2泊目の朝、モスクワのレニングラードスカヤホテルの大きなバスタブになみなみとお湯を張る。湯気に曇った窓ガラスの向こうにモスクワの広大な街並みが広がっている。不要な荷物を整理してパッキングする。財布もだいぶ軽くなった。残金は日本円で4万円と少し。今日・明日の2日間だ。新潟から自宅までの電車とバス代1万円を確保。午前10時、フロアーの鍵おばさんに部屋の鍵を渡し、1階のロビーに向かう。
ロビーに日本人の姿は見あたらない。ソファ-に腰を降ろす間もなく、日本語で話しかけてくる中年男性。国営旅行社インツーリストの職員だ。 「イケダサン?」「Да(ダー)・はい」と答える。外に案内し、停まっているタクシーの運転手に「ドモジェドボ空港」と告げる。私は荷物を抱えながら後部座席に乗り込んだ。
郊外に出ると一直線の片道3車線の道路を時速100`を軽く越える猛スピードで突っ走る。両側はポプラ並木だ。空港までは約1時間。「Спасибо! (スパスィーバ)、до свиданая(ダスビダーニャ)」運転手に声をかける。 タクシーを降りるとまたまたインツーリスの職員が声をかけてくる。大きなガラス扉の向こうには ロシア人の喧噪が聞こえる。人垣を越えてインツーリスの職員が搭乗手続きをしてくれた。私は微笑み「до свиданая」と言う。・・・次号に続く