宿泊予定のホテルはシュタットベルリン、アレキサンダー広場に面した高級ホテルだ。日本で予約を済ませてきた。でも時刻はまだ12時前、チェックインはできない。荷物だけ預かってもらう。今日中に済ませなくてはならないこと。それは東ベルリンからモスクワまでの国際列車のチケットを手に入れること。まず、ホテルのロビーにあるサービスビューローを訪ねる。英語と心もとないドイツ語で入手できないかと尋ねるが、ライゼビューロー(ドイツ国営旅行社)の窓口へ行かないとだめとのこと。

アレンキサンダー広場のライゼビューローの場所を教えてもらう。ところが、長い行列の末窓口のたくましい女性の返答は「駅で買ってくれ」とのこと。自分の責任だけを果たすお国がらと一人で合点しながら、ベルリン東駅の窓口をめざす。切符リ場の女性は英語がわからない。必死にモスクワ行きの切符を買いたい旨をトーマスクック社の時刻表を示しつつ説明したが埒が明かない。とにかく切符を手に入れなければモスクワへ行けない。そして、日本へ帰ることもできない。ホテルに戻り、不安をいだきつつ眠る。

翌日は6時起き。7時にベルリン東駅に向かう。昨日とは違う女性が愛想良く迎えてくれる。そして驚くことにいとも簡単に売ってくれたのだ。奇跡だ。金額は91.5東ドイツマルク。 ホテルに帰り荷物をまとめる。急がなければならない。発車時刻は10時28分。モスクワまで1,892キロ、32時間を越える長旅だ。ポーランドに再入国。20時29分ワルシャワ駅に到着。  深夜1時、ポーランドのパスポートチェックを受ける。ソ連との国境が間近だ。そして3時、今度 はソ連のチェック。あらかじめ用意しておいた二重ビザを確認し、「スパシーバ」といいながらパスポートを返してくれた。深夜の入れ替わり立ち替わりの入出国審査は辟易だ。白夜の季節、外はもう明るい。眠りにつく。起きたのは12時。

それから更に7時間近く、ようやくモスクワに到着。インツーリスト(ソ連国営旅行社)が手配したのはレニングラードスカヤホテル。1か月半前に泊まったロシアホテルより小規模。でも歴史を感じる落ち着いたホテルだ。再びのモスクワ、明日は赤の広場、そしてレーニン廟を訪ねよう。 帰国まで残り3日・・・次号に続く