部活の打ち合わせを理由に部活後に彩子を喫茶店に誘う事に成功した宮城は、浮かれ気分で彩子との甘いひとときを過ごしていた。
 勿論、打ち合わせもちゃんとやったが、プライベートの話も沢山出来たので大満足だ。これからは時々この手を使おうと、密かに決意を固めた程に多大な成果を収めた。
 そんなことしなくても良いという彩子を半ば強引に家に送り届ける事にした宮城は、喫茶店を出た後も至福の時間を続行させている。
 そして、近道だからと彩子が指さした公園の中に足を踏みいてしばらく経った頃、突然彩子に腕を引かれて、宮城は草むらの中に膝を付いた。
「アヤちゃん・・・・・・・・!」
 なんて大胆な。
 宮城は頭の中でファンファーレを鳴らした。とうとう自分の時代が来たのかと。愛する彩子との初体験が青姦というのはなかなかハードだが、宮城的にはなんの異存も問題もない。ここは男らしく、雄々しく彩子に攻めかかろう。
 一瞬でそう考えた宮城は、彩子の身体を地面に押し倒そうと腕を持ち上げ、彼女の肩に手をかけようとした。だが、彩子の視線が自分にではなく、他のものに向けられている事に気づいて腕を降ろす。
「・・・・・・・・アヤちゃん?」
「シッ!黙ってっ!」
 何事だと問いかけた声を、彩子は小さい、だが鋭い声で制してくる。
 慌てて口を噤んだ宮城は、彼女が一心に見つめる先へと、視線を向けてみた。
 そこにはブランコが二つ。
 その一つには見覚えのある男の姿があった。
「・・・・・・・・・・三井サン?」
 それは、二ヶ月程前に卒業したばかりのバスケ部の先輩だった。今は自宅から大学に通っているはずだ。三年になるまで不良だったのに、自分と一緒に赤点をとり、赤木の家で追試合宿をしていたのに、良くソレで大学に入れたものだと思った事は、記憶に新しい。
 その彼の行動範囲がどの辺りなのか、宮城は知らない。部活の中では親しかったが、だからといってプライベートで一緒に遊ぶ事はそう多くなかったから。だから、彼の母校近いこの公園に彼が居る事をおかしいとは言い切れない。例え彼の家とも大学とも方向が違う場所だと言っても。まぁ、いい年した男がブランコに乗っているのはどうかと思うが。
 ここは挨拶をするべきだろうかと、宮城は首を捻った。引退したら赤の他人などとというつもりは無いから、そうした方が良いのだろう。後で茂みに隠れていた事がバレタラうるさい事を言いそうだし。
 そう思ったのだが、彩子は出て行く気が無いらしい。何やら熱心に三井の姿を見つめている。
 いったいなんなのだろうか。首を傾げながら彩子の視線を辿ると、そこにもう一つ影がある事に気が付いた。
「流川?」
 ブランコの前に立った、たけの低い鉄柵に腰掛けていた長身の男の名を呆然と呟く。数時間前まで共に部活に励んだ後輩がなんでこんな所にいるのか、分からなくて。
 いや、彩子と同じ中学出身なのだから、ここら辺が彼のテリトリーだろうとは思う。だから居てもおかしくない。それこそ、ブランコに乗っている三井よりも自然な事だと思うのだが、その三井と流川が一緒にいる事が解せなかった。
 三井と流川が親しくしている様など、三井が在学中に一度も見かけた事がなかったから。
 いや、部活の後に二人で1On1を頻繁にしていた様だから、仲が悪いわけではないだろう。しかし、プライベートで会う程仲が良さそうに見えたかと問われたら、力強く首を左右に振る。
 その彼等が何故、こんなところで二人きりでいるのだろうか。
 不思議に思って首を傾げ、隣の彩子のを窺い見れば、彼女は異様な程瞳を輝かせていた。
「ア・・・・・・・・・アヤちゃん・・・・・・・・・・・?」
 その尋常ではない瞳の輝きにたじろぎ、彩子の名を呼べば、彼女は不気味な笑みを浮かべて寄越した。
