後方部隊を率いる事を命じられたパーシヴァルは、静かな瞳で戦場を見つめていた。その視線の先で、前衛部隊を率いているボルスが敵陣営に切り込んでいる。突っ込みすぎではないかと思うくらいに、懐深くまで。
 だが、ボルスが率いている兵達におびえの色はない。確かな自信を持って敵陣営に攻め入っている。多分、ボルスの気迫が皆に力を与えているのだろう。無茶だと思う事でもやり遂げられるという、自信を沸かせて居るのだろう。
「・・・・・・・・凄いな。」
 小さく呟き、口元をほころばせた。
 あんな戦い方は、自分には出来ない。信頼出来る部下も居るし、どんな厳しい状況でも切り抜けられるという自信もあるし、その気もある。だが、あんな戦い方は出来ない。周りを、自分のペースに巻き込むような戦い方は。
 ソレが良い戦い方だとは思わない。波に乗っている時は良くても、波から落ちた時には立て直すのに時間がかかるから。
 だが、ボルスの戦い方に目を引き寄せられる。
「コレが、カリスマというモノなのか・・・・・・・・」
 クリスほどではないけれど。ボルスにも確かにそれがあると思う。
 馬鹿でアホで間抜けで。モノを知らない男ではあるが、自分には無いモノを沢山持っている。そんな彼が眩しくて、羨ましくて、憎たらしい。
 真っ直ぐに前だけを見ている彼が愛おしいのに、腹立たしい。
 そんな自分だから、彼に引かれるのかも知れない。暗さなど微塵も感じさせない男の側に居たいと、思うのかも知れない。
 真っ直ぐな彼の側にいて、真っ直ぐな言葉を、心を向けられ続けたら、自分の歪んだモノも真っ直ぐになっていくのではないかと、勘違いして。
 フッと口端を引き上げた。馬鹿な事を考えている自分をあざ笑って。
 ゆっくりと腰に差した剣の柄に手を伸ばす。そのパーシヴァルの動きに、周りにいた部下達に緊張感が走った。出陣の兆しを感じ取って。
 金属が擦れる硬い音が辺りに鳴り響かせながら、抜き払った剣を頭上に向けて真っ直ぐに突き上げる。
 日の光を浴びて、抜き払われたパーシヴァルの剣が、キラリと光った。
「出撃!」
 弧を描くように振り下ろされた剣の動きに、背後に控えていた兵達が雄叫びを上げた。そして、馬を走らせる。
 何十何百という馬が大きな固まりになって地を蹴った。
 その先頭に立ちながら、パーシヴァルは一人、ほくそ笑む。
 こんな風に、同じ戦場で戦っていられたらいいのになと、思って。
 いつまでも、彼と共に。
























                      ブラウザのバックでお戻り下さい。





共に