーズ、音に独自の色付けを施し、その芸の細かさが非常に興味深い演奏でした。
僕の脳裏に刻まれているホロヴィッツのこの曲の演奏をどこか彷彿とさせる凄みのようなものがありました。
コーダも圧巻でした。この1曲はこの人の魅力を発見するきっかけになるでしょうか。
ポロネーズOp.71-2は、軽妙で洒脱なタッチで上品な演奏。演奏される機会の少ないこの作品の意外な魅力を
再発見させてくる素晴らしい演奏です。この習作的作品を「名曲」にしてしまうこの人の能力に驚愕しました。
マズルカOp.30-4はかなりクセの強い演奏ですが、前の2曲が意外に素晴らしかったので、これはこれでありかな、
と思ってしまいました。
マズルカOp.50-3は、美しいオーソドックスな演奏ばかり聴いてきて、こうした斬新な演奏には
なかなかついていけないのですが(要するに柔軟性がないということです)、音色がクリアで粒立ちが良いからか、
なかなか良い演奏に聴こえてきました。
ワルツOp.34-3は軽妙で斬新な演奏ですが、ややミスタッチが目立ちました。
そして間髪入れずポロネーズOp.53。この曲、確か6年前も2次予選で弾いていて、
ホロヴィッツの演奏に意識して似せていた記憶がありましたが、
今回もホロヴィッツ節がかなり濃厚でした。後半は疲れのためかやや前半のような精彩に欠けるような気がしないでもないですが・・・
しかし全体として音色が非常にクリアで濁らず、この人の演奏にしては興味深く聴けました。
C 5. Mr Evren Ozel, U.S.A.
スタインウエイ479を使用。
即興曲Op.29は速めのテンポの軽快な演奏で適度なルバートがセンスの良さを感じさせました。ただ音色がドライで伸びがない感じで惜しいです。。
ポロネーズOp.44は良い演奏ではありますが、重厚感があまりなく軽めであっさり目なところが、やや物足りない印象でした。
ワルツOp.34-1は、全てが自然で作品が全てを語る趣の良い演奏でした。
この人は鍵盤を叩かないからか、音がつぶれることがなく、品格と余裕を感じさせる演奏になっています。
ただ欲を言えば、この曲にはもっと溌溂としたリズムと華やかさがほしい気がします。
即興曲Op.36は適度な即興性があり流れが自然で抑制された控えめな美しさがあり、この作品の本来の美しさを
センスよく引き出していて僕自身の好みの演奏でした。
バラードOp.52はごく普通の演奏という印象。自己主張は全くなく印象に残りにくいタイプの演奏です。
1次予選の時よりも調子が良さそうでしたが、印象に残りにくいタイプの演奏で、こうした演奏は落とされる傾向にあるようです。
B~C 6. Mr Kamil Pacholec, Poland
スタインウエイ479を使用。
ポロネーズOp.44は前奏者の演奏と似たようなオーソドックスタイプですが、
この人の方がダイナミクスの幅が若干広く、その点でこちらの方が少し上回っているという印象です。
(僕にとってこの作品の原体験はルービンシュタインのステレオ録音で、
誰が何と言おうと、ルービンシュタインの重厚で暗い演奏が基準となっています)。
即興曲Op.36は柔らかく豊かな音色でオーソドックスですが、前奏者と比較すると抑揚が大きく、
この人の演奏の方が心に届いてくる印象です。
ワルツOp.34-3はおとなしめの演奏。中間部で派手にやらかしてしまい、乱れてしまいました。
そして最後の方の右手もまた大きなミスがありました。やや準備不足でしょうか。
ワルツOp.64-2は、オーソドックスで良い演奏でしたが、中間部でまた大きなミスがありました。
前奏者よりも良い部分があるのに、ミスタッチで帳消しになってしまうのは何とももったいないです。
ワルツOp.64-1は軽快さよりも滑らかさが耳に心地よい演奏でした。
スケルツォOp.31は標準的で旋律のフレージングも自然で十分にダイナミックで良い演奏だったと思います。
ただところどころミスタッチがあるのと、中間部の最後の方の同じ音型の繰り返し回数が1回少なかったのは、
減点対象になってしまいそうです。
前奏者よりミスタッチは多めでところどころうっかりがありますが、
同じ正統派ではあっても演奏内容自体はこちらの方が明らかに上だと思いますので、
評価はB~Cとして明確に優劣を付けました。
後半:5時~9時(日本時間:10月10日(日)午前0時~4時)
A 7. Mr Hao Rao, China
スタインウエイ479を使用。
バラードOp.47は柔らかく深い音色で、全ての音とフレーズがこの作品の本来あるべき姿で立ち上がってくることに
驚きました。感興豊かですが全てが自然な抑揚で心にストレートに入ってくる素晴らしい演奏でした。
ワルツOp.34-1は出だしから軽妙でルバートをかけていますが、やはり全てが自然です。
この作品の舞曲的性格とロマンティックな詩情と全ての魅力をこの作品のあるべき姿で伝えてくれる素晴らしい演奏でした。
舟歌Op.60は、細かいフレーズの1つ1つを大切に表情付けしていて惹きつけられます。
予備予選の時の演奏同様、本物の才能と感じられる感興の自然な発露があります。
流れがやや停滞する部分もありますが、作品全体を俯瞰する「目」がありそうで、
全体として上手くまとめ上げられています。舟歌は官能の極みという趣の演奏が好きなのですが、
こうした実に誠実で丁寧な演奏もまた素晴らしいと思います。
アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズOp.22:アンダンテスピアナートはとても美しい詩情を
感興豊かに奏でており心にストレートに入ってきます。華麗なる大ポロネーズは1つ1つの音を大切にした
誠実な演奏で好感が持てますが、この作品はもう少し華やかさと軽妙さ、遊び心が欲しい気がします
(素人のないものねだりとして聞き流して下さい)。
素人の僕が言っても説得力は皆無かもしれませんが、この人はショパンの音楽の何たるかを
この年齢で既にかなりの部分まで知り尽くしている感があり、末恐ろしささえ感じます。
華やかさがあまりないため、優勝はないかもしれませんが、本選のコンチェルトを聴きたいです(タイプ的には2番の方が
合いそうでしょうか)。2次予選初日、ここまで聴いてきて明らかにベストであるため、評価Aとしておきます。
C~D 8. Mr Sohgo Sawada, Japan
シゲル・カワイを使用。
アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズOp.22:
前奏者のHao Raoさんがこの作品で終わったと思ったら、この人はこの曲で開始。
聴き比べは避けられない。さてどうする?と思ったら、なかなか素晴らしい演奏。
キラキラと輝く音色。アンダンテスピアナートは爽やかな詩情が魅力的な演奏。
華麗なる大ポロネーズはHao Raoさんの真面目な演奏よりも、軽妙で歯切れも良く遊び心もあって、あれ?こっちの方がよい?
