|
ここは宇宙の彼方、アンドロメダ星雲はレッスル星。
そして超人格闘術大学校、通称ヘラクレス・ファクトリーが闇にそびえ立つ。
深夜の校内を一つの影が音も無く移動していく。
影の名は、スカーフェイスことマルス。
彼の目指す先は宿舎棟の奥にあるシャワールームだった。
普段は悪行超人であるのを隠す為にオーバーボディを着用している。
が、そんなものを着てれば嫌でも全身ムレムレ。
己の体臭と言えど年頃の男の子には辛抱堪らん事にはなる。
そんなこんなで人目を避けつつ、少年は荒野…じゃなくてシャワールームを目指す。
宿舎棟には教官用の部屋も用意されている。
シャワールームに忍び込むには、ここの前を通らなければならない。
とはいえ、こんな真夜中に起きてるはずも無い。
でかい図体に似合わず、器用に爪先立ちでドアの前を過ぎようとした時、声がした。
少年マルス、思わず凍りつく。
今ここで見つかったら何の為に身分を誤魔化して入学したか分かったもんじゃない。
いや、それよりもシャワーを浴びれない場合、汗臭い自分が許せない。
毛先一つ動かさず、今しがたの声の気配を探る。
どう考えても教官室からだ。
そーと体を動かし、ドアに耳を当ててみた。
どうやら声の主はバッファローマンとラーメンマンらしい。
「おい、ラーメンマン。意地悪しないで、いい加減抜いてくれ」
「人に頼み事をする言い方じゃないな」
「…お願いします」
「あまり感謝を感じないがよかろう」
「―――っ痛!!いてぇなぁ」
「子供じゃあるまいし、大げさ過ぎる」
「もう少し優しくしてくれたっていいだろ」
「私は充分優しい。優しいからこそお前の願いどうりにしてる」
「ハイハイ、先生は心根がお優しい方です」
「その口調だと、これ以上続けないで、このままでよいと言うことかね?」
「えっ!?それは…抜いてください、お願いします」
「そうそう、最初から素直に言うことだ」
「なるべく優しく頼む」
「まぁ、努力はしてあげよう」
深夜に抜いてくれとか、もっと優しく、なんて聞かされれば、むやみに想像は花開く。
さすがは紅い種馬マルス、思わず前屈みなのは盗み聞きのせいか?
悶々としながら、取り敢えずはシャワールームへ忍び込み成功。
が、シャワー中も鼻息荒い少年、ちょっとだけ冷静になれ。
アレ(牛)とアレ(ヒゲ親父)で何を想像しているんだ?
〜やっぱ、レジェンドって言われるだけあるわー〜
変な感心のされ方をしてるとは露ほども知らず親父ども。
最近めっきり増えた白髪を人目を忍んで抜いているとは知らぬ少年。
ヘラクレス・ファクトリーがまだまだ平和だった頃のお話―――
|