景品
「たまには手合わせしないか?」
そう言われ、断る理由も無かったのでパーシヴァルは先を促すボルスの後をついて行った。
ブラス城のように立派な闘技場がない城なので、どこでやるのかと不思議に思っていたら、ボルスは武術訓練所の前で足を止めた。
「ここだったら、広さもあるし、人の出入りもさほど無い。立ち会いには丁度良いと思うのだが、どうだ?」
「・・・・まぁ、良いんじゃないか?」
見回した限り、近くに居るのは指南所の前で寝こけているジョアンと、畑仕事をしているバーツのみ。
野菜の前で騒ぐなと怒られそうだが、まぁいいだろう。
「普通に手合わせするだけで良いのか?」
「ああ。勿論、真剣を使うがな。」
「分かってる。」
軽く頷き、さて始めようかとしたところで、思わぬ邪魔が入った。
「おやおや。面白い事やろうとしてるじゃないの?」
「・・・・ナッシュ殿。」
視線を上げるまでもなく、その声音で誰だか分かってしまった。
なんとなく嫌な予感を感じながらも、パーシヴァルは声の方へと視線を向ける。
「べつに何も変わった事をしてませんよ。ただの手合わせです。」
「それが面白そうって言ってるんだよ。どうせやるなら、二人だけじゃなくて他にも混ぜてやろうぜ。」
「・・・・・何が言いたいんだ?」
邪魔をされて不愉快そうに顔を歪めながらボルスがそう尋ねると、ナッシュはニヤニヤと笑いながら提案してきた。
「暇そうな奴集めてトーナメント組んで、優勝したやつに景品出す。・・・なんてどうだ?普段一緒に戦わない奴の力の程も分かって、良いと思うぜ?」
返答を求めるように軽く首を傾げてくるナッシュに、パーシヴァルはそっとため息を付く。
また余計な事を言い出した。
どれだけ規模を大きくするつもりか分からないが、人数が増えればそれだけ面倒臭くなると言うもの。誰にそれを取りしきれと言うのだろうか。しかも、そんな言い方をされてボルスが断るはずがない。
案の定、ボルスは大きく頷き返している。
「それは、良い考えだ。早速、城内に居る者に声をかけてこよう。」
「俺も手伝うよ。パーシヴァルは、どうやって事を進めるか考えて置いてくれ。」
「・・・・・・・分かりましたよ。」
やはりそういう役回りかと、疲れたようにため息を付きながらなにやら楽しそうな二人を見送るパーシヴァルだった。
思ったよりも参加者が集まり、ギャラリーも増えてしまった。
バーツが怒鳴り込んできたことで会場も移すことになり、どうせやるなら派手に行こうと、城の正面玄関前で開催する事になった。
「暇人が多いんですね。この城は。」
「そう言うなって。何事も明るく楽しく行かないとさ!」
嬉々として答えるナッシュの姿は、とても37歳の大人の男とも思えぬ無邪気さがある。
どうして自分の周りにはこう、落ち着きのないモノばかり集まるのかと頭を痛めつつ、パーシヴァルは登録者の名前を確認していく。
「あれ?お前は出ないの?」
横から書類を盗み見たナッシュは、そこにパーシヴァルの名前が無いのをめざとく見つけ、驚いたように尋ねてきた。
そもそも事の発端は自分がボルスに手合わせを誘われた事にあるのだから、ナッシュが不思議に思うのもおかしくない。
「ええ。ここまで大きな事になってしまいましたからね。誰か取り仕切ることに専念しないといけないでしょう?」
「とかなんとか言って。さっさと負けるのが嫌なんじゃないの?」
「・・・・聞き捨てならないですね・・・・・。」
ニヤニヤ笑いかけてくるナッシュに、パーシヴァルは冷たい視線を投げつけた。
しかし彼は少しも気にすることなく、パーシヴァルの怒りを煽るように言葉を繋げる。
「パーシヴァルは体力ないからなぁ。トーナメント方式になったら、絶対優勝なんて出来ないだろうし。変な相手に負けるよりは、最初から理由付くって参加しない方が、見た目てきにも格好いいよなぁ?」
「・・・・・・・。」
何を考えているのか分からないが、どうやら自分に試合に出ろと言いたいらしい。そんな気はサラサラなかったが、そこまで馬鹿にされて引き下がれはしない。