と思うところも結構多いです。ただこの人は音の粒立ちは良いのに音抜けやマイナーミスタッチが多いのが何とも惜しいです。
ピアノ一筋の他のコンテスタントと比べて医学生の彼はピアノにかける時間も限られているため、
ここを指摘するのは可哀そうな気がしますが、コンクールに温情は無用と考える人も多いですから・・・
ワルツOp.34-3は軽妙で歯切れが良く気持ちよく聴ける良い演奏でした。ミスタッチが多いのが玉に傷。
舟歌Op.60は音色がクリアで薄く美しい響きで無駄な響きが一切ない、とても聴きやすい演奏でした。
ただやはり音の粒の不揃いとマイナーミスタッチがどうしても気になりました。
スケルツォOp.31は十分に華やかで第2主題のフレージング、抑揚は自然で美しいですが、
スタミナ切れでしょうか、やはりミスタッチが多くなってきたのが残念でした。
全体として悪くはないのですが、ミスタッチの多さがどうしても耳についてしまいました。
個人的にはここを通過してほしいのですが、正直に言うと厳しいかな、と思います。
ただ1次予選の結果を見る限り、今回の審査はカオスですから、ちゃっかり通過に一縷の望みを託します。
C~D 9. Mr Aristo Sham, China, Hong Kong
スタインウエイ300を使用。
舟歌Op.60は、迫力・情熱型と淡い色彩を漂わせた冷静コントロール型に大別されると思いますが、
この人の演奏は迫力・情熱型で、分厚い和音が連続する部分がかなり熱い演奏でした。
細かい部分が魅力的かどうかはさておいて全体として「立派な」舟歌でした。
スケルツォOp.31は旋律部は流麗に流れていきますが、ともするとやや弾き飛ばしの感がありました。
ダイナミックな部分は燃える情熱とでも形容したい熱い演奏でした。
ワルツOp.42は2拍子系リズムの部分は感興豊か、速い8分音符の連続部などは粒立ちと切れ味鋭いタッチで感興豊かに演奏しており、
速い部分はややコントロールを失って疾走する部分がありました。テクニックが前面に出たとても若い音楽作りでした。
アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズOp.22:
アンダンテスピアナートはごく普通のおとなしい演奏。
華麗なる大ポロネーズは細かい部分でかなり自由にテンポを動かしていて、なかなか興味深いのですが、
聴く人を強烈にドライブしていくタイプの演奏で、独りよがりな演奏と紙一重のところがあって、聴いていて疲れてしまいます。
この人は高度なテクニックを駆使して、内に秘めた熱いものを外に向かって発散していく、まさに「燃える演奏」という
印象ですが、こういう疾走系の演奏は個人的には正直苦手です。これは予備予選のときから感じていたことでした。
D 10. Ms Miyu Shindo, Japan
バラードOp.23はこの人にしてはごく普通の演奏。コーダの迫力はやや不足していますが、技術的完成度は高いと思います。
アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズOp.22:
アンダンテスピアナートはやや持って回ったような節回しが耳につきましたが高音の輝きが印象的でした。
華麗なるポロネーズは右手の細かいパッセージはきれいですが全体的に低音の深さとそれに支えられた
響きの厚みや深さが足りない感じで、それ故にか華やかさが足りず、正直物足りない印象でした。
和音の厚みと各音のバランスが良ければ、と惜しまれます。
技術的には上手く弾けているので、それが何とももったいないです。
ワルツOp.42は、盛り上げほしいところで、迫力が不足しているようで、もったいないと思いました。
左手の低音のオクターブの迫力が足りないように感じました。
舟歌Op.60は高音主体の音楽作りで、バランス的に低音が弱いと思います。持って回ったような節回しが
僕の好みとは全く違います(僕はさりげなくスマートな演奏が好みです)。
前から思っていたことですが、この人は左手の音が弱いようです。それだからか、和音の厚みとバランスに難あり、
どうしても聴いていて疲れてしまいます。これは好みの問題かもしれませんが、
生理的に受け付けない正直苦手なタイプの演奏でした。
D 11. Mr Talon Smith, U.S.A.
スタインウエイ300を使用。
舟歌Op.60は柔らかで深い美音に惹きつけられました。音色・音量のコントロールと迫力の両方が
バランスの良い割合で融合された、とても聴きやすい舟歌だったと思います。
子守歌Op.57は持ち味の美音が強みでしたが、6度の分散パッセージの粒が揃っていませんでした。
この作品は細かいパッセージできれいに粒が揃っていて音色と音量を正確にコントロールした精妙な演奏が理想的ですが、
この人はそれが実現できていないようで、技術がちょっと弱そうです。
ワルツOp.64-3は、この曲の舞曲的要素よりも詩情に重きを置こうと意図しているように感じましたが、
やや精彩を欠いている印象でした。
アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズOp.22:
アンダンテスピアナートは自然な抑揚を付けていて美しい演奏でした。
華麗なる大ポロネーズは、オーソドックスで良い演奏だと思うのですが、右手の3度和音の半音下降が
不明瞭だったり、6度のパッセージでミスタッチを連発していたりと、散漫で決め手に欠ける印象でした。
この演奏スタイルでこの完成度では通過は難しいと思います。
B 12. Mr Kyohei Sorita, Japan
スタインウエイ479を使用。
ワルツOp.34-3は軽快で感興豊かで音の粒も揃っていて良い演奏だと思いましたが、
やや硬さがあり乗り切れていない印象でした。
マズルカ風ロンドOp.5は、リズム感抜群、トリルや連打、短い音階など技術的コントロールは精妙で完璧。
転調に伴う曲調の変化を実に自然なルバートで聴かせていて、この作品の理想の演奏の1つだと思いました。
作品を完全に手中に収めている印象で、解釈に曖昧さを全く感じさせず、この人の強い信念に裏付けられた
自信のある解釈と感じました。
バラードOp.38は緩徐部からかなり感興豊かで振幅を大きくとっていました。
コン・フォーコ、コーダのアジタートの部分は迫力満点で技術的にも高水準の演奏でした。
アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズOp.22:
アンダンテスピアナートは、自然な抑揚を付けていて全ての音が自然に流れていく美しい演奏でした。
華麗なる大ポロネーズは、1つ1つの音型、フレーズの表現の仕方がよく考えられていますが、
音楽的にはやりたいことをやや詰め込みすぎたような印象も正直ありました。
この作品に特有のパッセージは粒が揃っていて技術的にも完全に手中に収めている印象でした。
コーダも技術的にほぼ完璧でした。
ただこの曲の放送途中、音量がしきりに変わり、それにより演奏の印象が変わってしまっている可能性があります。
全体的には、僕の中ではかなり好印象です。ここも通過するのではないかと思います。
10月10日(第2次予選:2日目)
前半:10時~14時(日本時間:10月10日(日)午後5時~9時)
B 13. Ms Szuyu Su, Chinese Taipei
アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズOp.22:
アンダンテスピアナートはアーティキュレーションが全て自然、全ての音があるべきところにあり、
それが全く形を崩さずにそのままの形で聴く人の耳に届いてくるような清純で美しい演奏でした。
華麗なる大ポロネーズもとにかく自然で美しい演奏でした。全く作為がなく流れに淀みがないのは
驚くべきことです。
ワルツOp.34-1は自然で美しい演奏。淀みがなく清楚な演奏でしたが、何か変化を付けようという
遊び心がない分、聴く人によっては退屈に聴こえるかもしれないと思いました。
マズルカOp.63-1は、
マズルカリズムの面白さはあまり感じず、この曲のハーモニーの美しさが際立つ演奏でした。
マズルカOp.63-2は憂鬱な作品ですが、意外にあっさり目でやや物足りないかも・・・
マズルカOp.63-3は別の意味で憂鬱ですが、前曲との憂鬱さの対比があまりない感じで、
曲の特徴の色分けがはっきりしない印象を持ちました(素人のないものねだりとして聞き流して下さい)。
バラードOp.52もやはり作為が全くなく淀みなく自然に流れていく清純な演奏。
必要十分なダイナミクスもあり、完成度が高い演奏でした。
全体として正統派中の正統派。ごく自然でひたすら美しい演奏ですが、悪く言えば特徴が少なく印象に残りにくいタイプとも
言えます。コンクールの通過基準として、同じ系統の演奏で上位互換がいた場合、通過が難しくなる
という話も聞きましたが、そうすると、韓国のSu Yeon KimさんやアメリカのAvery Gaglianoさんあたりが
この人の比較対象、脅威になりそうです。この2人に及ばないとしても、通過はするのではないかと思います。
B 14. Mr Hayato Sumino, Japan
スタインウエイ300を使用。
マズルカ風ロンドOp.5は、輪郭のはっきりしたクリアで透明度の高い音色で、溌溂としたリズムで
この作品の美しさを自然に引き出していて良い演奏だと思いました。
あまり聴く機会がない曲のため、より新鮮に聴こえるという効果もあると思うのですが、
この作品の魅力を存分に引き出していて素晴らしい演奏だったと思います。
バラードOp.38は予備予選でも弾きましたが、その時よりも力みが抜けて、この人の本来の演奏に
なっていそうな印象を持ちました。立派な演奏だったと思います。
ワルツOp.18は、クリアな音色で速めのテンポの軽快な演奏。ところどころ引っかける音がありましたが、
リズムが生き生きと躍動していて、聴いていて面白い演奏でした。
ポロネーズOp.53は、一点一画ゆるがせにしない音楽作りで、こうしたかっちりとした英雄ポロネーズは
僕自身の好みに近いです。テンポ配分や和音のバランス、鳴らし方などが、
僕の頭の中にあるブレハッチの演奏の音像にかなり近いです。
これはブレハッチの演奏を相当研究していると見ました。
全体として期待以上の素晴らしい演奏でした。この人はステージが進むごとに調子を上げてきている印象です。
これは通過濃厚ではないでしょうか。
A~B 15. Mr Yutong Sun, China
スタインウエイ479を使用。
バラードOp.47は節回しが斬新。過剰とも思えるテンポルバートですが、演奏自体は興味深いと思いました。
非常にスケールも大きく技術的精度も高く素晴らしい演奏でした。
ワルツOp.42は自在にテンポを動かしていますが、速い8分音符の部分も自在にテンポを動かし、
かなり即興性が強いですが、きれいに粒が揃っていて聴いていて爽快感がありました。
この作品の疾走する部分も技術的にまだまだ余裕がありそうで、恐ろしさを感じました。
ポロネーズOp.44は意外に正確に和音を鳴らしていて、この作品の本来の魅力を引き出していました。
中間部のマズルカも板についた自然さ、何の力みもなくピアノが自分の体の一部のような、
まさに天性のピアノ弾きと感じられる演奏でした。
スケルツォOp.39はオクターブや和音が箱鳴りしていて聴いていて音響的な心地よさがあり、
高音から駆け下りてくるキラキラとした音型も官能的な美の極致とでもいうべき演奏でした。
この人は僕の中で確か1次予選の印象が良くなかったはずで、相当ネガティブなことを書いてしまいましたが、
今日のこの2次予選の演奏はそれとは全く違う印象でした。
何が違うのか、1次予選の時はこの人の調子が悪かったのか、寝不足などで僕の方の耳がおかしかったのか、
後でこの人の1次予選の演奏を聴き返す必要がありそうです。
おそらく1次予選での僕の判定が間違っていたのだと思います。そこは謙虚に認めたいと思います。
B 16. Mr Tomoharu Ushida, Japan
ヤマハCFXを使用。
とても感じの良い笑顔で颯爽とステージに登場。それだけで好感度は急上昇。
ワルツOp.42は力みのない出だし、とても優しく優雅なフレージング。音の間に間にシックな優しさ。
とても上品で軽やかで、最後は十分に華やかでこのワルツの良い部分を自然に引き出していて惹かれました。
バラードOp.52は音とその間に細かい陰影と濃淡を付けて弾いていました。後半の盛り上がりは
十分に迫力があり、非常に立派で完成度の高い演奏でした。
舟歌Op.60は、細かいパッセージなどの技術的コントロールの精度が高く、濃淡や陰影を付けていて、
良い演奏だと思いました。やや強音がメタリックでやせているように感じました。
ポロネーズOp.53は美しさと迫力の両方があり、素晴らしい演奏だったと思います。
1次予選の幻想曲のときも感じましたが、この人のフォルティッシモは骨太で力強く迫力があって好きです。
通過に1票です。
C 17. Mr Andrzej Wierciński, Poland
スタインウエイ300を使用。
バラードOp.52は、無骨で骨太な節回しでやや恣意的に感じられる部分も無きにしもあらずですが、
これはこれでありだと思いました。
しかし難所になるとミスタッチが結構出ます。コーダも最後の最後でミスタッチの連鎖が起こってしまいました。
華麗なる変奏曲Op.12は演奏される機会の少ないマイナーな作品で、この作品を選んだ意図がよく分からないのですが、
他のコンテスタントと同じ曲で比較されるのを避けたのではないかと考える聴き手も必ずいると思うので、
それだけ良い演奏が求められます。この作品に必要十分な華やかさがあってまずまず良い演奏だったと思います。
ワルツOp.18は1つ1つのモチーフ、フレーズに表現の工夫を施していて、聴いていて面白い演奏でした。
ポロネーズOp.53は、無骨で力強くて骨太の演奏。技術的にはやや粗が多いですが、悪くはないと思いました。
この人は前回6年前のショパンコンクールでも2次予選で敗退していますが、今回はどうでしょうか。
前回同様、ミスタッチは多めですが、それを補うだけの魅力があるかというと、そこまでではないような気がしました。
B 18. Mr Yuchong Wu, China
スタインウエイ300を使用。
舟歌Op.60は、穏やかで平和な音楽。とても静謐で良い流れだと思いましたが、イ長調で始まる中間のテーマで
違った音を弾いて途中、迷子になりかけるという事故がありました。残念ながらこれは減点対象になりそうです。
