今日の泊まりはインスブルック。インスブルックはウィーンから列車で約5時間30分。北はドイツ、南はイタリアに国境を接するチロル州の州都だ。インスブルックとは「イン川に架かる橋」という意味で、12世紀後半にイン川に橋が架けられ、川岸に発展した古都である。ハプスブルク家のマクシミリアン1世がとりわけ愛した町としても知られる。アルプスの山々に囲まれているインスブルックは1964年、1976年の2回、冬季オリンピックの開催地ともなり、冬はスキーヤー、夏はアルピニストで賑わう観光地でもある。

翌朝6時半、雨の中「金の小屋根」を見る。金の小屋根はマクシミリアン1世が、広場でのイベント見物を楽しむために建設したバルコニー。金箔を貼り付けた2657枚もの銅板から成る屋根はインスブルックのシンボルだ。次いで聖アンナの柱を探す。スペイン継承戦争の折り侵入したバイエルン軍が聖アンナの日に撤退したのを記念して建てられたもの。背後にノルトケッテがそびえる景観は印象的で、世界的に知られている。残念ながら山々は雲の中である。ホテルに戻り、急いで朝食を取り、チェックアウト。徒歩で駅に向かう。9時発のパリ行きに乗る。オーストリアを縦断しスイスに入る。途中は雪。アルプスの峰々が見えなかったのが残念である。

15時12分、バーゼル中央駅に到着。バーゼルはオランダの河口まで約800kmに位置するライン河河畔のスイス第2の都市である。ライン河を遡ってきた物資が陸揚げされる水上交通と陸上交通の結節点として、古くから栄えてきた。11世紀に始まり、数回の改築を経て現在の姿となった大聖堂。ステンドグラスの美しさに感動する。日曜日の午後。人々はウインドーショッピングを楽しんでいる。若者グループは大きなラジカセからボリュームいっぱいの音楽を垂れ流している。

翌朝8時30分発の特急でジュネーブに向かう予定であった。が、起きたのは何と9時。あわてて身支度。朝食もそこそこに中央駅に向かう。そして9時59分発ジュネーブ行きに飛び乗る。13時05分、ジュネーブ到着。周囲をフランスの山に囲まれ、レマン湖の南西岸に位置するジュネーブ。街のシンボルは、レマン湖で高く水を吹き上げるジェッドー(大噴水)。人口18万人余のスイス第3の街であるとともに、数多くの重要な国際機関が集結した都市としてあまりにも有名だ。カルビンを建学の祖とする約450年の歴史を持つジュネーブ大学を目指す。フランスの宗教改革者・神学者、カルビンはドイツでルターがおこした宗教改革運動の影響を受け、改革運動を始めた。取り締まりが厳しくなると、スイスに逃れジュネーブなどで活動した。正しい信仰は『聖書』だけにもとづくものであり、また職業を神聖なものと考え、「倹約・質素・勤労を重んじよ」と説いた。 やっとのことで構内でカルビン象を探し当てる。その眼差しは時代の先を見ていた。 ・・・・次号に続く