「ここじゃ声が聞えないから、近づくわよっ!」
「え・・・・・・?ちょっ・・・・・・アヤちゃんっ!」
 茂みの中をコソコソと隠れながら二人に接近する彩子の姿を呆然と見送っていた宮城だったが、ここで置いて行かれるのはイヤダと直ぐさまその後を付いていった。
 その間にも、三井はブランコを立ちこぎしていた。平均的な成人男性よりも長身な彼がそれをやると、見た目が少々恐ろしかったりするのだが、本人は少しも気にしていないようだ。そんな三井の姿を、流川が無言で見つめている。その静かな空気が妙だなぁと思う。流川が無口なのはいつもの事だが、いつも鬱陶しいくらいに喋り倒している男が口を閉ざしている事が、とても不思議だ。
 宮城が首を傾げる中、三井が小さな声で後輩の名を呼んだ。
「流川。」
 その声に数度瞬いた流川が、呆れたように深く息を吐き出した。そして、スッと身体を横にずらした。と、思ったら、三井がブランコから手を放し、宙を飛ぶ。
 ザッと、足が滑る音が聞えた。
「お〜〜。結構飛距離が出たな。」
 地面に降り立った三井が楽しげに笑いながら、沸き上がった土煙で汚れたパンツの埃を払っている。鉄柵に腰を下ろしたまま身体を僅かに捻り、そんな三井の姿をチラリと流し見た流川は、三井から視線を外して前に向き直ると、深々と息を吐き出した。
「・・・・・・・・ホント、ガキくせぇ・・・・・・・・・・・」
「あん?なんだと、このっ!」
 流川の言葉を耳にした途端眦をつり上げた三井は、長いストライドを更に長くし、足音も荒く流川の元に歩み寄った。
「正真正銘ガキのお前にガキ呼ばわりされたくねーんだよっ!」
「中身はアンタの方がガキ。」
「ああん?!今日でまた年の差が広がったくせに、偉そうだなぁ、てめーわっ!」
 怒鳴りながら、三井は己に背を向けるようにして鉄柵に腰掛けている流川の首に腕を回して身体を固定し、力一杯流川の脳天に己の拳を突きつけ、グリグリとひね回していた。
 桜木がそんな事をしようものなら血が流れる程の乱闘騒ぎになるだろうに、流川は甘んじてその攻撃を受けている。
 どうしたんだ、流川。何か三井サンに弱みでも握られているのか?
 そう心配した宮城の前で、三井の攻撃を受け続けていた流川が口を開いた。
「センパイ。」
「あん?」
「大丈夫だった?」
 チラリと、流川が視線を上げる。どこか気遣いの色がにじみ出る黒い瞳を、三井の色素の薄い茶色の瞳にしっかりと当てて。
 その言葉と瞳に一瞬動きを止めた三井が、フッと表情を緩めた。とても優しい笑みへと。そして、拳を握っていた手を開き、今度は掌で流川の髪をかき回す。
「おう。まだ大丈夫だ。」
「・・・・・・・・・まだとか言うな。」
 不服そうに眉間に皺を寄せ、抗議の声を上げてくる流川の頭をもう一度撫でた三井は、抱き込んでいた流川の頭を解放し、流川の隣に腰を下ろす。流川が顔を向けているのとは逆の方向に顔を向けて。
 そして、穏やかな声で語り出す。
「そうだな。でもまぁ、いつかはガタが来ると思うぜ?」
「・・・・・・・・・ヤッパリ・・・・・・・・・・・・」
「まだ大丈夫だってのっ!本当に、おかしな所は無いんだよ。運動した後はちゃんとケアしてるし、検査もこまめに通ってる。でもやっぱ、一度やっちまってるからさ。なんともないまま過ごしていけるとは、思えねーんだよ。」
 三井は、真剣な眼差しで自分の事を見つめる流川の瞳に笑いかけた。
「それでもまぁ、少しでも長く続けられるように頑張るけどな。」
「・・・・・・・・・当たり前だ。」
「おう。俺は諦めの悪い男だからな。」
 ふて腐れた様な声で呟き、プイと視線を反らした流川にクスクスと軽い笑いを立てた三井が、流川の顔を覗き込むように上半身を背後に倒し、ニヤリと、意地の悪い笑みを浮かべて見せた。