パーシヴァルは、冷たく冷えた瞳のまま、ナッシュに向かってニッコリと微笑みかけた。
「そこまで言われて引き下がるわけにもいかないですからね。参加させて頂きます。対戦することになったときには、骨が残らないくらいに切り刻んで差し上げますから、覚悟していて下さいね。」
「・・・・出来るもんならな。楽しみにしてるよ。」
ニヤニヤ笑いながら歩き去る男の姿に、小さな怒りが沸いてくる。
確かに騎士として身体は細い部類に入るが、騎士団の中では上位の腕前なのだ。自分が馬鹿にされると言うことは、騎士団を馬鹿にされると言うことに等しい。
奴の鼻をあかすためにも、見窄らしい戦いは出来ないだろう。
とは言え、自分が試合に出るとしたら、審判などの雑事を誰に頼めば良いのだろうか。
「随分盛況なんだな。」
「クリス様。」
考え込んでいたパーシヴァルは、聞き慣れた声に俯けていた視線をそちらに向けた。
上げた視線の先には、クリスと共に、彼女を呼んできたのであろうボルスと、一緒に仕事をしていたらしいサロメ。そしてルイスの姿があった。
「試合に参加されに来たのですか?」
「いや。そうしたいのはやまやまなんだが、下手に負けると騎士団の士気に関わるからと、サロメに止められたんでな。今回は見学だ。」
残念そうに顔を曇らせるクリスの言葉に、パーシヴァルはニッコリと微笑みかけた。
「では、一つ頼まれて頂けませんか?」
その言葉に、クリスの背後でサロメが嫌そうに顔を歪めていた。
クリスの審判。サロメとルイスの進行の元、試合は順調に進んでいった。
ギャラリーも始めた時より増えている。いつの間にか賭も行われているようで、試合が終わるたびに、不純なモノを感じる歓声と悲鳴が溢れていた。
パーシヴァルは三回戦で、エースに無理矢理引っ張って来られたらしいゲドに負け、今は進行表を手にしたサロメの横で試合の行方を見守っている。
「なかなか、白熱した良い試合が多いですね。」
「ええ。話しを聞いた時は下らないことをと思いましたが。こういう事もたまには良いでしょう。」
最初は渋い顔をしていたサロメも、満更でもなくなったようだ。そのことにホッと胸を撫で下ろす。事の発端が自分たちなだけに、ただのお祭り騒ぎで終わってしまったらあとでどんな小言を言われ、どんな面倒な仕事を押しつけられるか分かったものではないと思っていたのだ。
その可能性も低そうで、パーシヴァルは先ほどよりも安心して広場へと視線を向けた。
そろそろ準決勝が始まる。
残ったメンバーはエースにナッシュ。ボルスとレオ。
エースが残ったのは意外だったが、対戦相手を見て納得するものがあった。あまり強くなかったのだ。そのブロックに集まったのが。そのうえ、さっき当たったゲドは、飽きたからといって試合をしないで帰ってしまったので、エースは不戦勝。運が良いと言ったら無い。
「そう言えば、この試合に勝ったら景品が出ると聞いていたのですが、何が出るんですか?」
「・・・・そういえば、そこの所は決めて居ませんでしたね。」
あれよあれよと言う間に話しが進んでしまったので失念していた。
パーシヴァルは、サロメに一言言い置いてから広場中央に集まっていた準決勝に出る四人組の元へと歩を進めた。
「休憩中の所申し訳ない。勝ったときの景品を何にするか決めていなかったのですが、どうしますか?」
「・・・そう言えばそうだな。」
言われてから気が付いたと言うように、ボルスはぼそりと呟いた。
「べつに何もいらんぞ。この試合だけでも、十分な価値がある。」
「えっ!俺は、酒飲み放題だって聞いてたぞ!」
レオとエースの言葉に、パーシヴァルは苦笑を漏らした。
なんだかとても彼ららしいコメントだ。
ナッシュに視線を向けると、彼はいつものようにニヤニヤと笑っている。いつもと同じなのだが、その笑みに何か不穏な空気を感じる。
眉を潜めてその顔を眺めると、彼は嬉しそうに語り出した。
「俺は最初から決めてたぜ?」
「・・・・・と、言いますと?」
「指名した人から、熱烈キッスをして貰う。しかも、この場で!」
言われた言葉に、その場にいた他の四人は一瞬言葉を失った。
「貴様っ!何を考えているんだっ!」
