「ままよっ!」
ビクトールは、勢い良く瓶の中身を煽った。
どこか滑り気のある液体が口内に入り、食道を伝って胃の腑に落ちていく。
途端に、カッと、全身が熱くなった。
「――――ぁ――――」
小さく息が漏れる。
何もしていないのに体温が上がり、股間のモノが熱を持って硬くなってきた。
自然と、手が股間に伸びていく。
その熱を発散させようと。
だが、その手は伸びてきたフリックの手によって払いのけられた。
何をすると、抗議の言葉を熱で潤む瞳に宿して睨み付ければ、酷薄な笑みを返された。そして、耳元で囁かれる。
「さて、では、薬の効果を試してみようか?」
滅多に聞くことが出来ない甘い声が耳元をくすぐった。と、思ったら、ゆっくりを身体を押し倒された。
驚き、大きく目を見張る。その間に、フリックは手際よく、ビクトールの身体から衣服をはぎ取った。
「ちょっ………待てよっ! いったい、なに………!」
素っ裸にされたところでようやく正気に戻り、慌てて抗議の声と抗う行動をしてみせる。だが、その行動は軽々と押さえ込まれてしまった。
いつもと逆の体勢に、背中に嫌な汗がしたたり落ちる。
「ちょっ…………冗談、だろ………?」
力無い声で問いかけると、フリックは婉然と笑いかえしてきた。
「優しくしてやるよ。初めてだろうからな…………」
クククッと喉の奥で笑いながらゆっくりと唇を落としてくるフリックの姿を、ビクトールはただただ呆然と見つめていた。
これ以上抵抗する気が、起きなくて。
薬の効果があったのかなかったのか。その結果についてビクトールの口からホウアンに報告されることはなかった。
ただ一つ、周知の事実を告げるならば、ホウアンから薬を託された後の三日間。ビクトールの姿は城内で発見され無かったらしい。
《完》