|
一体幾つの夜と闇を渡り歩いてきただろう。
心の暗い闇は復讐の炎となって私を突き動かす。
月もない、星もない夜だった。
建物から僅かばかりの灯りが漏れ、裏通りをうっすらと照らす。
腐った土台と表面を取り繕う歪んだ家、まるで私のような街だった。
かつての栄光は一瞬のうちに崩れ去り罵倒と蔑みだけが残された。
地位も、名誉も、栄光も、愛する者も、全てを奪われた。
そう、全ては失われたのだ。
残されたのは敗者。
迫害と屈辱が私の身と心を蝕む。
私を支配するものは醜い化け物だ。
そして私は彷徨い続けていた。
復讐に狂う、この哀れな男を救える者を探し続けた。
気が付けば祖国を遠く離れ、絶望の匂いがするこの街にいた。
取るに足りない街だった。
だが、そこに彼は「存在」していた。
街の人間達から存在を認められないモノ。
禁忌の如く、風さえも彼を避けて吹き抜けていた。
憐れな人間達。
この街の誰も、彼に気付いていない。
黒い獣の嘆きの歌声が響いていることに…
誰も彼の内なる声を聞こうとしない。
人々は異形のモノの嘆きの叫びに耳を塞ぐ。
哀れな人間達。
この街の誰も気付いていない。
黒い獣の奥に潜んでいる傷つき、怯えた子供の姿を。
この街で彼を見詰めるのは私だけ。
その姿は夜空、瞳はアンタレスの輝き。
闇の中で、光放つ者。
あぁ、そうか。
彼を見つける為の放浪だったのか。
神は私と彼の運命を引き寄せたのだ。
彼の暗い瞳が俺を見つめる。
もがき苦しむ私に救いを差し伸べる者。
彼自身、気付いていない。
彼こそが私を劫火から救ってくれるガーディアンだという事に。
私はお前を永遠に求めるだろう。
そして手折られた花のように私の手の中で朽ちていくがいい。
争うことを嫌い、安息を求める幼い獣よ。
私はお前を求めるように、お前が私を求める為に。
世界の果てで私達は、2匹の獣は、お互いを求め合うのだ。
名も無い、黒く、美しい、哀れな獣。
私がお前に洗礼を与えよう。
戦いを求める者、「ウォーズマン」と呼ぼう。
|