「・・・・・・・なんだ、これは?」
遠征から帰ってきたフリックは、出立前まで無かったものを目にして思わずそう零していた。
「ああ、なんか良く分らんが、ひな祭りの飾り物だってよ。」
「ヒナマツリ?」
出迎えにやって来ていたビクトールが答えてきた言葉に、フリックは再度問いかけた。その単語は聞いた事が無かったから。
「ああ。なんでも東の果ての国での祭りらしいんだけどよ。 女の子をあがめ奉るんだとかなんだとか。」
「・・・なんだ、その祭りは?なんの意味があるんだ?」
「さぁなぁ。俺もちゃんと聞いてなかったし。良く分らん。ま、なんにせよ。楽しく騒げりゃなんでも良いんじゃねーの?」
「・・・・・・・まぁ、な。」
どうでも良さそうにそう答えたビクトールに、フリックもおざなりに頷いてみせる。そして、初めて目にするモノへと、再度視線を向け直した。
城のホールにドンと置かれたソレは、階段のようなものに赤い布を引き、その上に人形やら何かの道具らしきものを配置したものだ。
よくよく見てみると、人形の着ているものはなかなか手が込んでいて、それなりに値が張りそうだ。良くもまぁ、今日明日の食事代に事欠くほどではないにしろ、主立った兵の装備品すらまともに揃えられていない今の財政事情の中、このようなモノを仕入れる事が出来たモノだ。
というか、一体いつからコレの用意をしていたのだろうか。突発的に用意出来るモノとも思えないのだが。
腕を組みながらそんなことを考えていたフリックの目の前に、突如小さな袋が差し出された。
「ほらよ。」
「・・・・・・なんだ、これは?」
思わず受け取りながら問いかければ、どこに持っていたのか。もう一つの袋の中身を漁りながらビクトールが答えを返してくる。
「雛あられだと。」
「ヒナアラレ?」
「ああ。ひな祭りの時に食うお菓子だそうだ。チッチとナナミが配って歩いてたから、お前の分も貰っておいた。食ってみようぜ。」
「・・・・・そうだな。」
促され、中を開けてみれば、そこには色とりどりの小さな細長い物体が入っていた。一体コレはなんなのだろうかと首を捻る。あまりにも色が鮮やかすぎて食べ物とは思えないのだが。
とは言え、チッチが配ったモノだし、隣の男は口の中に放りこんでいるし。食べられない物ではないのだろう。 食べられないものだったとしても、自分にはさして影響ないだろうし。
そう考え、フリックは数個のヒナアラレをつまみ取って口の中に入れてみた。
途端に、僅かに眉間に皺祖刻み込む。
「・・・・・・甘いな。」
「ああ。そうだな。」
「・・・・・・・・・でも、味気ないな。」
「ソレを言うなよ。」
素直な感想に、ビクトールは苦笑を浮かべて返した。
「ま。進んで食べたいと思うもんでもないが、この祭りの必需品だって言ってたからよ。食ってやろうぜ。」
「・・・・・・・まぁ、食えないことも無いからな。」
ビクトールの言葉にクスリと笑い返し、袋の中身に指を伸ばした。
色んな祭りがあるんだなと、内心で呟きながら。

















去年の三月三日に日記かなんかに一日限定とかでアップしていた代物を再利用。
文章殆ど直してないのでアレですが・・・・
ビクフリ行事シリーズです。笑!







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ひな祭り