「センパイ。俺のこと、スキッすか?」
唐突な質問に、問われた三井は大きく目を見開いた。
三井以上に、周りにいたチームメイト達の方がビックリしているようだったが。
驚愕の色が大いに含まれた瞳を全身で受け止めながら、三井は問いの主である流川に向き直った。
そして、首を傾げて問う。
「なんでそんなことを聞くんだ?」
「知りたいから。」
「なんで?」
「気になった。」
「今?」
コクリと、頷く。
そんな素直な反応に、三井はフムと小さく息を漏らしながら首を傾げた。
そして、ニッコリと笑い返してやる。
「もちろん、好きだぜ?に食ったらしいところは多々あるが、可愛い後輩だからな。お前は。」
その答えに、流川の滅多に動かぬ表情がピクリと動いた。
そしてじわりと、眉間に皺が寄る。
「・・・・・・そう言う意味じゃねー・・・・・・・・・」
低く押し殺した声で呟く流川に、小さく笑い返した。
そして、汗に濡れた彼の頭に手を伸ばして力任せに撫で回してやる。
「分かってるよ。」
囁くように告げる。
回りの人間達には聞こえないような声量で。
告げた言葉に、ウソは無い。
分かっているが、答える事は出来ないだけなのだ。

自分の本当の気持ちを。

こんな場所では。

いや、此処じゃなくても言わないだろうが。

だけど少しだけ声に出して言いたくて、口を開く。

「てめーのバスケも好きだぜ。自信に満ち溢れててよ。見てるだけでも興奮する。下手なプロの選手を見るよりもな。本当だぜ?憎ったらしい事だけどよ。時々本気で目を奪われるよ。てめーのプレイには」
告げた言葉に大きく目を瞠る流川に、ニカリと微笑みかける。
そして、再度頭を撫でた。
「・・・・・・・だから、くだらねー事言ってないで、やろうぜ、バスケ。」
「・・・・・・・・・ウス。」
三井の言葉に、流川は彼にしては晴れやかな笑みを浮かべて頷いた。
その笑顔を見て、確信する。
自分の気持ちがほんの欠片だけでも彼に伝わったことを。
何がどう伝わったのかは分からないけれども。
それでも確実に、自分の好意は伝わった。

それだけで十分だと、胸の内で呟く。


多くは望まない。

望まないようにしている。

このバスケ部に戻ってこられたことだけでも、十分過ぎるほどに幸福な出来事だったのだから。
これ以上の幸福を望んだら、また何か嫌なことが起きそうな気がして怖い。
自分の身にだけではなく、彼の身にも。


だから、多くは望まない。


彼が、好きなだけ好きなバスケに打ち込んでいてくれれば、それで良い。


本気でそう思いながら、三井は手にしていたボールを放り投げた。

強い祈りを込めて。
























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好きだから