全体的に上品でおとなしめの演奏でした。最後のゆっくりしたパッセージに音抜けやミスタッチがありました。
ワルツOp.34-1は、遅めのテンポで余裕のある音の運び、この曲の華やかさも十分に引き出していて
良い演奏だったと思います。
ワルツOp.34-2は、1つ1つの音に心を込めて切々とピアノを歌わせていました。
ショパンの心の細かいひだ、機微を敏感に感じ取って、
それを音に反映させているという趣の、非常に芸が細かい演奏でした。この作品、ショパン自身が、自分のワルツの中で
最も気に入っていた作品ですよね。
ワルツOp.34-3は軽快で溌溂としていて良い演奏でした。
アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズOp.22:
アンダンテスピアナートは、1つ1つの音、フレーズを心を込めて切々と歌う・・・やはり芸が細かいです。
他のピアニストが何となく流してしまう音にも細かいニュアンスを込めて陰影を付けて弾いていて、
なかなか聴かせてくれます。
華麗なる大ポロネーズは、細かいモチーフ全てを大切に扱い、細かく表情を付けて弾き分けていました。
難所も技術的にほぼ完璧でした。
後半:5時~9時(日本時間:10月11日(月)午前0時~4時)
D 19. Mr Lingfei (Stephan) Xie, Canada/China
スタインウエイ300を使用。
舟歌Op.60はオーソドックスで美しい演奏ですが、3度のトリル、6度の進行などの粒の揃い方が今一つで
やや決め手に欠ける印象でした。
ワルツOp.64-3は、この作品の詩情に重きを置いた無難な演奏、ところ内声を際立たせるなどの工夫も見られました。
バラードOp.47はオーソドックスで良い演奏だと思いますが、ところどころ音の不揃いや比較的大きいミスタッチがあり、
この人にしてはやや精彩を欠いていた印象でした。
レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ(ノクターンNo.20)嬰ハ短調遺作は、
この人の持ち味の美音の魅力をそのままの形で最大限に発揮できる作品を、という意図での選曲ではないかと思います。
この作品の物悲しい雰囲気、旋律美を堪能できる良い演奏だったと思います。
アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズOp.22:
アンダンテスピアナートは、この作品の旋律美を際立たせた良い演奏だと思いました。
華麗なる大ポロネーズは、決して悪くはないのですが、音抜けやミスタッチが多く散漫な印象で、
また音量と音価が安定しないという、以前指摘したこの人のよくない部分が出てしまっているように感じました。
やや準備不足でしょうか。通過は厳しいのではないかと思います。
D 20. Mr Zi Xu, China
スタインウエイ479を使用。
この人は前回2015年ショパンコンクールにも出ていて、再挑戦の人です。
遅い部分で止まりそうなくらいテンポが遅い演奏をしていた記憶が強く残っている人です。
1次予選は聴けなかったので、今回興味深く聴きました。
ノクターンOp.48-1は、やはり前半の主部はかなり遅めのテンポでした。後半の盛り上がりを際立たせるための
お膳立てという位置づけなのかもしれませんが、正直あまり好きではない演奏でした。
バラードOp.38は緩徐部はやはり遅いテンポのおとなしい演奏、コン・フォーコやコーダのアジタートとの
激しさが際立つという演奏スタイルでした。
スケルツォOp.31は第2主題などはロマンティックで旋律美が魅力的なのですが、中間部の緩徐部のテンポが遅すぎて
流れの良さが帳消しになってしまうようで何とももったいないです。
ワルツOp.34-1は随所に表現の工夫をしていますが、それがこの作品の本来の良さを損なわせてしまっているように
感じられ、個人的にはあまり惹かれるものはありませんでした。
ポロネーズOp.53は十分迫力があり技術的にも高度な演奏だと思いました。
この人はこの人なりにやりたいことがあるはずなのですが、
僕の理解を超えているようで、良さが分かりませんでした。
単純な好みで言えば、好みの演奏ではありませんでした。
C~D 21. Mr Piotr Alexewicz, Poland
スタインウエイ479を使用。
ポロネーズOp.44は暗く重いこの作品の本来の特徴を際立たせる弾き方で良い演奏だと思いました。
ワルツOp.34-3は軽快で適度な即興性もあって良い演奏ですが、やや精彩に欠ける部分もありました。
ワルツOp.64-3は優雅な雰囲気ですが中間部はやや流れがよくない部分もありました。
マズルカ風ロンドOp.5は、遅めのテンポ。本場のポーランド人の演奏ということで貴重なのでしょうが、
もう少し軽快さと流れの良い演奏の方が好きです。
バラードOp.52は、緩徐部のテンポが極端に遅く流れが良くないように感じました。
全体としてこの人の演奏は流れが停滞気味で重い印象です。
今日はここまでにしたいと思います。
? 22. Ms Leonora Armellini, Italy
ソステヌート・変ホ長調(ワルツ変ホ長調遺作)、ワルツOp.34-1、バラードOp.47、バラードOp.52、ポロネーズOp.53
? 23. Mr J J Jun Li Bui, Canada
華麗なる変奏曲Op.12、幻想曲Op.49、ワルツOp.64-3、アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズOp.22
10月11日(第2次予選:3日目)
前半:10時~14時(日本時間:10月11日(月)午後5時~9時)
? 24. Ms Michelle Candotti, Italy
幻想曲Op.49、ノクターンOp.55-1、ワルツOp.18、ポロネーズOp.44
? 25. Mr Kai-Min Chang, Chinese Taipei
スタインウエイ300を使用。
3つの新練習曲~第1番・ヘ短調、第2番・変イ長調、第3番・変ニ長調、ワルツOp.34-3、ロンドOp.1、
ポロネーズOp.5
? 26. Mr Xuehong Chen, China
舟歌Op.60、ソナタ第2番変ロ短調Op.35、ワルツOp.34-3、ポロネーズOp.53
B 27. Mr Hyounglok Choi, South Korea
スタインウエイ479を使用。この人が弾くとマイルドで優しい音色に。
プレリュードOp.45は遅いテンポで切々と歌う悲しげで孤独なショパン。
スケルツォOp.54は切れ味を求める最近の若手ピアニストの中にあって、
ソフトなタッチで優しさを感じさせる軟派でおとなしい大人の演奏。好みが分かれそうです。
ワルツOp.34-3はテンポもよく安定していて安心して聴いていられる演奏でした。
バラードOp.23は地に足の着いた着実な音運び、やや間延びした印象がなきにしもあらずですが・・・
ポロネーズOp.53は最近のピアニストにしてはテンポは遅めですが、和音のバランスはよく
音はよく通っていたと思います。こういうスケールの大きい英雄ポロネーズ、結構好みだったりします。
音色はマイルドで芯が太く派手さはないのに味わいがあって聴かせる・・・現代のルービンシュタイン?
