ベルンからチューリッヒを経由して南ドイツ、バイエルン州の州都ミュンヘンに到着。15時10分。時刻表どおりだ。人口は100万人を越えベルリン、ハンブルクに次ぐ大都市だ。ミュンヘンの名前は僧院(僧を表わすドイツ語メンヒ)に由来し、市の紋章は小さなお坊さんである。19世紀前半、ヴィッテルスバッハ・バイエルン王家の名君ルートヴィッヒ一世はミュンヘンをヨーロッパ屈指の芸術の都に造り上げた。

第二次大戦では45%破壊されたが、主な建物は再建された。ミュンヘン中央駅はとてつもなく大きい。工事中であることもあり、案内表示がわかりづらく、まごつく。何とか旅行案内所を見つけホテルを予約する。そして中心街を歩く。マリーエン広場に立つネオゴチック様式の建物は市庁舎。等身大の仕掛人形時計を見る人で広場は一杯になる。運良く17時に間に合う。拍手が起きる。夕食はホテルへの帰路で立ち寄ったスーパーマーケットの中にあった小さな食堂で簡単に済ませる。

翌日、地図を片手に市内を歩く。目的はアルテ・ピナコテーク絵画館。ヨーロッパでも屈指の美術館である。14〜18世紀古典絵画が中心。デューラーなどドイツ古典派の巨匠のほか、ラファエロ、ルーベンス、レンブラントなど世界的傑作がある。宗教画が目立つ。天国と地獄。死後の世界。生々しく、壮絶な絵画に疲労を覚える。  迷いながら中央駅に到着。12時58分発の急行に乗車。ハイデルベルクを目指す。ハイデルベルクは若者が集う古き大学町、オーデンの森からライン平野にネッカー川が流れ出る景勝地でもある。中世の家並み、赤砂岩の橋、山の中腹の古城といったロマンチックな景観は多くの詩人に称えられている。ハイデルベルク大学は1386年に創設されたドイツ最古の大学で、今も町には学生が溢れている。

16時59分ハイデルブルク着。駅構内の旅行案内所で安いホテルを探す。決めたホテルまでは少し距離がある。タクシーを使おうか思案していたら、やり取りを聞いていた親切なご婦人がベンツで送ってくれた。 チェックイン後、旧市街へ向かう。中央通りから80mの高さ、山の中腹に赤砂岩の古城が聳える。かってのプファルツ選帝侯の居城であったが、17世紀、ルイ14世のフランス軍により破壊された。その後何度も改修され、跳ね橋を渡って城に入ることができる。しかし、 時すでに18時10分過ぎ、残念ながら入城できなかった。

久しぶりにレストランで食事。11マルク。ホテル代30マルク。少しリッチな気分だ。観光シーズン真っ只中の景勝地は観光客で溢れている。日本人の団体ツアーご一行様が闊歩している。添乗員の持つ旗に導かれる集団にいささか嫌悪感をだく。俺は放浪の1人旅。いきがって集団とすれ違う。すれ違う際に聞こえてきた日本語が妙に懐かしく聞こえてきたのが皮肉だ。・・・・次号に続く