放課後、補講のために一人遅れて部室に入った赤木は、自分が締めたドアが再び開かれた事に驚き、ドアの方へと視線を向けた。そしてソコにいた人物の姿を見て、軽く目を見張る。
「・・・・・なんだ、三井。お前も補講か?」
聞いてはみたがそんなはずも無いかと内心で否定しながら着ていた学ランを脱ぎ去るのと同じタイミングで、カチリと、内鍵が締められた音が静かな室内に響き渡る。
「・・・・・三井?」
なんの必要があってそんな事をと瞳で問えば、三井は引き結んでいた唇を笑みの形に作り替えた。
「・・・・・お前には感謝してるぜ。勝手に飛び出して、身勝手な考えでお前らを傷付けた俺を、受け入れてくれた事に関してさ。」
「・・・・・・・・三井。」
突然そんな事を言い出した三井に、赤木は再度目を見張った。今ではもう、三年間ずっとこの場に居たかの様に部員達に溶け込んでいる三井が、まだあの衝撃事件の事を気にしているとは思わなくて。
言動のわりには繊細な心の持ち主だ。だからこそ、一度の挫折で暗い道に身を落としてしまったのだろうが。
「・・・・・気にするな。お前の事を攻める奴はバスケ部にはいないんだからな。お前は既にバスケ部には無くてはならない人材だ。皆、お前の腕を認めている。お前自身のことも名。だからお前は、全国を目指す事だけ考えていろ。」
これ以上三井にあの事を気に病んで欲しくなくて、微かに笑みを浮かばせた。本当に何も気にしていないのだと、言葉以上にその表情で告げるように。
そんな気遣いをする自分のことが少々恥ずかしく、真正面から三井のことが見られなかったから、チラリと視線を流す事しか出来なかったのだが。そして、照れを隠すように顔をそらし、ワイシャツを脱ぐ。そうする事で露わになった鍛えられた肉体に、いつの間にか近づいていた三井の右手が添えられた。
「・・・・・・・・三井?」
何事かと、10センチ程度低い位置にある男の顔を伺い見ると、彼は赤木の肩に手を乗せた状態で視線を俯けていた。
「おい、どうした?具合でも・・・・・・・・・」
悪いのか、と続けようとした言葉は、三井の笑みの色が濃い声に遮られた。
「お前らが気にして無くても、俺が気にしてるんだよ。」
言いながら顔を持ち上げて来た三井の表情を見て、赤木はその場に凍り付いた。その、妖艶な笑みを見て。
「みつ・・・・・・・・い?」
良く知っているはずの同級生が全く知らない生き物に変化してしまったような気がして、赤木の声は震えた。
そんな赤木の態度に、三井はニヤリと、口角を引き揚げて見せる。形は同じなのに、いつもの人をからかっている笑みとは全然質が違う笑みを。
そして、妙に甘い声を発してくる。
「だからさ、礼の一つでもして気持ちをすっきりさせたいわけよ。俺は。」
「・・・・・・・・礼?」
「そう。・・・・・・・・お前、まだ経験無いだろ?」
「は?」
何を言われたのか分からず目を点にして聞き返せば、三井はこれ以上ないくらいに楽しそうに語りかけてくる。
「ずっとバスケバスケでやって来たんだろ?この三年間。女とつき合ってる暇なんて、ねーよな?」
「・・・・・・・ぁっ・・・・・・何を、お前・・・・・・・・・っ!」
その言葉にようやく三井が言っている事の意味を把握した赤木は、火を噴くのでは無いかと言うくらい顔を赤らめた。そして、即座に怒鳴り返そうと口を開く。 だがしっかりとした声は出ず、ただただ、口を震わせることしか出来なかった。
それは怒りの為なのか、羞恥の為なのかわからなかったが。
そんな赤木の様子をジッと見ていた三井は、いつもよりも朱色が増している唇をニヤリと、引き上げた。
「・・・・自慢じゃ無いが、この二年の間に色々やってきてよ。んで、幸か不幸かその手の腕だけはイヤって程磨けたんだ。」
「それがどうしたと・・・・・・・・・・・」
「初体験が男ってーのもアレかもしれねーが・・・・・・・・そこらの尻軽女とやるよりは、良い思いさせてやるぜ?」
そう告げた三井は、じわりと瞳を細めた。まるで、肉食獣が獲物を捕らえた時のような顔で。
肩に置かれていた掌がゆっくりと滑り降り、赤木の鍛え抜かれて浮き上がった胸筋の上を撫でて行く。誘うように。そして、指先が胸の飾りに引っかかる。その刺激に、肉体経験のない若い赤木の全身に震えが走った。快感のために。
「みつ・・・・・・・・」
「怖がんなよ。気持ち良くしてやるからよ・・・・・・・・男も女も、そうたいして違いはねーぜ?」
いつも部活の時に見る彼の明るい、子供じみた笑みとは質の違う笑みが、赤木に向けられた。今まで見たどんな女よりも艶やかで、官能的な笑みを。
答えない赤木の態度を了承したものと取ったのか、三井が口角を引き上げ、ゆっくりと己の顔を赤木の顔へと、近付けてくる。
普段余り意識した事が無かった彼の整った顔と赤く色づいた唇がゆっくりと近づいて来るのを、赤木はぼんやりと見つめていた。
彼の腕から逃れられない自分を、はっきりと自覚して・・・・・・・・・・・
以前日記に載せた突発物を再度修正してアップ。
誘い受けと言うよりも襲い受け。
今までで一番エロい三井受けかもしれん。
そんなものを日記に書くなと突っ込みたい。涙。
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謝意