「で、お前の方はどうなのよ?留学。今年中に行くのを目指すのか?」
 突然告げられた三井の言葉に、宮城と彩子は驚きに目を見張った。
 流川が留学するなんて話、聞いてない。いったいどういうことだと、更に意識を集中させて二人の会話に耳を傾ける。
「いや、今年は無理っす。」
 三井の言葉に、流川は軽く首を左右に振った。そんな流川言葉はある程度予想済みだったのか、三井は驚きもせずに。逆にからかいの色が滲む笑みで笑いかけた。
「なんだ?もう諦めんのか?」
「諦めてねーけど、無理なもんは無理。使える奴が少ねぇ。」
 キッパリと言い切った流川に、三井が先を促すような瞳を向けている。その瞳を見つめ返した流川だったが、すぐにフイッと視線を反らして、夜空に輝く星をじっと見つめる。
「・・・・・・・センパイと赤木キャプテンがどれだけ凄かったのか、居なくなってから気づいた。それを埋める奴がいねぇから、動き難い。俺一人じゃ、限界がある。」
「お?随分弱気だなぁ。流川?」
「・・・・・・・・バスケは一人じゃ出来ねーって言ったの、センパイだろうが。」
「まぁな。」
 ニッと口角をつり上げて笑う三井の顔はものすごく楽しそうだった。流川をからかって楽しいと、言わんばかりに。
 流川もその事に気づいたらしい。不服そうに顔を歪めて見せた。
 そんな流川の態度を一切無視して、三井は同じテンションで語りかける。
「で、どうすんだ?」
「来年残る奴らを鍛えて使えるようにする。来年は宮城センパイも居なくなるし、ドアホウ一人じゃ頼りねぇから。」
「よしっ!良い心がけだな、流川っ!」
「・・・・・・・・ガキ扱いするな。」
 頭髪をガシガシとかき回して褒める三井の態度に不機嫌も露わな声を出してはいる物の、流川の口元にはうっすらと笑みが浮かび上がっていた。あの、能面のように無表情な男の口元にだ。
 その事にも驚いたが、流川が後輩育成などという事を考えていた事にも驚いた。
 そう言えば、最近やたらと一年坊主や二年の奴らに口を出していたなと、思う。何をそんなに突っかかっているのかと思っていたのだが、アレはアドバイスだったのか。嫌味を言っているのだとばかり思っていた。
「スマン、流川。」
 お前の胸の内を察してやれなくて。俺はキャプテン失格だ。
 そう胸の内で呟きつつ、興味深い二人のやり取りを見つめ続けた。
「ところでよ、考えたのか?」
 突然変わった話題に、宮城だけでなく流川も首を傾げた。そんな流川に、上半身を背面に倒れ込ませながら三井が楽しげに問いかける。
「俺への誕生日プレゼント。お前の時はオレ様が素晴らしいプレゼントをくれてやったんだ。お前も、同じくらい良いモンくれるんだろ?」
 期待しているのだと言うように、三井の瞳が輝く。
 そんなプレゼントをやっていたという事実に宮城は驚き息を飲み込んだが、流川は違う理由で息を飲んだ。そして、言いにくそうに口を開く。
「・・・・・・・考えたけど、良くわかんねぇ。」
「あぁ?わかんなくても考えろよ。その考えた時間もまた、プレゼントみたいなもんなんだぜ?」
「・・・・・・・・・時間が?」
「おう。何を送ろうかって考えた時間は、そいつのために使われたッて事だろ?なんも考えなかったら使われなかっただろう時間なんだからさ。だから、その時間もプレゼントみたいなもんだ。」
 妙に乙女チックな話をする三井に、宮城は胸の内で「そういう事を言うタイプじゃねーだろうが、あんたは」と、呟いた。流川もそう思ったのだろう。ポカンと口を開けた後、口元をほんの少しだけ引き上げた。
「センパイ。ガキっぽい。」
「うるせぇよっ!」
 少々機嫌を損ねたのか、三井がムッと顔を歪めた。だが、すぐに気を取り直したらしい。窺うように流川の顔を覗き込んだ。
