数字が減っていく。

自分に残された、最後の時間が。

勝つつもりで挑んだ。
穴など全く無い相手に対して、こちらは穴だらけで付け入られる隙は沢山あったけど。
それでも勝つつもりでコートに立った。

でも世の中、そう甘くはない。

王者は強かった。
これ以上無いくらいに。
駒が揃っていない自分達の今の状況で、勝てるわけがない。

それでも、数字は一桁に抑えている、

宮城が、

流川が、

桜木が。

必死にボールに食らいついている。
自分も、今までに無い位試合に集中している。
シュートは外す気がしない。
だけど、マークが厳しくてなかなかシュートに持って行けない。

一つ一つ、数字が減っていく。

ベンチで晴子が祈るように手を組んでいる。
彩子は、ストップウォッチを片手にボールの行方を睨み付けていた。
ベンチに残った者は、喉が破れんばかりの声を張り上げている。
客席に居る赤木も、木暮も。
桜木軍団も、堀田達も。

だから、最後まで食らいつく。
もう絶対に逆転する事が出来ないと分かっているけれど。
それでも、一点でも多く差を詰めようと。

コレで、最後なのだ。

自分の高校バスケは、コレで。

一年にも満たない短い時が、後僅かで終わってしまう。

ボールを持った流川が、敵を振り切ったのを見て外に出る。
残り僅かで油断していた敵の隙を付いて。
手の中にボールが吸い寄せられるように飛んできた。
それを、流れるような動作で宙に放つ。

その瞬間に数字が0になり、ブザーが辺りに鳴り響く。

そして、客席から歓声と嘆きの声が沸き上がった。

それらの音に、三井が一番好きな音はかき消されてしまった。
多分、この場に居た誰の耳にも届いていないだろう。
だけど、三井の耳にはしっかりと届いた。
最後のシュートが決まった音は、今まで聞いた中で一番軽やかで、綺麗だった。

思わず、口元が緩む。

負けたけれど。
悔しいけれど。
三年間ビッチリやっていればと、後悔はするけれど。
それでも、今持っている力の全てを出し切った事に、満足して。

泣き崩れる桜木の肩を軽く叩く。
彼等にはまだ先がある。
悔しい思いをしたらした分だけ、強くなれる。
勝つ事にどん欲になれる。

来年が楽しみだ。

素直にそう思えた。
肩を落とし、項垂れる後輩達の頭を、肩を叩いて歩く。
いつもと変わらない笑みを浮かべて。


「おら、整列するぞ。」


そこからまた、新たな時が動き始める。
それぞれの、明日に向かって。
























あのチームで海南には勝てないでしょう。







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