我に返ったボルスがそう叫ぶのを、両手で耳を塞ぎながら聞いていたナッシュは、ニヤニヤ笑いながらボルスの顔を覗き込む。
「クリスを指名したら、クリスとキス出来るんだよ?滅多に無いチャンスじゃない。」
「お・・・・俺は、クリス様にそんなこと要求したりしないっ!」
顔を真っ赤にして反論するボルスに、ナッシュは笑んだ顔をさらに意地の悪いものにする。
「へぇ・・・・。じゃあ、坊やは誰に要求するわけ?」
「そ・・・・それはっ・・・・」
さらに顔を赤くし、しどろもどろになって言葉を探すボルスの視線がチラリと自分に流れてくるのに小さく息を吐きながら、パーシヴァルはレオをエースに視線を向けた。
「ナッシュ殿はそう仰ってますが、お二人の意見は?」
「俺は構わないぜ?どっちにしろ、勝てる見込みはないからなぁ。」
「・・・・依存はない。」
僅かに顔を赤らめ、視線を反らしながらそう答えるレオの様子に苦笑が浮かぶ。
同じ37歳でも大違いだ。
「そこ!何か良からぬ事を考えたんじゃないのか?」
すかさずナッシュに突っ込みを入れられ、パーシヴァルは笑みを返した。
「何も考えてませんよ。では、景品のことはそう言うことにしておきましょう。」
「ちょっ・・・・パーシヴァルっ!」
叫ぶボルスを無視して、パーシヴァルはさっさと元の位置に引き返していった。
サロメとクリスに視線を向けると、二人は複雑そうな顔をしていた。
一番に狙われるのがクリスだと、そう判断したのだろう。
「大丈夫ですよ。勝つのがボルス卿かレオ卿なら適当にあしらえますから。」
「しかし、もし仮にナッシュ殿が勝ちでもしたら・・・・。」
「その時は、その時で考えましょう。」
「・・・・パーシヴァル・・・・。」
あっさりと返すパーシヴァルに、クリスは嫌そうな顔を向けた。
「さて。そろそろ始めましょうか。」
パーシヴァルの合図に、クリスは先ほどよりも僅かに重い足取りで広場へと踏み出していった。
準決勝の対戦は、ボルス対レオ。ナッシュ対エースとなっている。
普段の訓練で打ち合い、戦いのクセを知っているだけに、ボルスとレオの試合は思ったより長引いたが、お互い体力の限界が来そうなところで最後はボルスが一撃決め、なんとか勝利を収める形になった。
ナッシュとエースの戦いは、酒が出ないと言うことで気が抜けたのか、結構簡単に終わった。何か賄賂を渡されていたのでは無いかという疑いもあったが、誰も突っ込みはしなかった。エースに賭ているものが殆どいなかったせいだろう。ボルスとレオの一戦に比べると、準決勝のわりには盛り上がりに欠ける試合だった。
そんなわけで、決勝のカードはボルス対ナッシュに決定した。
疲れているとは言え、普段手裏剣を使っているナッシュが剣を持って戦っているのだから、優勝候補の一人であるボルスが勝つだろうと言うのが、大方の予想。配当もそう高くはないようだ。
「でも、そう簡単にはいかないぜ?坊や。」
広場でボルスに向かい合ったナッシュは、様になるウィンクを投げつけた後、キョロキョロと辺りを見回した。
「良し、あれが丁度良いな。」
そう呟いたと思ったら、ナッシュは観客席に近づき、なにやら話し込んでる。
交渉が終わり中央に戻ってきたときには、その手の中に細身の剣が二本、握られていた。
「・・・それは?」
「エモノを変えたらいけないって決まりはなかっただろ?」
「それはないが・・・・・。」
「じゃあ、俺はこれで戦わせて貰おうかな。いいだろ?」
挑戦的な笑みを向けられたボルスは、不愉快そうに顔を歪め、大きく頷いて見せる。
そんな二人のやりとりを見ながら、パーシヴァルは小さく首を傾げた。
「・・・・どう言うつもりでしょうかね。」
隣に聞こえる程度の声でそう呟くと、同じような事が気になっていたらしいサロメが、真っ直ぐ前を見ながら答えてきた。
「たぶん、あの形が彼の本来のスタイルなのではないでしょうか。最後に持って来たのです。相当自信があると見て、間違いないでしょう。」
「・・・そうですね。ボルスで、太刀打ち出来るでしょうか。」
