城主チッチは悩んでいた。
 ここ最近、これ程深く悩んだ事は無いのでは無いかと思うくらいに、悩んでいた。
 いや、最近どころではない。もしかしたら、ジョウイがアナベルを殺して、敵の元へ言ってしまったときと同じくらいに考え込んでいるかも知れない。
 ・・・・・・・それは、少し言い過ぎかも知れないが。
 とにかく悩みに悩みまくっているチッチは、頭を抱えこみながら、うなり声を上げていた。
「ううっ・・・・・。どうしよう・・・・・・・・」
 良い考えが浮かばないせいで、口から零れる言葉は意味のないものになる。
 悩み始めてから、色々なパターンを考えた。
 自分の考えをシミュレーションし過ぎて、脳みそがパンクするのでは無いかと思ってしまう位考えた。しかし、考えても考えても、どれもコレもがしっくり来ない。
「・・・・・・・シュウさんに、相談してみようかな・・・・・・・・」
 そう呟いてみたが、すぐに自分の言葉に首を振り、否定を示す。
 ソレはいけない。ソレは、自分への裏切り行為だ。この問題は自分一人の力で解決すると、そう心の中で決めたのだから。
 そう思って再び最善の作を錬り始めたのだが、どうにもこうにも納得出来る案が浮かばない。
「ああ・・・・・・・・・・どうしよう・・・・・・・・・・」
「何をそんなに悩んでいるの?」
 いきなり背後から聞えた問いかけられたチッチは、ハッと息を飲み込み、慌てて視線をあげた。考え込みすぎてて、人が近づいて来ている事にまったく気付いていなかった。それは、相手が相手だったからかも知れないが。
「・・・・・・・・ナナミ・・・・・・・・・」
 思わず彼女の名を呟くように呼ぶと、彼女はニコリと、盛大に笑い返してきた。そして、こう宣言する。
「何か悩みがあるなら、お姉ちゃんに相談してごらん!一発で解決して上げるよ!」
 大きく胸をはり、ドンと力強く己の拳で叩いてみせる彼女の様子に、どうしようかと悩んだ。人に相談するのは、逃げているようでちょっとイヤなのだ。
 しかし、このどうにもならない状況を脱するには、人の意見を聞くのも手なのかも知れない。それに、どうせ聞くならシュウよりもナナミの方が気が楽だ。
 そう思い、チッチは意を決したようにナナミの顔を覗き込んだ。
「・・・・・・・・・・あのね。」
「うん。ナニナニ?」
「強力攻撃なんだけどね。」
「うん。」
「・・・・・・・・どう組んだら良いと思う?」
 その問いかけに、ナナミは一瞬目を丸くした。そして、軽く首を傾げながら問い返してくる。
「どう・・・・・・・・って?」
 何を聞かれたのか分らなかったのだろう。自分の中では散々考え尽くしていた内容だけに、主語を思いっきり省いてしまったから、それも仕方のない事だ。
 内心でそっと反省をしたチッチは、気を取り直して説明をし始めた。
「パーシヴァルさんとボルスさんが加わったでしょ?」
「うん。」
「彼等の騎士攻撃も、カミューさんとマイクロトフさんの騎士攻撃も捨てがたいじゃない?だから、折角人数も増えたから、騎士攻撃を組み直して四人で騎士攻撃をするのはどうだろうかって、考えたんだ。」
「・・・・・・・・でも、みんなSレンジだよ?」
「うん。だから、そこら辺は色々とやりくりしないといけないんだけどね。・・・・・・そうなると、フリックさんが問題なんだ。」 
「フリックさん?」
「うん。」
 何故そこに彼の名が出てくるのか分らないと言いたげに首を傾げてみせるナナミに大きく頷いたチッチは、真剣な眼差しで彼女の瞳を覗き込んだ。
「美青年攻撃だよ。五人で美青年攻撃。ちょっと、凄いでしょ?」
「・・・・・・うん。それは、確かに凄いね。」
