日食と月食 (文字*の個所をクリックすると説明があります。)

  上の写真は、1987年9/23の沖縄での金環日食の写真です。(連続写真に合成しています)
  写真では月が太陽の右から入ってきていますが実際は右上から月がきています。
  よくある皆既日食の写真と少し違いますね。皆既日食のように太陽がすぽっり月に隠されていません。
  なぜ、このような日食の違いが起こるのでしょうか。皆既日食と金環日食について考えてみましょう。

  まず、皆既日食と金環日食の原理は同じです。太陽と地球の間に月が入るからです。
  下の図を参考にして下さい。
地球から見える月や太陽の大きさは、ほとんど同じです。
このため、地球・月・太陽が図のように並ぶと、月の影が
地球にできます。この影のできた地点で皆既日食や、
金環日食が見られます。この影の落ちなかった近辺では、
部分日食になります。


もう少し詳しく(楕円軌道の地球) 

  地球は太陽の周りを回っていますが、(公転といいます)太陽を中心とした円軌道ではなく、太陽を一つの焦点
とする楕円*軌道です。このため地球と太陽の距離は、地球の位置によっと異なります。
  地球と太陽の距離が近ければ太陽は大きく見え、逆に、地球と太陽の距離が近遠ければ太陽は小さくく見え
ます。また、月についても同様のことがいえます。つまり、地球から見て、月が太陽より大きく見えれば皆既日食
になり、逆に、月が太陽より小さく見えれば金環日食になります。

  金環日食で、月と太陽がつくるリングがきれいな同心円になるのは、月と太陽の中心を結んだ延長線上
    が地球と交わるポイントに限られます。
    このポイントからずれた地点では中心のずれた金環日食になります。

  ちっと古い(かなり古いかも)資料ですが、1980年版理科年表によると、
       太陽と地球の距離の最小値=1.47097X108(km)
       太陽と地球の距離の最大値=1.52099X108(km)
       太陽の赤道半径        =696000(km)
       月と地球の平均距離     =384400(km)
       月の赤道半径          =1738(km)
       地球の赤道半径       =6378(km)
  このデーターをもとに地球から見た太陽と月の見かけの大きさについて考えてみます。
          (厳密には地表上で眺めているので地球の半径・緯度などの要素も考える必要がありまが、
             月に着いては地球の赤道半径だけを考慮し、太陽については、十分 に遠いので微小部分を無視します。)

       太陽の赤道半径/太陽と地球の距離の最小値=4.7316X10-3
       太陽の赤道半径/太陽と地球の距離の最大値=4.5760X10-3
       月の赤道半径/(月と地球の平均距離−地球の赤道半径)=4.5976X10-3 
   ここでは、月と地球の距離を一定とみなして計算しましたが、この数値が大きいほうが大きく見え、
   小さければ小さく見えます。このことから、皆既日食になったり金環日食になったりすることが、
   理解できると思います。         


地球の公転面と月の公転面(この章は、日食・月食が毎月起こらない説明です。)

   皆既・金環日食・部分日食は新月(月齢0の月)のときにおこり、皆既・部分月食は満月のときに
 起こります。月の満ち欠けの周期は29日なので、ほぼ一月に一回、日食や月食が起きてもいいの
 ですが、実際はそんなに起こりません。(1年間でそれぞれ2回も起これば当たり年です。)

   天体が、公転運動している軌道面を公転面といいます。月は地球の公転面上を運動していません。
 月が運動しているの公転面は、地球の公転面と約5゜ほどずれています。ですから、地球の公転面上
 でないところで新月や満月になっても日食や月食は起こりません。
    (厳密には、少しのずれなら部分日食にはなります。また、皆既月食 は多少ずれても起こる場合もあります。)
 
  * 今のテーマとはあまり関係ないのですが月は同じ面を地球に向けているので、地球から
     月の裏を見ることはできません。つまり、月面の半分しか見えないことになるのですが、
     月と地球の公転面が同じでないので、地球から見た月は、揺らぎながら運動しているよ
     うに見えます。(秤動しょうどうといいます)秤動にはほかにも要因がありますが、秤動のおか
     げでわれわれは、月の全表面積の約6割を見ることがでます。


月食
  左の写真は、皆既月食の写真です。白線の
円は地球の影を示しています。
  この写真は、一つ一つの月食の写真を地球の
影の位置をそろえて重ね焼きした合成写真です。

  月食は、月が地球の影に入ってくることで月が
欠けて見える現象です。写真でもお解りの通り、
月が全て欠けてしまっても、まったく見えなくなる
わけではありません。全て欠けた月は、赤銅色に
見えます。これは、屈折した光の一部が地球の
に入り込むためです。(全部欠けなくても、光って
いる部分が少なくなれば影の部分は赤銅色に見
えてきます。
  皆既月食のときは、皆既中の月の色に注意して
見てください。
左の図の●は月です。
日食と違って月食は地球上のかなり広い範囲で見ることができます。
月が欠けて見えるのは、本影と呼ばれる影(斜線の重なったTの領域)に月が入ったときです。
斜線の重なっていない影の部分は半影といい、この影に月が入っても月は欠けて見えません。
半影の部分では、太陽からの光の量が減少するので、月の明るさが変わるので、暗くなるのですが、
肉眼ではほとんど判別できません。露光時間を一定にして撮影すれば暗くなっているのはわかります。
下の写真で半影の月が暗いことが確認できます。

また、欠け際がぼやけているのがお解りいただけるでしょうか。これは、本影と半影の境界は、地球の
大気の影響で上の図のようにはっきりしたものでないからです。
   半 影 に 入 っ て な い 月

半 影 に 入 っ た 月

本影に入って欠けはじめた月


 

 
国立天文台
        


楕円
左の図のように二箇所にピンを立てます。次に
適当な長さの糸(伸び縮みしないものならよい)
を用意し輪を作ります。次にペンで糸がたるまな
いように線を描くと楕円ができます。
このときのピンの位置のA,Bを焦点といいます。
円 は一定点からの距離が一定な点の集合ですが、
楕円 は二定点からの距離の和が一定な点の集合です。