スポーツの科学(スキー・スケート)

 
スキーの滑降競技などでよく、重いほうが有利といわれます。(リュージュなどでは重量制限=ソリ重さと人間の体重の合計の上限が決まっていて、重量による有利・不利はありません。)斜面を滑降して行くきとき
質量の大きい物体ほど、働く力は大きくなります。力=質量X加速度・・・@ の関係があります。「だから
重いほうが有利」 これでは、正しい理由になりません。
まず、下の図と解説から斜面上の物体に働く力について正確に理解して下さい。
               簡単にするために、摩擦・空気抵抗は考えません。
       合成する
 
       物体に働くちからは、
       重力(W)と、斜面からの
       垂直抗力(N)だけです
    重力(W)と垂直抗力
  (N)を合成すると、斜
  面に沿った力に(F)なる
この図は中学の教科書にも載っています。しかし、以外に力の区別がついてない人が多いようです。
物体に働く力は、重力と垂直抗力の二つしかありません。Fはこの2つの合力です。
斜面のつくる角度をθ,物体の質量をm,重力加速度をgとすると、
            W=mg,F=mgsinθとなり、これを上の@にあてはめると、
            加速度=gsinθ  となります。
この加速度の式は、質量に関係していません。つまり、重いものでも、軽いものでも加速度は同じであることになります。
では、なぜ重いほど有利なのでしょうか?   

この説明に入る前、車のタイヤの溝について少し説明します。
雨の日は滑りやすいものです。これは、路面とタイヤの間に水が入り摩擦力(正確には、摩擦係数が小さくなる為)が小さくなるからです。日常の経験でなんとなく物理的に理解できると思います。タイヤの溝は、この水を逃がして、摩擦係数を少しでも大きくして、滑りにくくする役目をしています。スキー・スケートについてもこれと同じことが起こっています。

下のグラフと氷の結晶の図を見てください。このグラフは高校化学選択者なら1度は見たことはあると思います。また、グラフの AD の部分は中学生なら飽和水蒸気量のグラフとして”天気”の分野で学習します。
  いま、大切なのは境界線 AB です。この直線AB(正確
には曲線になりますが、ほぼこれにちかい右下がりで
す。)は、凝固点と圧力の関係を示しています。

  この線上をBからAに動いていくと、圧力が小さくなります。
そして、温度は少しずつですが上がっていきます。ここで
の温度は水が凍る温度(氷が融ける温度)です。つまり
圧力が下がれば凍り始める温度が高くなります。また、逆に
AからBに、つまり圧力を高くしたら凍り始める温度は下がります。

  スキー・スケートでは、固体(雪・氷)に上から圧力をかけること
になります。そうすると、凍り始める温度は下がり、氷が融けて水
が生じます。これで摩擦力(摩擦係数)が減少して、滑りやすくなる
のです。(自動車、自転車のタイヤに溝があるのは、路面とタイヤ
の間の水を追い出して、滑りにくくするためです。)

  圧力=重さ÷面積 ですから、面積が同じなら体重の重い選手
ほど大きな圧力をつくります。つまり、氷を融かしやすいのです。