「で、何よ。」
 問われ、流川は視線を宙に流した。そして、呟く。
「・・・・・・・・全国制覇。」
「いつの話だよ。だいたい、それはてめーの目標みたいなもんだろうが。アホ。」
「・・・・・・・・1On1をする。」
「んなの、いつもやってんだろうが。」
「・・・・・・・・第二ボタン。」
「どうせなら卒業するときに寄こせよ。」
「・・・・・・・・部活のボール。」
「お前のもんじゃねーだろが。タコ。」
 そこで流川のネタが尽きたのか、彼はその常から堅い口を引き結んだ。そんな流川の姿を、三井は楽しそうに見つめている。
「おうおう、どうした?もうギブアップか?」
「うるせぇ・・・・・・・・」
 不愉快そうな声でそう返した流川は、それでも真剣に考え込んでいるらしい。眉間に皺を寄せてうなり声を上げている。
 何をそんなに真剣に悩んでいるのだろうか。誕生日のプレゼントなんて、適当にやれば良いではないかと、宮城は思う。相手は高校生だ。三井だって高価な物を要求しては居ないだろう。というか、何故流川からプレゼントを貰いたがるのだろうか。
 ソレよりも何よりも、彼が流川にあげていた、という事実にビビル。自分は彼にそんなものを貰っていないだけに。それは、自分では無く流川の方が可愛い後輩だったと言う事だろうか。あんな仏頂面なのに。会話も続かなそうなのに。いや、今現在三井と流川の会話は弾んでいるが。その事がまた、宮城には驚きだ。
「別に妙な捻りなんかいらねーぞ?そんなもん、てめーに期待してねーからな。」
 サラリと失礼な事を言ってのけた三井は、それでも迷う流川に優しい色の瞳を向けた。そして、視線を前方へと向け直し、頭上に輝く月を仰ぐ。
 三井は口を閉ざした。流川も。二人の周りには、静かな空気が落ちる。
 近くの道路から聞えてくる車の音が、妙に耳に付く位に静かな。
 二人は口を開こうとはしない。だけど、気詰まりな空気が落ちているわけではない。共にいるだけでも満足だと言うような、満ち足りた空気が辺りを包んでいた。
 なんなんだろうか、この二人は。
 宮城は改めて首を捻った。
 一緒に居る事も不思議だが、こんな空気を醸し出しているのも不思議だ。
部活の最中に誰かが三井の話題を出しても、流川は少しも反応を示してこない。そんな奴に興味は無いと言わんばかりに。なのに、なんで一緒にいるのだろうか。三井の誕生日らしい、この日に。
 流川が誘ったのか、三井が誘ったのか。誘われたとしても、なんで三井はひょいひょいとやって来たのだろうか。自分の誕生日に。
 誕生日という特別な日には普通、こんなでかくてかわいげのない後輩ではなく、かわいげが溢れた彼女と一緒に過ごす物なのではないだろうか。それが居ないから流川なのかと考えたが、そこであえて流川を選択する意味が分からない。どうせだったら学校に来てくれれば良かったのだ。そうすれば、誕生日を共に過ごす彼女も居ないのかとからかいながらも皆で盛大に祝ってヤッタのに。
 なんとなくムッとした気分になりながら、宮城は二人を睨め付けた。
 と、流川がチラリと背後を振り返った。そして、ゆっくりと上半身を捻り、三井の耳元に自分の口を寄せる。

「      」

 流川が、何かを囁いた。
 途端に、三井の顔が綻ぶ。
「・・・・・・・・・・・上等だ。」
 ニヤリと不敵に。だが、嬉しそうに笑んだ三井は、流川の顔に視線を向けるよう、首を捻った。そして、ほんの少し瞳を細める。
 そんな三井の反応に、流川はどこかホッとしたような顔をした。そして、すぐにニコリと、笑んだ。
 その笑顔に、宮城はギョッと目を見張った。
 流川が冷笑以外の笑みを浮かべられるとは思わなくて。というか、なんだ、その甘ったるい笑みは!そんなのお前のキャラじゃないだろうっ!
