トーク之三「サンタへのアドバイス」
Y『どうもKさん』
K はい、どうもー
Y えー……
K 今日はどうしたのかな?
N 今日はて(笑)
Y『最近ウチの子供が、ついにサンタクロースを信じなくなってしまいました』
K ああ、可哀相にねえ
Y『サンタなんていないんだ、と友達から聞かされてしまったそうなんです』
K 友達から聞かされたんやね
Y 余計なこと言う友達ですね
K 厄介な問題やねーこれは
Y『しかし私は……』ゴホン
K ピジョーッ!
N わはははは!
Y(無視して)『しかし私自身は昔サンタに会ったことがあるのです。十二年前』……
K ピジョーッ!
N ………
Y ………
K ……今のコレ、何の鳴き声か分かる?
Y なんやったん?
K 不死鳥やねん
Y「すぐ死んだな」って?
K ………
Y ………
N ………
Y『あれは私が十二歳のとき』
K おお、どうしたの?
Y『サンタは暇だったのか、私と三時間に渡って話をしてくれました』
K ほう
N 何事もなかったかのようだ……
Y『その時にサンタが言ったことには「ワシの人生も、Kさんがいなかったら変わっていただろう」とのこと』
K まあねえ……
Y『当時Kさんを知らなかった私が「誰なの?」と訊くと、サンタは「Kさんの五つのアドバイスがあったから今のワシがおる」と言うのです』
K うん
Y『今一度お尋ねしたいのですが、Kさんがサンタさんに与えた五つのアドバイスとは何だったのでしょうか?』
K ああー、まあねえ、あいつはねえ……
Y まず、サンタと会った事がお有りなんですか?
K 会ったって言うか、もう教え子
Y 教え子。どこで教えてはったんですか?
K サンタ……確か『日本サンタスクール』っていうのがあって。つまり『日本サンタスクール』っていうのがあんねん。そこの栃木校やったかな
Y ほう
K 全国に五校
Y 全国に五校
K 栃木に三校
Y・N(笑)
K 栃木に三校、神戸に二校やったかな
Y 偏ってるなあ
K そうそう。栃木に三校、神戸に二校の『サンタスクール学校』
Y なるほど……いま、名前変わったぞ!
K(笑)あ、そう?
Y そこは何なん?サンタ志望の子が集まる学校やの?
K いや、普通の高校
Y じゃあ何でサンタとか付いてんのん
K ならしてあげようかなと思って、サンタに
Y ……は?
K(楽しそうに笑っている)
N(笑いを堪えている)
Y えーと、ハガキの人が会ったサンタもそこの出身なんですね?
K うん、確かその子が二年生の時に受け持ったのかな。当時は二年生と三年生を同時に教えてた
Y はあ
K その子はけっこうやんちゃな子で。口癖は常に「サンタになりたい」やった
Y それ、やんちゃかな
K やんちゃやった。それはやんちゃな男の子やったの。俺が「なんでサンタになりたいの?」と訊いたらば「なんでか知らんが、サンタになりたい」と
Y あれか?よくある「なんかなる気がする」みたいな感じがあったんかな?
K そうそう、それそれ。なんか「ならなアカン気がする」みたいに言うててん
Y アホやな
K でもまあ、ええ子やってんよ。180cmくらいあったかな
N デカいな(笑)
K「まだ成長期や」言うてたけどな
Y ハガキに会った時の身長書いててほしかったな
K そうやな。ヨモダ君っていう子やった
Y(笑)名前言いよった!
N 名字言うた!
K で、三年生になって進路を決めてかなアカンやんか
Y うん、そうね
N K君もたいがいやけど、Y君も落ち着くの早いよな(笑)
K「おまえはどうしたいんや?」っていうのは前々から訊いててん
Y まあ本人は「サンタになりたい」言うてるわな
K その一点張りや
Y「サンタになりたい」
K「スパイの道もあるぞ」とは俺も言うねんけど
Y ははははは(笑)
K 本人はやっぱ言うわ、サンタになりたいと。しゃあないから俺はそれで話を進めたわ
Y スパイは絶対やめといた方がええわ
K あっちもあっちで大変やからな。で、俺は「サンタをするにも色々資格がいるぞ」とヨモダ君に説いたわけよ
Y 資格あんねや?
