「姫ッ!姫っ!」
 遠くから聞えてきた声に、パーシヴァルの眉間に深い皺を刻み込まれた。
 聞き覚えのある声と呼びかけ方だ。だが、気にせず。むしろ無視するように歩を進め続ける。さり気なく歩幅を広げ、歩く速度を速めて。
「姫ッ!お待ち下さい。姫〜〜〜〜っ!」
 どうやら声の主は走っているらしい。声がドンドン近づいてきた。自分も走り出したかったが、それだとモロに逃げている感じがするので絶対にしたくない。
「姫ッ!姫〜〜〜〜っ!」
「その呼び方は止めろと言ってるだろうがっ!バカヤロウっ!」
 叫び、駆け寄ってきた男を本気で殴り飛ばした。完全装備中のパーシヴァルの一発だ。一般人の彼には相当効いたはずなのに、彼は気にせず転がった地面から起きあがった。
「何を仰います、姫!貴方を姫と呼ばずして、誰を姫と呼ぶのです?村の大祭を二回連続で制した貴方の事を!そして、三回連続の勝利も間違い無いと言われている、貴方の事をっ!」
「・・・・・・・・・五月蠅い。黙れ。勝手な事を言うな。」
「何が勝手ですか。今回の祭りでの貴方の大人の魅力に磨きがかかっている事は実証されましたからね。次回は熟女の妖艶さを・・・・・・・・・・」
「誰が『女』だっ!!!」
「ぐあっ!」
 今度は思わず足が出てしまった。再度地面にひっくり返った男だったが、やはり今度もめげずにすぐ様起きあがった。
「それはともかくとして、姫。」
「・・・・・・・・・・なんだ。下らない事を言うようなら斬り捨てるぞ。」
「下らないなんて事はありませんよ。先日買い付けに出掛けたとき、姫にピッタリだと思うものを仕入れてきましてね。」
「・・・・・・・・ほう。で?」
「はい。本日届いたので、お部屋に運んでおきました。是非とも一度ご使用下さい。」
 そう言って優雅に腰を折る様は、辺境の田舎者には見えない。が、見えないからと言ってどうと言う事もない。パーシヴァルが男の事を毛嫌いしている事に変わりは無いから。
 だから、期待に満ちた眼差しに凍り付くような冷たい眼差しを突き刺してやった。
「・・・・・・お前が寄越すものなど使えるか。」
「姫〜〜〜〜!」
 情けない声を発する男を無視して、パーシヴァルは再度足を踏み出した。
 そして、さっさと部屋に戻る。戻りたくはなかったが、仕事が終わったので。飲みに行くにも、鎧を付けたままではくつろぐ事も出来やしないので、仕方なく。
「・・・・・・・・・・コレか。」
 テーブルの上に乗せられたどでかい箱を目にして言葉が漏れた。
 それをじっと眺め、しばし考える。このまま捨て去るべきか、否か。
「・・・・・・・・・まぁ、開ける位わな。」
 男に罪はあっても物には無い。見るだけ見てみよう。絶対にろくでもないものだけど。
 そう思いながら箱を開けたパーシヴァルは、中のモノを目にした途端、全身をワナワナと震わせ始めた。
「・・・・・・・・・・ゴードンめーーーーーーっ!!!!!!!!!」
 送られてきたソレを握りしめ、窓の外を睨み付ける。そこに男が居るかのように。
「俺がこんなモノを着るかッ!馬鹿野郎ッ!!」
 その叫びは、ゴードンには届かなかった。
 例え届いたとしても、少しも気にしなかっただろうが。
 パーシヴァルは、ボルスが帰ってくるまで怒りに身を震わせ続けていた。贈り物を手にしたまま。
 黒を基調とした、ふわふわの襞が広がるメイド服を、手にしたまま・・・・・・

























ゴフリ(吐血)
スイマセン。「誓いの酒」の設定でお願いします。













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