「さぁ・・・。ボルスの疲労も溜まっていますし、ナッシュ殿とは経験値が違いますからね。」
分からないと良いながら、負けると思っているような発言のサロメに、チラリと視線を向けてみた。その瞳は真剣に広場中央に向けられている。戦いを見つめる視線は、上司としてでも軍師としてでもない、ただの一人の騎士としての視線だ。
剣を振るうよりも頭を使うことが増えているとは言え、サロメも騎士なのだと言うことがその瞳から読みとれ、パーシヴァルは口元にうっすらと笑みを浮かべた。そして、視線を戦う二人に向ける。
戦いは一見ボルスの方が優勢に見えるが、ナッシュは余裕でボルスの攻撃をかわしているので、余力的にはナッシュの方が多いと思える。疲れのためにボルスの繰り出す攻撃は動作が大きくなり、その分小さな隙も増えている。そこをあえて攻め込まず、大きな隙を狙っているようなナッシュの動きに、性格の悪さが伺える。
真っ向から勝負するタイプのボルスとは、一番相性の悪い対戦相手だろう。
「・・・・・これは、負けるかな?」
その言葉に誘われるように、ナッシュの一振りがボルスの剣を弾き、次の瞬間、ナッシュの剣がボルスの首筋に当てられていた。
「そこまでっ!勝者ナッシュ!」
高らかにクリスがそう告げると、ギャラリーから大きなどよめきが沸き上がった。
一部歓喜の悲鳴を上げている者もいたが、ごく僅かでしかない。余程大穴だったのだろう。こんな事なら自分も彼に賭て置けば良かったか。
そんなことを脳裏で考えている間に、広場の中央では戦った二人が握手を交わしていた。
「良い戦いでしたね。」
「・・・・そうですね。」
サロメに声をかけると、彼は力無く返事を返してきた。
この後のことを考えて憂鬱になっているのだろう。クリスに視線を向けると、彼女もまた顔を引きつらせている。
さて、どうしたものか。
たかがキス一つ。なんて事ないと思うが、クリスがそうあっさり考えられる訳がない。
とは言え、ここまで関わっておいて要求に答えない様では、騎士団のメンツにも関わってしまう。
ナッシュも余計な事を言ってくれると内心でため息を付いたパーシヴァルは、その諸悪の根元が自分を呼んでいることに気が付いた。
「なんですか?」
近寄りながら問いかけると、彼は楽しそうに微笑んでいる。
「ああ。景品は、ちゃんとこの場で貰えるんだろうな?」
「そう言う決まりにしたのは、あなたですからね。」
「そうか。」
にやっと笑いかけてくるナッシュに、嫌な予感がよぎる。
最近この手の予感を外したことがない。
ボルスはその笑みをクリス狙ったものだと思ったらしい。彼女の姿をナッシュの視界から隠すように、二人の間に身体を割って入れた。
「じゃあ、お願いしようかな。」
「ちょっと待てっ!クリス様にそんなことは・・・・・・」
「パーシヴァル。」
「・・・・・・・え?」
周りから、音が一切消えた気がした。その中で、ボルスの零した一言が妙に響く。
なんとなく予想はしていたが、やはりそう来たか。
ここでクリスの名を出せば、騎士団からの視線が厳しいものになる。それくらいこの男にも分かっているだろう。その点自分は男だから、たいしたバッシングは上がってこない。せいぜいボルスが騒ぐくらいだろう。最初からこれを狙ってこの騒ぎを提案したのだろうか。
最初から彼の目論見を読んでおけば良かったと思ったが、後の祭りだ。約束してしまったのだからしょうがない。人前でというのが気に入らないが、所詮ゲームの一部だ。駄々をこねて懐の狭い男だと思われてもしゃくに障る。
「・・・・わかりました・・・・・。」
「ちょ、ちょっと待てっ!」
我に返ったらしいボルスが、騒ぎ出した。彼が騒ぐのは予想していたが、実際に騒がれると鬱陶しいと思ってしまうのはどうしてだろうか。
「貴様っ、男同士で、いったい何を・・・っ!」
「何?じゃあ、俺がクリスにキスしてくれって言った方が良かったのか?」
「そ、そう言うわけでは・・・・・。」
「大体、坊やに男同士どうこうって言うのを、言われたくないなぁ・・・・。」
ニヤニヤと笑うナッシュの言葉に、一瞬キョトンとしたボルスだったが、すぐに何を言われたのか分かったらしい。見て分かるくらいに顔を真っ赤に染め上げ、口をあわあわさせている。
