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鳥達が明けの明星に再会の歌を捧げる頃、ベルリンの街は眠りから目を覚ます。
これは、悪夢の続きなのか?
意識的に昨夜のことは無かった事にしようと思っていた。
だが、この瞬間も俺の手を握り締めたまま、隣で証拠物件が寝息を立てている。
1発ぐらいは撲ろうかと思ったが考え直して起さぬように指を解き、ベットから離れた。
寝不足で体が重い。
見事に壊されたドアノブはジェイドが起きてきたら直させ…いや、自分で直そう。
奴に任せたら間違いなくスペアキーを作るに違いない。
今日は鍵屋回りをして頑丈な鍵を探してこよう。二度と壊されないようのがあればいいのだが。
静かな廊下で思わず溜息がこぼれた。
―――親父、俺もあんたと同じで子育てには向いていなかったようです。
何度目かの溜息をつきながら、シャワールームに入ると慎重に三重に鍵をかけた。
改めてシャワールームの鏡の中に写る、あまりに凄惨な自分の姿に思わず息を呑んだ。
あのバカの興奮した鼻血が体のいたる所にこびり付き、赤黒く変色している。
特に直撃を受けた顔は見るも無残なまだら模様になっていた。
ゆっくりとシャワーの蛇口をひねり、念入りに体の汚れを洗い落とした。
キレイさっぱりした所で、着替えを取りに寝室に戻るにはかなりの勇気を必要とした。
ドアの隙間から部屋の様子を盗み見るとジェイドはまだ寝ているようだった。
足音を立てないようにベットサイドに置いたままになっているヘッドギアを取りに足を進めた。
昨夜は月明かりを投げかけていたカーテンの隙間からは朝陽が零れ落ちていた。
僅かな光を浴びて、ジェイドの金髪は透明な輝きを甦らしている。
頬にかかる前髪をそっと掻きあげてやる。
閉じた瞳を縁どる睫毛も朝露を帯びた花の蕾のようだ。
幸せそうに薄く微笑んだ形のままの唇を見ていると、無邪気な子供に思えてくる。
これで乾いた鼻血さえなければ、完璧な寝顔であっただろう。
我が弟子ながら情けなくて泣きそうだ。
起さないように腕を大きく伸ばし、枕の向こうに置かれたヘッドギアを取る。
が、ギリギリまで延ばした一番無防備な姿を待っていたかのようにジェイドが目を覚ました。
「うん、あーぁあー…レ、レーラァ?」
微妙に焦点の合わない目で俺の顔を下から見上げてくる。
昨夜のことさえ無ければ愛おしさに思わず抱きしめかねない微笑を浮かべていた。
「レーラァ、そんな朝から積極的になられなくても」
トロけそうな声を声を出しながら下から俺の首に腕を回しかけてくる。
だが、皆まで言わさないうちに高角度から頚動脈に渾身の一撃を食らわす。
夜中に襲い掛かってきたときも同じように落とされたのをまったく覚えていないらしい。
至福の笑顔を浮かべながら再び枕に頭を沈めていった弟子の顔を見下ろした。
最大級の深い溜息を吐き出しながらヘッドギアを被る。
徐々に超人として力が体中に満ちてくるのを感じながら、ベットに長々と横たわるジェイドを
引きずり、部屋の外に放り出した。
ジェイドの事だ。次に目を覚ました時には俺に殴られた事も忘れているに違いない。
それにしても、何処の世界に己の弟子に対して貞操の危機を覚える師がいるだろう―――
大きく開け放した窓からは俺の悩みなど気にも留めない青空が広がっていた。
やーやーやー、前回の続きになってます。
ジェイドのアホッぷりをがんばって書いてみたかったのですが
相変わらず上手くいきませんでした。
ちなみにジェイドは未遂犯にしか出来ませんでした。
陣内的にはこれが精一杯なのです。
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