K それはまあ、輸送の……
Y(笑)あれか、ソリも特殊なのを使うからか
K まず立ちはだかって来るのは大型トラックの免許取得やな
Y 要らんやろ!
K「他にも色々・・・・・・」「いや、頑張る!」「大変な道・・・・・・」「うん、頑張る!」
Y みたいなやり取りがあったわけね
K で、サンタになったらしいねん、その子は
Y 淡泊に夢叶えたね
K いや、色々あったのはあったんやで?ただその子は、サンタになって悩んでるらしいという話が来た
Y ああ、夢を叶えたら、次が……
K そう、次が分からへん、とヨモダ君は言うわけよ。俺の話を聞きたいと。しゃあないなあ、と思ってヨモダ君に会いに行ったわ。そしてまず「人の話をしっかり聞きなさい」と教えた
Y いや、今まさに聞きに来てるやん
K いや、子供たちの
Y ああ
K で、なんか失敗したらしいねん。あのー、トシ君はガンダムのおもちゃんが欲しかってんけど
Y うん
K ヨモダ君はガンダムをあげちゃったんやって
Y(笑)すげえー!
K ヨシ君に「こんなん要らん!」って泣かれてもうてんて
Y ヨシ君って誰やねん
K ガンダムのおもちゃ欲しいって言うた子やんか
Y ヨシ君やったっけ
K ヨシ君やったで。ヨモダ君はヨシ君の涙を見て「俺が間違ってんねんな」って思ったんやって
Y 間違うてるわ、ガンダムあげてもうてんねんもん。まずもってどっから持って来てんな
K おまえ……まさか今、まずもっての「もって」と持って来ての「持って」をかけたんか?
Y そんな意図はない
K「話を聞きなさい」これがまず一つな
Y うん……ホンマにな
K 二つ目は「もっと身なりをキチンとしなさい」
Y ヨモダ君はどんな格好をしてたの?
K 黒のスーツに
N はははは!
Y ダメです、ダメです!
K 白のネクタイ
N はははははは!
Y うわあ
K そして金髪
N はははははははははは!
Y 日本には確立されたサンタのイメージがあるから!
K(笑)白い髭だけはバッチリやってんけどな
Y そこはキチンとしてたんや
K 鼻の下だけやけど
Y 胡散臭いだけやん
K だから「身なりをキチンとしなさい」と、これが二つ目
Y ヨシ君もそんなカッコの奴によう欲しいモンを言うたな
K(笑)でもヨモダ君は「まだ不安です」と言うてるわ
Y もう、あと三つあるやん
K 三つ目は「サングラスを外しなさい」
Y 身なりに含めよ!
K ところがヨモダ君は「いや、これが僕です」
N ははははは!
Y 腹立つわー
K「それがあるから子供は怖がるんだ」と俺は言うたわ。四つ目は「貯金をしなさい」
Y 結局ヨモダ君はグラサン外したん?
K 四つ目は「貯金をしなさい」なの!
Y ああ、それは重要やなあ!
K「奥さんもおるんやから」と
Y 妻帯者なんやヨモダ君
K「でもねえ、この仕事やってると出る一方なんですよ……」
Y・N はははは!
Y 収入ないんや!?
K「頑張ってるんですけどねえ、出る一方なんですよ……」
Y・N ははははは!
K ヨモダ君はその一点張りや。俺は「あのなヨモダ。おまえの仕事は子供に夢を与えることや。見返りを求めるな」と言うんやけど
Y 収入を得る方法を教えてあげて!
N(笑)
Y そここそヨモダ君をアドバイスしましょうよ!
K「おまえの仕事は子供に夢を与えることや。だから貯金をしなさい」
Y はははは、いやだから、入れる方法を教えてあげてってば!
K「でもねえ、出ていく一方なんでねえ……」
Y 分かる!分かるわ!分かっとるわ!
N ははははははは
Y ガンダムなんか買うてたらそらカツカツなるわ!
K「出て行く一方なんでねえ……」
Y しつこい!
K それが口癖やったなあ、昔からの
Y 昔からかい
K そして最後のアドバイス
Y おう
K「おまえはサンタをやってるけど……そろそろ就職しよう?」
Y 最初に言えやあ!
N せめて結婚の前には言ってほしかったよなあ……
Y・K ホンマやな(笑)