白い砂浜に青い海。
気合いの入った水着を披露する女の群れ。
「・・・・・・・・・・最高だ。これ以上の天国はねぇ・・・・・・・・・・」
砂浜の上に立ち、サンジは感動のあまり身体を震わせていた。
右を向いても左を向いても前を見ても後ろを見ても。見渡す限りに露出度の高い女性達が居る。あまりにも沢山居すぎて誰から声をかけて良いのか迷う程だ。
とは言え、迷ってばかりいたら声などかけられない。
「いよっしゃーーーっ!とにかく、レッツナンパだぜっ!」
気合いを入れて大声で叫んだサンジは、興奮する身体の熱に押されるように勢いよく駆け出した。目の前を通り過ぎた素敵ビキニの美女に向かって。
途端に、腰に凄まじい衝撃を感じて砂浜に頭から突っ込んだ。
「・・・・・・・ったぁっ!なんだ、この野郎っ!」
いったい誰が自分の邪魔をしくさりやがったんだと凶悪な視線を己の背後に向けると、そこには呆れ顔のゾロが立っていた。
「ッてかお前。腰に縄を括られた時点で気づいておけよ。」
「あ?縄?てめぇ、何言って・・・・・・・・・・・・・って、わぁっ!!!」
あきれ顔のゾロのわけの分からない指摘に喧嘩腰に答えたサンジは、言われて初めて己の腰に頑丈そうな縄が巻き付けられている事に気が付いた。
なんとかほどこうとしたのだが、結び目がやたらと固くて出来そうもない。
「いったいなんのつもりだ、クソヤロウっっ!ってか、なんで反対側がてめぇの腰に巻いてあんだよっ!」
キレ気味ながらも周りの状況が見えてきたサンジは、ビシリと目の前のゾロに指先を突きつけた。
そんなサンジの態度に深々と息を吐き出したゾロは、大層不本意そうに答えを返してくる。
「ナミの指示だよ。こんな島にてめーを野放しにしたらどんな御乱交をするか分かったもんじゃねーからってな。ナミ達が十分にバカンスを楽しむためにも、てめーに騒がれて海軍に目を付けられる訳にはいかないから、しばらく取り押さえておけってよ。」
「・・・・・・・・・・・はぁ?・・・・・・・・・・・ナ、ナミさんが、そんな事を・・・・・・・・?」
「ああ。てめーが大好きなナミの命令だからな。大人しく聞いとけ。」
キッパリと言い切るゾロの瞳には一切迷いが無い。嘘は言っていないのだろう。
そう分かったから、サンジはへんにょりと眦をさげた。
「ナミさんが・・・・・・・ひでぇ・・・・・・・・・俺の事、信用してくれてないのか・・・・・・・?」
「出来るかよ。さっきの態度を見て。」
心底馬鹿にしたような口調で言われ、サンジの萎えていた心は一気にヒートアップした。
「うっせーっ!ってか、なんででめーが俺を捕獲すんだよっ!ウソップでもチョッパーでも良いだろうがっ!」
「馬鹿か。あいつ等にてめーを止められっかよ。ルフィもな。自分が遊ぶ事ばっかだ。てめーのお守りなんか出来るわけねーだろうが。」
「お・・・・・・・・・・・お守り・・・・・・・・・・・・」
酷い言われように、サンジは怒るよりも何よりに強烈な疲労を感じ、ガクリと砂浜に膝をついた。
こんなに綺麗な海なのに。
真っ白い砂浜なのに。
女性達が自分が声をかけてくるのを待っているのに。
何故自分は見慣れた筋肉男に縄で繋がれなければならないのだろうか。
海軍の目から逃れたいのならば、自分よりもルフィをくくりつけて置いた方が絶対良いのに。それなのになんであえて自分なのだろうか。別に賞金首でも無いのに。素敵なレディとの甘い一時を過ごしたいだけなのに。
なんだか考えていたら寂しくなってきて、自然と涙がこぼれ落ちる。
そんなサンジの様子になど構いもせず、どこか楽しげな口調でゾロがこうのたまった。
「まぁ、俺にしてみりゃこの展開は万々歳だがな。」
「・・・・・・・・・・・・あ?」
何がだと問いかけるために上向こうとしたサンジだったが、それよりも先にフワリと身体が浮き、ギョッと目を見張る。
「なっ・・・・・・・・・!」
「大人しくしてろ。じゃないと、頭から落とすぜ?」
ゾロの肩の上に担ぎ上げられている自分の体勢に驚いて身体を硬直させたサンジに、ゾロは妙に楽しそうな口調でそう返してきた。
そんなゾロの様子に嫌な予感を感じたサンジは、恐る恐る問いかける。
「大人しくって・・・・・・・・・てめぇ、なんのつもりだ?」
「うん?・・・・・・・・ナミがてめーを監禁する報酬として、結構良い部屋を用意してくれたんだよ。だから・・・・・・・・・・」
「だ・・・・・・・・・・だから?」
「・・・・・・・・久々にヤリまくる。てめーの足腰が立たなくなるまでな。」
「なっ・・・・・・・・・・・・・!!」
ニヤリと不敵に笑いかけられ、サンジはカッと顔を紅潮させた。
この男は有言実行タイプだ。
言ったからには絶対にヤル。
殺されると思うくらいにヤラれるに違いない。
サンジは身の危険を感じて暴れ出した。
「てめっ!ふざけんなっ!降ろせっ!」
「イヤダね。」
「それは俺の台詞だっ、バカヤロウっ!降ろせったら降ろせっ!この、ケダモノ剣士がっ!!」
喚いて暴れるサンジの細腰をガッチリと掴み取ったまま、ゾロは楽しそうに笑い声を上げている。
そのご機嫌っぷりに恐ろしさを感じ、背中に冷たい汗を流しながらサンジは尚も抵抗を続けたが、功を奏す事は無かった。
取りあえず、真っ直ぐホテルには行けないでしょう。
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