「・・・・・・・・オムライスが食いたい。」
 ポツリと零した言葉に、隣でピーマンの収穫をしていたパーシヴァルがほんの少しだけ眉間に皺を寄せて問い返してきた。
「なんだって?」
「だから、オムライスが食いたいの。俺。」
 強調するように語気を強めてそう言うと、パーシヴァルは軽く首を傾げて何かを思い出すように視線を彷徨わせた。
「・・・・・・・・・そう言えば、レストランのメニューには無かったな。」
「ああ。あんなメジャーな食い物なのに無いんだぜ?おかしいよな。」
「メイミは知らないのかな。」
「さぁ、わかんねーけど。」
 軽く言葉を返したバーツは、仕事の手を止めてパーシヴァルの顔を覗き込む。
「今日の昼飯はオムライスが良いな。」
「はぁ?」
「作って。」
「・・・・・・・・お前なぁ・・・・・・・・・」
 心底呆れたという顔を全面に押し出したパーシヴァルは、ムッと眉間に皺を寄せて言葉を返してくる。
「ワザワザ貴重な休日の時間を割いて畑仕事を手伝っている俺に向って言う言葉か?それが。普通は仕事を手伝って貰った礼代わりにお前が作るものなんじゃないのか?」
「俺が作るよりパーシヴァルが作った方が美味いじゃん。」
「それはそうだが・・・・・・・・・・」
「それに俺。パーシヴァルの作る飯って大好きなんだよね。食べてるだけで幸せになんの。」
 その言葉はお世辞でもなんでもないので、自然と頬が緩んでくる。
 彼が作るご飯は本当に美味しいのだ。そして、手際の良い彼の動きを見ているだけでも楽しくなってくる。
 その時の姿を脳内で思い浮かべながらニコニコと顔を綻ばせていると、パーシヴァルが深々と溜息を吐き出した。
「・・・・・・・・・ったく、お前は・・・・・・・・・・・・・」
 地面に向ってそう呟きを零したパーシヴァルは、ゆっくりと顔を上げ、バーツに向って困ったような、だけどどこか照れくさそうな笑みを浮かべて見せた。
「分かったよ。作ってやるから、美味そうな野菜はお前が選べよ?」
「おうっ!サンキュー、パーシヴァルっ!」
 嬉しさに舞い上がる気持ちというのは今みたいな気持ちなのかも知れないと思う程、バーツの心は喜びに満ちあふれた。
 それは満面の笑みとなって外に出ていたのだろう。
 パーシヴァルがクスリと、小さく笑いを零してきた。
「本当。俺はお前に甘いよな。」
「愛し合ってんだもん。当たり前だろ?」
「バーーカ。」
 クスクス笑いながら軽く拳骨で小突いてくるパーシヴァルの攻撃を受けながら、バーツはなんとも言えない幸せな思いに浸かっていた。
「パーシヴァル。」
「うん?」
 微笑を浮かべながら軽く首を傾げてこちらを見やるパーシヴァルに向って、胸の奥に押し込めた言葉が飛び出そうになる。
 しかし、そんな事を口にしたらパーシヴァルを困らせるだけだから、出かかった言葉をグッと飲み込んだ。
 変わりに、違う事を口にする。
「さっさと終わらせちまおうぜ。んで、ちょっとゆっくりお茶でも飲もう。」
「ああ、そうだな。」
 軽く頷くパーシヴァルに笑いかけて、バーツは仕事に戻る。
 それに習って仕事を再開したパーシヴァルの背をチラリと流し見ながら、バーツはボソリと、呟いた。
「騎士なんて辞めて、戻って来いよ・・・・・・・・・・」
 今はまだ直接言えない言葉だけど。
 いつかちゃんと口にしたいと、そう思いながら。

























仲良しさん達の日常。






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オムライス