こういうタイプは他にいなさそうなので、個人的には通過してほしいです。
D 29. Mr Federico Gad Crema, Italy
ファツィオリを使用。
ポロネーズOp.61は特に良くもなく悪くもなく勝負はこれから、というところ、3度の連続部で事故発生。
細部は粗く突っ込みどころ満載という気がしますが、細かいことにこだわらないのはイタリア人気質でしょうか。
ポロネーズOp.26-1は、各フレーズ、各音に細かく表情付けしていて、切々と歌っていて惹かれる演奏でした。
ポロネーズOp.26-2はあまり特徴がなく和音もあっさり目で鳴らしていて、この作品を選んだことによって
ポイントを稼いでいる印象はありませんでした。
ワルツOp.42は、これまた大事故発生・・・あっさり目の軽いタッチの演奏ですが技術的に弱さがある演奏でした。
この人はこれだけの演奏で大事故が2回、また事故にならずともうっかりやヒヤリハットが多くて、
安心して聴けないところがマイナスでした。
B~C 28. Mr Alberto Ferro, Italy
スタインウエイ300を使用。
ワルツOp.18は即興性豊かで自然な演奏でした。特に余計なことをしないことでこの曲の良さが自然に引き立っていると
感じました。
バラードOp.52は流れや抑揚が自然でとても聴きやすい演奏だと思います。
技術的にも良い演奏ですが、惜しいことにコーダがやや崩壊気味でした。
アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズOp.22:
アンダンテスピアナートは、淡々とした流れが美しいですが、よく聴くとかなりルバートしています。
華麗なる大ポロネーズは軽妙かつ洒脱、技術的は粗い部分もありますが、一応破綻なく弾けていました。
全体として作為がなく自然でとても美しい演奏ですが、決め手に欠ける印象もあります。
上位互換の存在が気になる演奏内容でした。
後半:5時~9時(日本時間:10月12日(火)午前0時~4時)
B~C 30. Ms Yasuko Furumi, Japan
スタインウエイ479を使用。
ポロネーズOp.44は主部は和音をダイナミックかつバランスよく鳴らしていて、また流れも自然で良いと思いました。
中間部のマズルカは美しく自然で僕自身は好きなタイプの演奏でした。
期待以上のダイナミックで美しく完成度の高いポロネーズ5番、感動しました。
ポロネーズOp.61は、バランスがよく美しいなかなか良い演奏・・・と思っていたら、曲の中ほどの右手の16分音符の
パッセージで音を引っかけて音の一群が抜けるという事故が起きてしまいました。
よく立て直しましたが、良い演奏であるだけに惜しいです。
その後もところどころ怪しげな部分が・・・大曲を2曲続けて、少し集中力が切れてきたような印象がありました。
ワルツOp.34-3は普通の演奏でした。個人的にはもう少し快活で溌溂とした演奏が好みです。
舟歌Op.60は美しい詩情と情熱・ダイナミズムの両方を兼ね備えた良い演奏だと思いました。
B~C 31. Mr Alexander Gadjiev, Italy/Slovenia
シゲル・カワイを使用。
プレリュードOp.45はルバートの基本を守りながら、1つ1つの音に独自の味付けを施して、
この人なりのオリジナリティを出していて、美しく興味深い演奏でした。
舟歌Op.60は、多彩な音色を操り、1つ1つのフレーズに工夫と変化を付けていて、とても芸が細かいと思いました。
技術的にはやや粗がありますが、それを補って余りある良い演奏だったと思います。
ポロネーズOp.44も、オリジナリティを出そうというこの人なりの表現意欲を感じましたが、
デフォルメすることにより、ポロネーズリズムの「軸」がぶれているように感じました。
それと両手のユニゾンでポロネーズリズムを刻む部分、両手の音の粒が揃っていないようで、
技術的にはやや弱いと思います。この曲に関しては好みの演奏ではありませんでした。
ワルツOp.42は軽妙でオシャレな演奏。ルバートがやや過剰で好みが分かれそうです。
バラードOp.38はダイナミックで良い演奏だと思いますが、やはり技術的な粗さが耳につきました。
僕自身は結構テクニック重視の聴き手になってしまっているからか、この人に対する評価が辛めに
なってしまう傾向があるようです。本当はすごい実績のあるプロのピアニストなんですけど・・・
B~C 32. Ms Avery Gagliano, U.S.A.
スタインウエイ300を使用。
バラードOp.47は自然な流れで技術的にもほとんど隙がない良い演奏でした。
ただこの人は1次予選の時の方がはるかに良い音を出して、隙のない美しさでは突出していた記憶がありますが、
今日の演奏はその時に感じた感動が全くないのはどうしたことでしょうか。
今日はこのピアノの鳴りが明らかに悪いです。
ノクターンOp.62-1も期待していたのですが、この人らしくなく美しさは十人並みという印象でした。
ワルツOp.34-3は特に軽快というわけではありませんが普通の良い演奏でした。
アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズOp.22:
アンダンテスピアナートは、自然で美しい演奏でした。
華麗なる大ポロネーズは癖がなく自然で美しい演奏ですが、中ほどの右手6度の付点リズムでの
半音階下降部分で事故がありました。
全体として1次予選と比較すると、この人にしては精彩を欠く冴えない演奏という印象ですが、
これは明らかにピアノのせいだと思います。運よく通過することを祈ります。
今日はここまでにしたいと思います。
? 33. Mr Martin Garcia Garcia, Spain
ワルツOp.34-1、バラードOp.47、即興曲Op.51、スケルツォOp.31、ポロネーズOp.53
? 34. Ms Eva Gevorgyan, Russia/Armenia
バラードOp.47、ワルツOp.34-1、ワルツOp.34-2、ワルツOp.34-3、ポロネーズOp.44
管理人コメント
現在、当サイトの中の今回のショパンコンクール関連のページ閲覧数(ページビュー:PV)が
爆発的に増加しています。当ページだけで、閲覧数は1日10,000PV以上(重複を含めて)となっています。
当サイト始まって以来のバズりようで、驚いています。
僕自身は全く把握していないのですが、どこかで当サイトが紹介されているのでしょうか。
当初は各演奏に対する自分自身のメモ・備忘録を目的として始めたこの試みが、
ここまで多くの方々に読まれるようになったことに当初は戸惑いを感じていましたが、
最近はそのことでモチベーションが向上しています。
この演奏に対して、他の人たちはどのように感じているのだろう、という関心はすごく高いのですが、
不幸にしてそのような情報にアクセスするすべが全くありません。
しかし僕がそのように感じているということは、僕と同じような他の多くのショパン愛好者も
同様に感じていて、何らかの情報を求めている(=需要がある)ことは間違いないと考えられますし、
僕自身が各コンテスタントの各演奏に対してどのように感じているかについての
率直な意見を書いて公開すれば、きっとその情報に飛びついてくる人が大勢いるはずだ、と考えられ、
実際にそのような人たちが気になってこちらのページにアクセスしているのだと思います。
そのことを今回の試みを通して如実に実感した次第です。
このようにモチベーションが上がる中、1人でも多くコンテスタントの演奏を聴いて、それに対するコメントを、と
連日寝不足で頑張っています。5年に1度のショパン祭典と考えれば、ここぞとばかりに頑張る意外にないと思います。
何とかこの寝不足月間を楽しみながら乗り切りたいと思います。
10月12日(第2次予選:4日目)
前半:10時~14時(日本時間:10月12日(火)午後5時~9時)
? 35. Ms Wei-Ting Hsieh, Chinese Taipei
スケルツォOp.20、ワルツOp.34-1、アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズOp.22
? 36. Mr Adam Kałduński, Poland
ポロネーズOp.53、ワルツOp.64-1、ワルツOp.64-2、ワルツOp.64-3、舟歌Op.60、スケルツォOp.39
D 37. Mr Nikolay Khozyainov, Russia
スタインウエイ479を使用。
ポロネーズOp.53は悪くはないのですが、全体的にダンパーペダルやや踏みすぎで
音が濁りがちで重いかな、と思いました。ショパンの本来の音楽の在り方としてはやや異質という印象がありました。
ワルツOp.69-1は、全体的にリズムの自然な伸縮がなく棒弾きに近く、
ワルツリズムや旋律美の魅力が薄いのが気になりました。
ワルツOp.34-3は冒頭の序奏の繰り返し音型が1小節分足りないという事故が・・・出だしは悪くないのですが、