 と、内心でギャーギャー騒いでいた宮城の目の前で、三井の腕がゆっくりと持ち上がった。その腕が流川の首にがかり、元から近かった流川の頭を更に自分の方へと引き寄せる。
 ゆっくりと焦らすように、三井の影と流川の影がこれ以上無いくらいに接近した。
 宮城はもう、何も考えられなかった。目の前の出来事が信じられなくて。
 三井と流川の唇が、合わさっている。
 誘うような行動に、流川は少しも抵抗をしなかった。むしろ、積極的に動いているくらいだろう。今、流川の腕は三井の腰に回されているのだから。
 どれくらい交わっていたのだろうか。呆然とする宮城の前で、二人の影はゆっくりと離れた。
 三井が小さく息を付く。そして、己の顔をじっと見つめてくる流川に向かってニヤリと笑いかけた。
「・・・・・・よし。んじゃぁ、帰るか。」
「ウス。」
 かけられた言葉に当然のように頷き、流川はその場に立ち上がる。
「なんも食うもん無いんだよな・・・・・どうする?食ってくか?買ってくか?」
 立ち上がりながらの三井の言葉に、鉄柵を長い足で軽々と跨ぎながら流川が平坦な声で答えた。
「材料買ってって、センパイが作る。」
「ざけんなっ!なんで主賓が自分で飯作ンなキャいけねーんだよっ!」
「・・・・・じゃあ、買ってく。」
 白いシャツに足跡を付けられ、流川は渋々と言った様子でそう返した。そして、短く続けた。
「早く二人になりてーし。」
「アホか。」
 心底呆れたと言わんばかりの声で、三井がそう返した。だが、それ以上の言葉はない。見慣れた流川の自転車の荷台に腰掛け、急かすように目の前の背中を叩いている。
「だったらいつも以上に気合い入れて漕げよ。」
「ウス。」
「寄るのは・・・・・・・・・・この時間ならまだ空いてるだろうから、アソコ行くか。」
「ウス。」
「お前が買えよ。」
「・・・・・・・・・・」
 その言葉には返事を返さず、流川は自転車を漕ぎ出した。
 見知った影が去っていくのを呆然と見送りながら、宮城はヨロヨロと茂みから這いだした。
「・・・・・・・・なんだったんだ、アレは・・・・・・・・・・・」
 仲の良いセンパイ後輩の域を脱しているだろう。アレは。というか、
「なんで、キスしてんだ、あの二人は・・・・・・・・・・・・」
 呆然と呟く宮城の横で、同じように茂みから抜け出してきた彩子が嬉々とした声で叫びだした。
「やっぱりっ!怪しいと思ってたのよねぇ・・・・・あの二人っ!」
「ア・・・・・・アヤちゃん?」
 突然の叫びに宮城はギョッと目を剥いた。怪しいとは、なんなのだろうか。
 困惑する宮城に、彩子は瞳を輝かせて言葉を返してくる。
「だって、アイコンタクトとか普通にしてるのよ。試合中じゃなくて、普通の時に!他人に無関心な流川が!気づくと三井先輩の事見てるし、部活引退した後もチョコチョコ先輩のとこに出掛けてたみたいだし。コレはもしかして・・・・・・と、思ってたんだけど。ウフフ。ヤッパリねぇ・・・・・・良いネタ掴んじゃった!」
 そう言いながらほくそ笑む彩子に、宮城は少々腰が引けた。
 男同士と言う事になんの疑問も持たないのだろうか、彼女は。
「さて、明日は早速流川にカマかけてみようかしらね〜〜。ウフフ。楽しみだわぁ〜〜〜でも、誰にも言えないのが、難点ねぇ・・・・・・・・・・」
 ブツブツと呟きながら歩き出した彩子にかける言葉が、宮城には無かった。ただ、彼女の背を追いかける事しかできない。
 宮城は、深々と息を吐き出した。
 なんだかドッと疲れて。幸せな気分はもう、すっかり無くなっていた。
「折角のデートだったのに・・・・・・・・・・」
 やはり運命の女神は自分に味方してくれないと言う事だろうか。
「前途多難だぜ・・・・・・・・・・・・」
 障害の多そうな三井と流川の方が幸せそうだったのが、かなり酌に触った宮城だった。

































誕生日おめでとう!















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