The World


















気付いたときにはもう、剣を握っていた

剣を握って生きること

それが生まれた時から示された道だった
それがイヤだと思ったことはない
他の道など考えたこともなかったから
だけど、あの閉塞された場所は嫌いだった
掟という名の鎖で縛りつけられ、身動きが取れなくなりそうだったから
だから、規定の年になるよりも早く、飛び出した
出たら最後、二度と戻る気は無かった
戻りたいと思ったことさえ、無い

閉じられた世界の外には、知らないことが沢山あった
色々な人に会い、色々な場所に行き、沢山の人間を、モンスターを葬った
渡り歩いた戦場の数など覚えてはいない
死ぬと思ったことは何度もある
村を飛び出したあとの数年間は、とくに
誰にも負けないと思っていた
自分よりも強い奴などいないと
そう思っていた
村には子供の自分に勝てる大人が一人も居なかったから
だが、村の外には沢山いた
それが、楽しかった
嬉しかった
死を予感する戦いを出来ることに、喜びを見出すようになったのは村を出てすぐのことだ

生きるか死ぬか

ギリギリのラインに自分を立たせる
そうすると、自分が生きていることを実感する事が出来た
村では決して味わえなかったことを
自分の足で立っていると
今この場に自分はいるのだと、感じ取れた
だから、自分はここに有り続ける

足元に流れる赤黒い液体
自分の手を
全身を染め上げている赤と色と鉄臭い匂い


それが、自分の立っている場所
自分が求めた世界
生まれたときから、ずっと求めていた場所だ

誰に会おうと、どこに行こうと変わらない、世界

多分、一生

死ぬときはこの色の
匂いの中だろう

確信を持ってそう言える
それが、自分の歩いてきた道だから
歩いていく道だから
決して、反れることなく、突き進む道だから

































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