中間部がやや停滞気味でしょうか。この人の演奏は軽快に弾くべきところで重いです。
バラードOp.38はダイナミックな演奏で悪くはないのですが、強奏で音が濁るのと粒が粗いのが気になりました。
フーガ・イ短調遺作、ショパンの作品の中にこんなバロック風の作品があったのですね。
ショパンらしいテンポルバートが必要なさそうな作品ですが、
この作品を選んだ意図がよく分からないです。
マズルカOp.41-1はこの作品にしてはあっさり目。
マズルカOp.68-4はショパンの「白鳥の歌」ですね。
この作品をこの人がここで選んだ意図を考えると、それだけで胸に迫りくるものがあり、本当に泣いてしまいました。
この作品の「泣ける」演奏とは趣がかなり違うのですが・・・
舟歌Op.60はデフォルメして抽象画化しているというか、既にこの人の心象風景となっている感がありました。
全体として聴きなれない要素が盛りだくさんの、あらゆる意味で異質なショパンでした。
A 38. Ms Su Yeon Kim, South Korea
スタインウエイ479を使用。音が光り輝いていて、とても鳴りが良いです。
バラードOp.47は清純で上品で美の極致とも言える素晴らしい演奏で技術的にもほぼ完璧でした。
即興曲Op.29は即興性も十分で表現もよく考えられていますが、それが自然な枠内に収まっていて、
センスの良さを感じました。
ワルツOp.34-3は適度に軽快で流れがよく美しい演奏でした。
バラードOp.52は、特に奇をてらったことをしておらず全てが自然で淀みの全くない美しい演奏。
ポロネーズOp.44はこの作品の最良の意味で模範的な演奏で、中間部のマズルカもこの人の手にかかると
洗練されたものに変貌するようです。
全てが自然で美しい、正統派中の正統派。
奇をてらったことをやっていないのに退屈することがなく聴き入ってしまうのが不思議です。
コンテスタント全員の演奏を聴いていないので断言はできませんが、この方面での上位互換は存在しないように聴こえました。
この人が優勝候補でしょうか。しかしそうなると2回連続韓国人覇者となるわけで、
これを審査員側、ショパンコンクール運営側が容認するかどうか、何らかの操作が加えられる可能性が
懸念されます。そのようなことがないことを祈るばかりです。
B 39. Ms Aimi Kobayashi, Japan
スタインウエイ479を使用。
ポロネーズOp.61は出だしから大柄・壮大であり、この2次予選にかけるこの人の意気込みが伝わってきました。
表現はこの作品の本来の良さを生かしながらも、ぎりぎりまで振幅を大きく取ることで、
立体感を生み出すことに成功していたと思います。ただ美しく弾いても前奏者を超えることはできない、
となれば何らかの別の良さで差別化を図ろうという意図が感じられました。
かなりリスクを取って大胆な表現を意識しているようでした。そのためか、ところどころ小事故が
ありますが、前奏者を意識してハイリスク・ハイリターンを狙ったのではないかと思います。
バラードOp.38もスケールの大きい立派な演奏ですが、表現の振幅を大きくしようと「背伸び」
しているような印象があり、聴いていて少し辛くなりました。
体格の差はいかんともしがたいものがありますが、それを無理に乗り越えようとするのではなく、
自分に与えられたもので自然に勝負する方が魅力ある演奏になるようにも感じました。
ワルツOp.42は流麗で洒落っ気もあり、最後はかなり大胆かつ華やかさを出していました。
アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズOp.22:
技術的にも高水準で、女性奏者としてはダイナミックレンジの広い演奏でした。
ただ全体として、フォルティッシモの音色がややきつめで聴いていて疲れる演奏ではありました。
C~D 40. Mr Mateusz Krzyżowski, Poland
スタインウエイ479を使用。
ノクターンOp.48-1は鋭く輝く音色でこの曲の良さを自然に引き出したなかなか良い演奏でしたが、
後半の和音の連続部でミスタッチがやや目立ちました。
バラードOp.23は自然な演奏ですが、音の粒の揃い方が今一つなのと、後半は目立つミスが多めで
何とも惜しい出来となってしまいました。
ワルツOp.34-1は即興性のある自然で良い演奏だと思いました。
ここでエチュードOp.10-6を挟むプログラミングの意図がよく分かりませんが、
憂鬱で重く暗いこの曲独特の雰囲気は自然に出ていました。
ポロネーズOp.53は悪くはないと思うのですが、フレーズとフレーズがぶつ切りになったり、
流れが急に変わったりして、滑らかさがあまりないように感じました。
テクニックが弱いのが残念でした。
後半:5時~9時(日本時間:10月13日(水)午前0時~4時)
A 41. Mr Jakub Kuszlik, Poland
スタインウエイ479を使用。
ワルツOp.34-1はコクのあるまろやかな音色でとてもシックで上品。この作品の華やかな要素も堪能できる、
本当に素晴らしい演奏。主部の再現部のところでの右手の上昇音階を1オクターブ追加していたのは
アドリブでしょうか?この人はタイプ的にアドリブしそうにないのですが・・・(不勉強ですみません)
ワルツOp.34-2は、耳に心地よく自然で淀みがない演奏。ずっと聴いていたくなる演奏。
ワルツOp.34-3は、意外に軽快で上品な素晴らしい演奏。
バラードOp.38は主部のヘ長調の部分でさえ味わい深い・・・この深い精神性は不思議です。
コン・フォーコ、コーダのアジタートも鍵盤を叩かないので、とても耳に心地よいフォルティッシモが鳴ります。
難所になっても難しさを全く感じさせず、安心して身を任せられるピアノ演奏。抜群の完成度、抜群の安定感。
ポロネーズOp.44は、安定したリズムとバランスの良い和音、抜群のテクニック・・・余裕と貫録さえ感じさせる
素晴らしい演奏でした。
B 42. Mr Shushi Kyomasu, Japan
ヤマハCFXを使用。キラキラとした輝かしく品の良い音色。今日もよく鳴っているように感じました。
舟歌Op.60は、予備予選の印象通りの、自然な流れで上品でひたすら美しい演奏でした。
和音の強音でも音が濁らず少しも形を崩さずにまっすぐに耳に届いてくるピアノの音。
このような演奏、このような音色は理屈抜きに好きです。
ワルツOp.34-1は、まさに「華麗なる円舞曲」。輝かしい音がこの作品の華麗さと詩情を
より一層引き立てているように感じました。速いパッセージにも細かいニュアンスを施していて、
「詩」を感じました。
ノクターンOp.27-2は、夢見るような美音で、うっとりするような神々しい美の極致の世界へと
誘ってくれる、素晴らしい演奏でした。
アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズOp.22:
アンダンテスピアナートは、キラキラした高音がとにかく美しく、流れも自然で神々しい美しさ。
華麗なる大ポロネーズは、ひたすら美しい路線の演奏。やや線が細いのと真面目な感じがするのが
どのように評価されるか、気になります。3度の半音階下降部分と、中間部の右手の細かい装飾的パッセージで
大きく崩れたのがどう響くか・・・減点してほしくないですが、おそらく減点対象と思われます。
全体として毒のないひたすら美しい演奏で、個人的には通過してほしいです。
D 43. Mr Hyuk Lee, South Korea
シゲル・カワイを使用。前奏者(京増さん)の音色と比べると硬質で音が曇っている印象。
1次予選は硬く詰まる音で技術的にも荒れ気味で、敗退濃厚と思っていましたが、通過しました。
スケルツォOp.39は強奏で音が硬く詰まるのがどうしても気になってしまいました。
演奏自体はそこまで悪くないのに、ピアノ選びで損をしている印象です。
ワルツOp.42はくぐもった音ではありますが、普通の良い演奏だったと思います。
音が輝いていると音色を均質にそろえるのにタッチ神経を使いますが、音がこもっているとタッチが不均一でも
ある程度粒が揃って聴こえるので、その点でデメリットが多少メリットにもなっていると思います。
ソナタ第2番変ロ短調Op.35:第1楽章は完成度はそこそこ高くて良い演奏なのですが、やはり硬い音が
耳に攻撃的に響いてきて、聴いていて疲れる演奏でした。第2楽章は個人的には特に中間部の変ト長調の
緩徐部分が好きなのですが、音色に魅力がないからか、あまり惹かれるものを感じませんでした。
ルバートはセンスが良いのに、もったいないと思いました。第3楽章の葬送行進曲は普通の演奏ですが、
中間部の旋律部が間延びして聴こえました。音色の魅力に乏しいせいもあるかもしれません。
第4楽章のユニゾンは音の粒がやや粗いと思いました。
これが終わった後で、会場から拍手が!途中で拍手したくなるほど、そんなに良い演奏でしたか?
