健康寿命延伸都市・松本市を視察

何かと張り合うというか、切磋琢磨の関係にあるというか比較対象都市である県下第2の人口を有する松本市を行政視察した。改革ながの(5人)の視察に同行させていただいたという方が正確だ。市民ネット(2人)は私だけが参加した。信州大学人文学部に学んだ私にとって4年間の学生生活を送った松本市は思い出深い都市である。

視察テーマは3つ。1つは健康寿命延伸都市。松本市は、総合計画において、「健康寿命延伸都市・松本」を目指すべき将来の都市像として掲げている。「健康寿命延伸都市・松本」の創造の基本理念は、量から質へと発想を転換し、市民一人ひとりの「命」と「暮らし」を大切に考え、だれもがいきいきと暮らせるまちづくりに向け、「健康寿命」の延伸を目指している。その実現のため、健康を核として、経済、産業、観光、教育、環境、都市基盤など様々な分野が連携し、「心と体」の健康づくりと「暮らし」の環境づくりを一体的に進めている。そして、互いに助けあい、学びあい、安心して暮らせる持続可能なまち、夢と希望にあふれ、住んでよかった、住んでみたいと思えるまちを、主役である市民と行政との協働で、お互いさまの精神をもって創造していくことを謳っている。健康というと保健や医療など人の健康を想像するが、生活の健康、地域の健康、環境の健康、経済の健康、教育・文化の健康の5つの健康を加え6つの健康で健康寿命延伸都市をめざそうとしているのである。まさに総合計画なのである。興味深い発想だ。ただ、総合計画の策定に当たって、市当局の素案を下敷きに1年に満たない短い期間で、4つの部会における市会議員が部会長を務める会議の進め方などには真の協働なのかなどの課題もあると感じる。いずれにしても医者であり、信大医学部助教授の地位を投げ打ってチェルノブイリ原発事故後、子供の甲状腺医療を献身的に行った市長の肝いりの政策であることに間違いはない。本市の市長とは大きな違いだ。

2つ目は学校給食食材の放射能対策。福島原発事故対策として松本市は昨年4月、市としてシンチレーションサーベイメーターを独自に購入し給食食材の放射能測定を決定し発注した。9月に納品となり10月から測定を始めた。本来、空間放射線量を測定するものと私は決めつけていたが独自基準(少し強引な気もする?いささか不正確かもしれない?)で直接食材からの放射能測定を行ってきた。ベクレル換算なのどのご苦労もあるが保護者にとっては安心の一助になっていることは確かである。消費者庁の無償貸与事業の採択に向け3度の不採択にもめげず、4度目の応募でようやく採択となった。しかし、未だに機器は来ない。3.11から既に1年5月が経過している。正確性に欠けると松本市の対応を評価していないらしいが、昨年の10月からの測定を実施し、4月からは県中信教育事務所のガンマ線シンチレーションスペクトロメータ、更には民間のゲルマニウム半導体検査機で正確性を期す3段階の検査体制は評価に値する。本市の対応とは大きな違いだ。

3つ目は育児ママヘルプサービス事業。出産後、核家族等で育児協力者が得られない方や多胎で出産された方を対象に、助産師又はヘルパーが自宅を訪問して、育児・家事に関するお手伝いをする事業である。健康福祉部とこども部との連携、他市からの転入者への働きかけや転出市への情報提供など担当保健師の説明は自信に満ちていた。本市も積極的に取り組むべき課題である。

どのテーマにしても松本市に先を越された感があるというか、遅れをとっている感がある。電車で1時間20分の距離にある松本市と長野市。方や人口25万人の健康寿命延伸都市。方や人口38万人の中核市。その違いが首長の政治姿勢にあることは言うまでもない。どちらの市民の幸福度が高いのか。無論、答えはそう単純ではない。そして言うまでもなく、議会の果たすべき役割と議員の職責はとても重い。