ゴトリと、目の前に座る男の手からグラスが抜け落ちたのを確認しながら、フリックはニヤリと口角を引きあげた。
「ビクトール。寝るならベットに行けよ。」
「う〜ん・・・・・・」
 唸り声はフリックの言葉に答えているようで、答えてはいない。
 それでももしかしたらと言うこともあるのでそっと頬に手を添えてみる。
「ビクトール?」
 今度の問い掛けには唸り声すら返ってこない。ソレを確認して、フリックの笑みは益々濃くなった。
「もう寝たのか?ビクトール?」
 甘い声で囁くようにそう耳元で問い掛け、頬に添えていた手でビクトールの顔を持ち上げたフリックは、安らかな寝息をたてる口へと、己の唇を近付けた。
 ゆっくりと重なった唇は触れ合うだけで直ぐ離れる。そしてフリックは、眠るビクトールの顔を見つめた。それまで浮かべていた笑みを消して。いや、笑みどころか一切の表情を消し去って。
 どれくらいそうしていただろうか。不意にフリックの口の端が、笑みの形に引き上げられた。そして、馬鹿にするような口調で眠り込むビクトールへと語りかける。
「本当に愚か者だな、お前は。俺には薬の類は効かないと教えてやっただろう?」
 言いながら、フリックはテーブルに俯せていたビクトールの体を背もたれにもたせ掛け、彼のズボンのポケットをまさぐった。
 そこから小振りのガラス瓶を取り出したフリックは、その瓶をランプの光に翳して見る。
 その光に、瓶の中のピンク色の液体がキラキラと輝いた。
 それをニヤニヤと意地の悪い笑みで見ていたフリックは、その瓶を静かな呼吸を繰り返すビクトールの唇に近づけ、実に楽しそうに囁きかけた。
「これを俺に飲ませて、何をしようとしてたんだ?」
 くくくっと喉で笑い、続ける。
「薬なんかで俺を支配して、何が楽しいんだ?」
 肉食獣を思わせる瞳でビクトールの事を見つめたフリックは、彼の口元に優しい啄むような口付けを降らせた。そして、聖母のように慈愛に満ちた笑みを浮かべてビクトールへと、語りかける。
「こういうくだらないマネをする奴には、罰を与えないとな。」
 優しい声音にそぐわない言葉を発したフリックは、手にしていた小瓶の蓋を開け、躊躇いもせずにその中味を煽った。そしてニヤリと、眠るビクトールに笑いかける。
「コレで満足か?お前が用意したクスリを、俺が飲んで。」
 言い終えてから小瓶を床に投げ捨て、ビクトールの頬に手を伸ばす。
「・・・・・・・・まぁ、人に盛ろうとしていたクスリを逆に飲まされたお前には、どうすることも出来ないだろうがな?」
 クスクスと笑いながら深い呼吸を繰り返す唇に己の唇を触れあわせたフリックは、一旦唇を放し、ビクトールの耳元に甘い声で囁きかけた。
「さてと。では、心境地開拓と行こうか?」
 言うが早いか、フリックは眠りこけるビクトールの大きな体を担ぎ上げ、ベットの上に放り投げた。そして、その横たわった体の上に馬乗りになり、ビクトールのシャツを力任せに引き千切る。
「・・・・・・・・・・青雷の・・・・・・・・・・」
 その行動を咎める様にかけられた声に、フリックは冷たい一瞥を投げ付けた
「黙れ。邪魔すればてめーも犯すぞ。」
 その一言で、突如浮かび上がった気配が再び消えてなくなった。その事に満足し、フリックは再度ビクトールへと視線を向けた
「お前よりも、俺の方が一枚も二枚も上手なんだよ。出し抜こうとしたのが、大きな間違いだ。」
 今後、このようなくだらない事を考えないよう、今日は徹底的にいたぶってやろう。そう、胸の内で呟いた。
「馬鹿なやつだ。こんなくだらない事考えなきゃ、俺はホンキでお前を犯そうなんて思わなかったのによ。」
 楽しげな声でそう語りかける。少しも目覚める気配を見せない男に向って。
 今の状況には満足している。彼に抱かれる事は嫌ではないから。むしろ、手慣れた愛撫は心地良く、彼と共に歩き続けるのも悪く無いと、そう思っているのだ。だから、彼の望むようにさせておいた。この男をどうこうしたいと思ったことは、無かったから。
 その思いを変えさせたのは、男自身。
 自分を本気で怒らせるような行動をした、この男自身。
 自分の怒りのスイッチがどこにあるのかなんて知らないのだから、仕方ないことなのかもしれないが。
「ほんと、馬鹿だよな」
 でも、そんな馬鹿な所も悪くは無い。
 そう内心で呟きながら、ビクトールの首筋に唇を落として行った。
 今夜は、長い夜になりそうだと、胸の内で呟きながら。

























































フリビク。
ビクフリサイトなのにフリビク。
突発的に始まっているので前後が分かりにくいですが。
っていうか、突発的にそのシーンだけ脳裏に閃いてしまったのでこんな文になったのですが、でもちゃんとこの前後はあります。
書くとマジフリビクになるので書けませんが。汗。
フリックさんは自分で言っている様にクスリがまったく効かない体質です。
ですが、クスリを使われることにエライ嫌悪感を持っております。
自分の意思を無視された行為は例え何であろうと嫌いだから。
だから、この話のフリックさんはマジキレしております。
ビクトールがクスリなんか使うから。
自覚していなくても、ビクトールの事は信用していたから、その信用を裏切られた気がして。
でも、怒りのあまりに切り捨てることも出来なくて、ああ言う行動に移った。と言う話。
説明しないと分からない超不親切話。
私としては、いったいフリックさんがどうやって星辰剣を犯すのかが気になる所であります。笑。
コレ読んで不快に思った人が居たらご免なさい。
でも、こういうフリックを私の中で否定する事は出来ませんので、あしからず。

モノがモノだったので珍しく後書きさせて貰いました。長々と。
反転してるけどね!笑。



















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為されなかった謀略