いやいや、そうではなくて、これで終わりと聴衆が勘違いしたのか、まだあと1曲残っているのに、
「もう終わりでいいよ」という聴衆からの終了要請コールでしょうか?(そんなことを考えるのは人が悪いですね)。
ポロネーズOp.53は、かなりかっちりとした硬派の演奏。今日のこの人の演奏でこれが一番良い演奏と思いましたが、
時すでに遅しでしょうか。
明日は早いので今日はここまでにします。
次のBruce Liuさんは、1次予選で演奏した、超キレッキレのスケルツォ4番で、僕の中でこの人の株が
急上昇し、特に注目している1人で、聴きたいのですが、無事通過してくれることに期待して、寝ます。
44. Mr Bruce (Xiaoyu) Liu, Canada
マズルカ風ロンドOp.5、バラードOp.38、ワルツOp.42、アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズOp.22
45. Mr Marcin Wieczorek, Poland
バラードOp.23、エチュードOp.10-12、ワルツOp.34-1、ワルツOp.34-2、ワルツOp.34-3、ポロネーズOp.53
2次予選通過者一覧
引用:
ⅩⅧ KONKURS 18TH CHOPIN COMPETITON WARSAW
1. Mr Piotr Alexewicz, Poland
2. Ms Leonora Armellini, Italy
3. Mr J J Jun Li Bui, Canada
4. Ms Michelle Candotti, Italy
5. Ms Yasuko Furumi, Japan
6. Mr Alexander Gadjiev, Italy/Slovenia
7. Ms Avery Gagliano, U.S.A.
8. Mr Martin Garcia Garcia, Spain
9. Ms Eva Gevorgyan, Russia/Armenia
10. Mr Nikolay Khozyainov, Russia
11. Ms Su Yeon Kim, South Korea
12. Ms Aimi Kobayashi, Japan
13. Mr Mateusz Krzyżowski, Poland
14. Mr Jakub Kuszlik, Poland
15. Mr Hyuk Lee, South Korea
16. Mr Bruce (Xiaoyu) Liu, Canada
17. Mr Szymon Nehring, Poland
18. Mr Kamil Pacholec, Poland
19. Mr Hao Rao, China
20. Ms Miyu Shindo, Japan
21. Mr Kyohei Sorita, Japan
22. Mr Hayato Sumino, Japan
23. Mr Andrzej Wierciński, Poland
2次予選審査結果に対する管理人コメント
2次予通過者発表は日本時間で10月13日午前6時頃に行われたようです。
僕はその結果が気になりつつも仕事のため確認できず、昼休みの12時過ぎにやっと確認したのですが、
一言で言えば、1次予選に負けず劣らず衝撃的でした。雷に打たれたようなショックで言葉が出ませんでした。
これは何かの間違いなのではないか、夢でも見ているのかとさえ思ったほどでした。
その理由は、一言で言えば、僕の中で絶対に通らない(または通してはいけない)と思っていたピアニストが大勢通過し、
絶対に通る(または通ってほしい)と思っていたピアニストが大勢敗退した 、これに尽きます。
閲覧数が多く、昨日いただいたメールからは、僕のコメントを心待ちにしている人が大勢いらっしゃると思られるため、
ひとまず先に結論を書き、アップロードした後で、詳細について以下、書き進めていきたいと思います。
上述した「僕の中では絶対に通らない(または通してはいけない)と思っていたピアニストが大勢通過」
に該当するピアニスト名を具体的に挙げるのは気が引けるため、傾向を述べるに留めたいと思いますが、
その中でのポーランド人コンテスタントの占める割合が非常に高いです。
僕自身から見て、文句なしに通過、というポーランド人は、Jakub Kuszlikさん ただ1人です。
それ以外のポーランド人は技術的に水準以下でミスタッチが多いピアニストが大半で、
敗退濃厚~敗退する可能性の方が高い、と思っていたピアニストたちでした。
そのうち1人から2人程度なら通過する人がいても確率論から見ればおかしくないのですが(大数の法則的に)、
これだけ多くのポーランド人が通過するというのは、何らかの意図的操作(自国ポーランド人びいき)があると
考えなければ、辻褄が全く合いません。
そもそも、予備予選免除の要件としてのコンクール歴もポーランド人コンテスタントを優遇するものとなっており、
コンクール開始前から、その姿勢は明らかでした。
一方、「絶対に通る(または通ってほしい)と思っていたピアニストが大勢敗退」の中にポーランド人は1人も
いませんでした。残念なことにこの中には日本人コンテスタントがいます。牛田智大さん と
京増修史さん の2人です。
この2人はどちらもヤマハCFXを選択していました。ここに原因の一端があった可能性があります。
牛田智大さん は1次予選から修正しダイナミズムだけでなく抒情性も意識した良い演奏で技術的レベルも高かったと
思いますし、通過濃厚と考えていたのですが、何が足りなかったのでしょうか。考えられるのは、ピアノの響き、
音色です。この人はヤマハCFXを使用していましたが、このピアノが会場で聴こえる生の音の聴こえ方と
配信音の聴こえ方やその印象に大きな違いがあった可能性があります。
牛田さんに対する僕のコメントの中で、舟歌の強奏がややメタリックでやせているように聴こえた、
という記述がありますが、会場で聴くとその傾向がより強かった可能性があるのかな、と分析したりします。
いずれにしても牛田智大さんの2次予選での演奏は、ここで敗退するようなレベルではなかったと思っていますし、
個人的には本選まで進んでほしい人でしたので、とても残念でした。
京増修史さん もヤマハCFXを選択していて、とにかく品の良い美音が印象的でしたが、
気になった点は、演奏の線の細さとスタミナ切れなのか、最後の華麗なる大ポロネーズでミスタッチや
音の不揃いが目立ってきたことでした。とても音色が素晴らしく、ショパンらしい良い演奏で個人的には
好きなタイプの演奏であっただけに、この人の敗退も非常に残念でした。
沢田蒼梧さん は、さすがにミスタッチが多く、通過は厳しいと思っていたのですが、
上述したポーランド人通過勢よりは演奏レベルは高かったと個人的には思うのですが・・・
でも医学生としてここまで健闘したことに最大限の敬意を表したいと思います。
素晴らしい演奏を本当にありがとうございました&お疲れ様でした。
さらに研鑽を積んで5年後のショパンコンクールに再出場してほしいと思っていますが、
仮にそうではなく医師としてキャリアを積んでいくとしても、ここまでできる方なので、
きっとその道で大成するのではないかと思っています。この人の今後の成功と活躍を心より願っています。
その他、興味深い演奏をした天才肌の中国人勢がほとんど敗退しました。
当初、僕は予備予選通過者の全演奏を聴き終わった後、
「今回のショパンコンクールは中国人の圧勝、入賞者6人のうち中国人が3~4人を占めてもおかしくないのではないか」
と予想していたほどでしたが、ここに来て、3次予選進出を果たした中国人は、Hao Raoさん
ただ1人と、風前の灯火となってしまいました。
演奏内容に関して正しく公平に審査が行われていれば、中国人コンテスタントが1次予選・2次予選でここまでごっそりと
敗退してしまうことは、考えられないことです。
