「副隊長って、本当に強いんですか?」
 新たに補充された傭兵が、大勢の兵士達があるまる酒場で一言漏らした。
「ああ。滅茶苦茶つえーぜ?」
 砦が結成された当初からここに籍を置く傭兵達は、フリックの腕前をその目の前で見ているからまるで我が事のように自慢げにそう返した。
 だが、言われた新参の傭兵には納得出来ないものがあったのだろう。不審げに答えた男へと、瞳を向けていた。
「でも、俺等はあの人が剣を握っている姿を見たこと無いんですよ。訓練に顔を出しても二三言葉をかけるだけでいなくなっちまうし。大体、あんな細っこい身体で剣を振るえるんですか?戦場になんか出たことねーって位澄ました顔してるじゃねーっすか。」
「そうそう、虫も殺せなさそうだよな。人なんか切ったら、卒倒すんじゃねーの?」
 一人の言葉に、周りにいた新参兵も同意の言葉を示し、酒場には妙な喧噪が広がった。
 その様を、古参の兵は苦笑を浮かべながら見つめていた。ついこの間までの自分達と同じ事を言っている彼等に向けて。
「まぁ、気持ちは分かるけどよ。俺たちだって、ずっとそう思ってたからな。」
「ああ。だけど、あの人の戦いっぷりを一度見たから。あれだけ強ければ、隊長とだって互角に渡り合えるってもんだぜ。」
「いや、紋章を使える分、副隊長の方が有利じゃねーか?」
「そうだな。そうかも知れねーな。」
 だったらどっちが勝つか賭けでもしようかと騒ぎ出した古参兵の様子を、新参兵は納得のいかない顔で見つめている。
 それをカウンターから見ていたレオナは、周りの人間に気付かれないように小さく笑みを零した。
「また一騒動起きるのかねぇ・・・・・・・・・」
 まったくもって飽きの来ない職場だ。集まった男達は粗野だが気の良い奴らだし。

 一緒に来て良かったね。

 そう、内心で呟く。
「アイツが動き出したら、もっと色々問題が起きるのかねぇ・・・・・・・・・」
 未だにデスクワークから解放されない副隊長の姿を思い出して声に出す。
 動く姿を見せないから、兵達から不満の声が上がっていることに本人も気付いているだろうに、一向に改善する気配を見せない。いくらこじれてもすぐに修正出来ると思っているのだろうか。
「まぁ、確かに。この間も一発だったけどさ。」
 たった一回の戦闘で兵達全員の信頼を勝ち取った事は、記憶に新しい。
 その時レオナは砦の中に居たから、どんな戦い方を見せたのかは分からないが。だが、その腕の確かさを見せつけたのであろう事は、分かった。
「さてさて。一体いつになったらデスクワークから解放されるんだか・・・・・・・・」
 そう思っているのは、レオナだけではなかった。

































「訳」の没部分。
珍しくそこの部分だけ読んでもなんとなく分かる感じだったのでアップしてみた。
でも、コレを私的ビクフリ世界の流れに組み込むとちょっと気分的にマッチしない。
だから没になったとも言うのですが。
しかもビクトールもフリックも出てないし。笑!
まぁ、軽い読み物程度で。


















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酒場にて