モスクワの「ドモジェドボ空港」を飛び立ったアエロフロートのイリューシンは無事ハバロフスク国際空港に着陸した、滑走路の舗装が傷んでいるのだろう、ずいぶん揺れる。到着口には例によってインツーリスの職員が待っていてくれる。搭乗客のほとんどがロシア人だから見つけ出すのは容易だ。東洋人はおろか日本人はどうやら私1人だけのようだ。タクシー乗り場に案内してくれ、運転手に「インツーリストホテル」と無機的に告げる。インツーリストホテルはアムール川の畔にある外国人向けの立派なホテルだ。チェックインを済ませ、いつもの鍵おばさんから鍵をもらう。部屋は清潔感に満ちている。荷物を整理してシャワーを浴びる。
そして街を歩く。5月10日、モスクワに向かうシベリア鉄道に乗るために来たハバロフスク駅を再び訪れる。既に2か月が経過しようとしている。この間の様々な出来事が思い浮かび、しばし感傷にひたる。数多いロシア正教会を目に焼き付けながら帰路に着く。ホテル近くの公園のベンチに腰を下ろしていると顎髭が印象的な青年が英語で話しかけてきた。彼は25歳の航空機関士。出身はグルジアのトビリシだという。
グルジアはカスピ海と黒海の狭間に位置し原油パイプラインもあり、経済的にも政治的にも重要な国である。また、複雑な民族問題も抱えている。彼は日本の文化に関心を持っている。 意気投合してホテルで夕食を共にする。ウォッカをいささか飲み過ぎた。部屋に戻ったのは午前零時30分。明日の午後零時55分発のアエロフロートが私を新潟に連れ戻す・・・次号に続く