中国人に対する差別があると考えなければ、この結果も全く辻褄が合いません。
この中国人大粛清の中で、何故、Hao Raoさんだけが生き残ったのか、それはこの人の演奏が問答無用に
素晴らしいから、というよりも、「脅威を感じないから」ではないかと考えています(1次予選審査結果に
対するコメントでも述べた通りです)。
脅威というのは優勝する可能性、と言い換えても良いです。
Hao Raoさんの演奏は言葉の最上の意味で秀才的ですが、天才性はあまり感じられない
模範的でおとなしい演奏スタイルで、このようなタイプは入賞することはあっても、優勝争いには絡めない、
と相場が決まっています。
一方、僕が一押ししていたYifan Houさん、Shun Shun Tieさん(いずれも1次予選敗退)は、タイプこそ違いますが、
いずれも勢いがあり、他のコンテスタントを圧倒する「迫力」が感じられました。
そして1次予選では僕の中での印象が悪かったが2次予選でその天才性が垣間見えたYutong Sunさんも、
新たな「脅威」と認識されたがために、2次予選で抹殺された(言葉が悪いですが)と思えてなりません。
この流れを考えると、ショパンコンクール運営側、審査員側は今回の優勝者はポーランド人から出したいのではないか、
と思えてならないのですが、そうなると、ポーランド人コンテスタント中、僕がダントツトップと考えている、
Jakub Kuszlikさん がその候補となります。この人を優勝させる出来レースとは考えたくないのですが、
仮にそう考えると、この人に対抗できそうなコンテスタントが「脅威」となり得ます
(韓国のSu Yeon Kimさん はそれに該当すると思います)。
このような「脅威」は早めにその芽を摘み取っておかないと、その才能が認識されて世間で認められると、
審査員側も敗退させにくくなります。その意味で、この人はここまでよく生き残ったと言えます。
こうして優秀で将来性のあり勢いのある中国人コンテスタントが粛清され、平均レベル以下のポーランド人コンテスタントが
生き残るという、何とも残念な結果となってしまいました。
誤解されないように再三ここで言っていますが、僕は中国寄りの売国奴ではありません。またポーランド嫌いでも
ありません。いやむしろ尊敬するショパンの祖国ポーランドには限りない敬意と憧れを抱いているくらいです。
僕が嘆いているのは、中国人が不遇な扱いを受けたことではありません。
そうではなく潜在能力があり将来性もある楽しみな才能の芽(結果的に今回はたまたま中国人が多かっただけです)が、
次々に摘み取られていく、
という見るに堪えないコンクールの現状です。
僕は人種や国籍にかかわらず、自分の好みに合うショパン演奏を聴かせてくれる素晴らしい才能が
このコンクールで正しく公平に評価されて世界に羽ばたいていき、その後も活躍してくれることを
願っている、ただそれだけです。
今回のショパンコンクールも3次予選、本選を残すのみとなってしまいました。
残っているメンバーを見ると興味が半減してしまいますが、各コンテスタントがベストの演奏を披露し、
審査員の先生方がその演奏を正しく公平に評価してくれることを願うばかりです。
それにしても今回のショパンコンクールでは正しく評価されなかったものの、
中国人のピアノ演奏レベルの高さには驚愕しました。
中国にはピアノ人口が5000万人もいるそうで、我が国日本と桁が違います。
ピアノに全く適性のない下手な人から一握りの天才まで、その分布はピラミッド状に分布していると思いますが、
中国の強みはその人口です。底辺の初心者から頂点の天才まで、そのピラミッドの形状は日本も中国も
同様だと思いますが、その大きさが全く違うと思います。人口の絶対数が多ければ、
ピラミッドの頂点も当然高くなります。その人たちが今回大勢ショパンコンクールに押し寄せてきた、
と考えられるわけです。
今後、ショパンコンクール運営側が中国人パワーを抑え込むことは徐々に難しくなるのではないかと思っています。
日本人について
日本人コンテスタントは反田恭平さん、角野隼斗さん、小林愛実さん、古海行子さん、進藤実優さんの
5人が通過しました。それぞれ持ち味の異なる興味深いメンバーが勝ち残ったと思います。
前々回2010年ショパンコンクールでは日本人は2次予選で全員敗退、前回2015年は3次予選まで進出したのは
小林愛実さんただ1人でしたが、今回は5人と日本人も大健闘し、とても心強く頼もしいです。
3次予選は本選進出を決める大事な舞台です。日本人の皆さんが実力を出し切れることを願っています。
管理人の予定
昨日(10/13)は仕事その他の予定のため、更新する時間が全くありませんでした。
本日(10/14)は休みで、明日・明後日も年に1回の遅い夏休みをもらっているので
(あえてショパンコンクールの時期を選びました)、
この休暇中、よほどの急用が発生しなければ、3次予選は全ての演奏をリアルタイムで聴くことができます。
審査員
審査員長
カタジーナ・ポポヴァ・ズィドロン(ピアニスト、指導者、ラファウ・ブレハッチの先生として有名)
審査員(肩書)
ドミトリー・アレクセーエフ(ピアニスト)
サ・チェン(2000年第14回ショパンコンクール第4位)
ダン・タイ・ソン(1980年第10回ショパンコンクール第1位)
海老彰子(1980年第10回ショパンコンクール第5位)
フィリップ・ジュジアノ(1995年第13回ショパンコンクール第2位(1位なし))
ネルソン・ゲルナー(1990年ジュネーブ国際音楽コンクール・ピアノ部門第1位)
アダム・ハラシェヴィッチ(1955年第5回ショパンコンクール第1位)
クシシトフ・ヤブウォンスキ(1985年第11回ショパンコンクール第3位)
ケヴィン・ケナー(1990年第12回ショパンコンクール第2位(1位なし))
アルトゥール・モレイラ・リマ(1965年第7回ショパンコンクール第2位)
ヤヌシュ・オレイニチャク(1970年第8回ショパンコンクール第6位)
ピョートル・パレチニ(1970年第8回ショパンコンクール第3位)
エヴァ・ポブウォツカ(1980年第10回ショパンコンクール第5位)
ジョン・リンク(音楽学者、ショパン研究家、大学教授)
ヴォイチェフ・シフィタワ(ピアニスト・1990年第12回ショパンコンクール・セミファイナリスト(棄権))
ディーナ・ヨッフェ(1975年第9回ショパンコンクール第2位)
第2次予選課題曲
①以下の作品の中から1曲
バラード 第1番 ト短調 Op.23
バラード 第2番 ヘ長調 Op.38
バラード 第3番 変イ長調 Op.47
バラード 第4番 ヘ短調 Op.52
舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
幻想曲 ヘ短調 Op.49
スケルツォ 第1番 ロ短調 Op.20
スケルツォ 第2番 変ロ短調 Op.31
スケルツォ 第3番 嬰ハ短調 Op.39
スケルツォ 第4番 ホ長調 Op.54
ポロネーズ 第7番 変イ長調 Op.61
②以下のワルツの中から1曲
ワルツ 第1番 変ホ長調 Op.18
ワルツ 第2番 変イ長調 Op.34-1
ワルツ 第4番 ヘ長調 Op.34-3
ワルツ 第5番 変イ長調 Op.42
ワルツ 第8番 変イ長調 Op.64-3
③以下のポロネーズの中から1つ
アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 Op.22
ポロネーズ 第5番 嬰ヘ短調 Op.44
ポロネーズ 第6番 変イ長調 Op.53
2つのポロネーズ Op.26(第1番 嬰ハ短調 Op.26-1 & 第2番 変ホ短調 Op.26-2)
④演奏時間が30分~40分以内に収まるように、ショパンの他の作品を選択して演奏(複数選択可)
※演奏時間を超える場合、審査員が演奏を中断させることがある。