そういう対応をしているから周りにからかわれるのだと思ったが、わざわざ忠告してやるのもどうだろうか。そもそも、忠告したところで改善するとは思えない。
ならばこのまま生き抜いて貰おう。
そう思ったパーシヴァルは、ボルスの事を無視して楽しそうに微笑むナッシュへと向き直った。
「・・・ほら、やるならさっさとやってしまいましょう。さすがに、これだけ人の目があると恥ずかしいですからね。」
「俺は、見られてる方が燃えるけど?」
「・・・・だからあなたは・・・・。」
言おうと思った言葉は、ため息と共に吐き出した。
何を言っても変わりはしないのだから、言うだけ無駄と言うもの。この場をさっさと去るためにもやることをさっさとやってしまおうと、パーシヴァルはナッシュの頬に手を伸ばした。
「パ、パーシヴァルっ!」
ボルスの叫びが聞こえたが、あえて無視した。
キス一つでガタガタ騒ぐ年でもあるまい。
唇が触れ合ったところで、女性のギャラリーから黄色い歓声が上がった。
何故女性はこういう事が好きなのだろうか。
疑問に思いながらさっさと離れようとしたパーシヴァルだったがその首筋を素早く捕らえられ、身動きが取れなくなった。
「熱烈なヤツをって、言っただろう?」
ニヤリと笑んだナッシュは、今度は自ら口づけを仕掛けてきた。
人前でしているとは思えない執拗な口づけに、パーシヴァルは眉間に皺を寄せる。
なんの意図があってこんな事を仕掛けたのか。さっぱり分からない。分からないが、良いように扱われるのもしゃくで、パーシヴァルも積極的に舌を蠢かせた。
ベットの中でするように舌を絡め合い、唾液を飲み込む。
先に離れた方が負けだと言わんばかりに口づけは深まり、徐々に下半身が力を持ち始めたのを感じた。
「いい加減にしろっ!」
これ以上はやばいかと思い始めた頃、地に響くような低い怒鳴り声と共に、密着していた身体を引き離された。
「レオ殿・・・・・。」
「遊びにしては過ぎるぞ。パーシヴァル。」
なにやらとても怒っているらしいレオの態度に、パーシヴァルは首を傾げた。
ボルスなら分かるが、何故レオがここまで怒るのだろうか。
「ナッシュ殿も。子供の教育に悪い提案は、今後なさらないで頂きたい。」
「はいはい。」
ヒラヒラと手を振って見せたナッシュは、借りていた剣を持ち主に返すと、一度パーシヴァルへと視線を向けた。
「じゃあ、続きは二人っきりの時には。」
言葉の後にウィンクを投げて寄越す彼の態度に、再び黄色い歓声が沸き起こる。
その声援に軽くこたえたナッシュは、逃げるようにその場から去っていった。
何を考えているのだとため息を零したパーシヴァルは、頭上から振ってくる不穏な空気に首を傾げた。
「なんで、そんなに怒っているのですか?」
「・・・お前が、馬鹿な事をしでかすからだ。」
「馬鹿なこと?」
「そうだぞっ!あんな軟派男の言葉なんかに従って!」
ボルスも参戦して怒鳴りつけてくる。サロメに視線をやればなにやら渋い顔をし、ルイスとクリスは顔を真っ赤にしている。
「しかし、そう言う約束でしたから。」
「やりすぎだっ!馬鹿ものっ!」
言葉と共に思いっきり殴られた。
かなり痛いが、雰囲気的に文句を言えない様子なのでグッと堪える。
そんなパーシヴァルに、ボルスは怒鳴りつけて来た。
「そうだぞっ!人前であんな顔してっ!」
「あんな顔?」
どんな顔だと聞いても、ボルスは答えてくれない。
問いかけるようにレオに視線を向ければ、彼もスイッと視線を反らせてしまった。
なんだかわけが分からない。
「・・・・今後は、気を付けますよ。」
とりあえず、この場をやり過ごすために謝ってみた。
「うむ。ナッシュ殿には近づくなよ。」
「そうだぞ。あいつは、危険な香りがするからな。口も聞くな。」
なんだか随分嫌われたものだなぁと思いながら、パーシヴァルは二人の言葉に素直に頷いてみせるのだった。
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