棚田の雀よけの網張り もはや農的技術伝承の領域?

小田切の棚田の穂が出揃ってきた。お盆の最中14日から雀よけの網張りを始めた。中山間地の棚田はとにかく手間がかかる。稲作を続けているのは私の他、3人。つまり麻庭集落で4人だけなのである。かつては12軒の稲作農家があった。その田んぼのほとんどが荒廃農地に変わってしまった。寂しいかぎりだ。

穂が出揃ってくると田んぼの稲をついばもうと雀が飛んでくる。専業農家の長男として中学生の頃から農作業を手伝ってきた私にとってお盆は雀よけの網張り作業の時期を意味する。4〜5年前から網張りを行わず、細いひもを張って網の代用とする若手が出てきた。そして今年、網張りを行ったのは私だけになってしまった。半農半Xをライフスタイルとする私はできるだけ従前どおりの農作業手順を守っていきたいと考えている。1枚の田んぼの回りに4〜5メートルおきに竹を支柱として打つ(その数は7枚の田んぼで200本超)。そしてそれをビニールテープで囲う。次に、縦に横にビニールテープを張り、その上に網を拡げるのだ。里田のように四角で広い田んぼのように簡単にはいかない。高い幅、不正形の田なりの山田に網を張るには技術が必要だ。

網張りを「ケンカ網」というように二人で作業していても言い争いが付きものなのだ。下準備をして、一人で縦横無尽に動きつつも83歳の母に指示を仰がなければうまくはいかない。それが母の生き甲斐となっていると勝手に思ってもいる。かくして、我が田んぼだけに今年も網が張られた。丹精込めた稲穂に雀が付かないように欠かせない作業を行った達成感で田んぼを誇らしく見る。農業の技術伝承をこれからも心がけていきたい。

あと1月で稲刈りとなる。パンクしてしまったままのバインダーの整備もしなければならない。まだまだ農作業に忙しい日々が続く。