 真剣に話し始めたのに、その姿を脳内に描いたら自然と顔が綻んで来てしまった。その嬉々とした空気を感じ取ったのだろう。少々ナナミの腰が引けたのに気が付いた。
 しかし、一度堰を切った思いを止める事は出来ない。チッチは、どこかうっとりしたような眼差しで話し続ける。
「美青年五人の間に囲まれるって言うのも、なかなか気分の良いモノだろうなぁとか思って。なんだか、ハーレムみたいな気分になってくるよね!」
「・・・・・・・そうだね。」
 応えるナナミの顔は、少々引きつっているように見えたが、気にせずに語り続ける。
「でも、それだとビクトールさんに横やりを入れられそうな気がするんだ。」
「う〜〜ん。そうかもね。そこにはビクトールさんが入る隙間がないからね。フリックさんと一緒に仕事が出来ないって、怒り出すかも。」
「そう思うでしょ?だから、文句を言わなそうなマイクロトフさんを外して、ビクトールさんを入れて・・・・・・。とも思ったんだけど、それだとビクトールさんだけ浮いて、見た目が良くないと思うんだ。」
「・・・・・・・・確かに、そうだけど・・・・・・・・・・」
「あとね、こんなのも考えたんだ!」
「・・・・・・・・何?」
「フリックさんとカミューさんとパーシヴァルさんで、真の美青年攻撃!どうっ?」
 その言葉には、それまでずっと何とも言えない表情を浮かべていたナナミも、パッと顔を輝かせた。
「それは良いかも!滅茶苦茶イケテルよ!チッチ!」
「やっぱり、ナナミもそう思う?」
 ナナミの同意に力を得たチッチは、更に顔を綻ばせながらもう一つ提案を出してみる。
「どうせ美青年攻撃を組み直すんなら、他のも組み直ししようかとも思うんだ。」
「他の?」
「うん。カミューさんとパーシヴァルさんのペアと、マイクロトフさんとボルスさんのペアで、騎士攻撃。どうかな。」
「・・・・・・・カミューさんとパーシヴァルさんの騎士攻撃って、薔薇が飛びそうだね・・・・・・・」
 その様を想像しているのだろうか。ナナミは、うっとりとしたような顔で虚空を見つめている。そんな彼女の様子に、自分が考えていた事は間違っていなかったと、力を得る。
「そう思う?やっぱり、そう思う?」
「うん!思う思う。それは絶対やるべきだよ!みんな喜ぶよ、きっと!」
「ホント?じゃあ、どっちかやるよ!絶対!真の騎士攻撃か、真の美青年攻撃を!ああ、でも。夢が膨らみ過ぎて、何を選んで良いのか分らないよー!」
 そう叫び声を上げたチッチは、頭を抱え込んで机の上に突っ伏した。
 そんなチッチに、ナナミが少し飽きれを含んだ声をかけてくる。
「・・・・・・そんなに悩むんなら、全部試してみたら?」
「全部?」
「うん。日替わりとかで。騎士攻撃も、美青年攻撃も。その中で一番良いのを選んでも、良いんじゃない?」
「・・・・・そうか。何も、今すぐに焦って一つに絞らなくて良いのか。」
「そうだよ。パーシヴァルさんとボルスさんが明日明後日でいなくなるわけでも無いんだし。」
「そうだよね!ありがとう。ナナミ!早速、打ち合わせに行ってくるよ!」
 彼女の一言で椅子から勢いよく立ち上がったチッチは、スキップするような足取りでゴアへと向っていった。
「よーし!まずは、五人美青年攻撃からやってみるかー!」
 そう叫びながら部屋を後にしたチッチの背後で、ナナミが呟いた一言を耳に入れる事も無く。
「・・・・・・・・お姉ちゃん。ちょっと教育を間違えちゃったかも。」


























パーシヴァルが掠りもしないのはどうなんだ?
そもそも、内容が無いヨウ!(ダジャレ)














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時の向こう・2