トーク之6「UFOキャッチャーの告白」


Y『こんにちは、Kさん』

K うおいっすぅ~

Y『クレーンゲームが非常に上手く、何でもワンコインで取ってしまうとウワサのKさんですが、一つだけどうしてもワンコインで取れなかったものがあると聞きました。それはなんだったのでしょうか』

K ふむ

Y クレーンゲーム、上手いんですか?

K まあ、上手さで言うと、やっぱりズバ抜けてるよね

Y ほほう

K 一回で二つ取れる時もありますよ

Y ああ、そういうテクもあるみたいですね

K うん、だから、上手いよ

Y なるほど。それで質問の件ですけども

K はい。これに関してはね、先に『いかにして、僕はクレーンゲームが上手くなったか?』ということを聞いてもらいたい

Y あ、先にあなたのヒストリーを

K 聞かせてあげよう

Y ありがとうございます

K 君にだけやで

Y アップしますけどね

K あれは木曜日やった

Y どの?

K 水曜日の次の木曜日やんか

Y はい

K 木曜日の夜、家に帰ろうと思ってたら、上からファーンとなんか飛んで来たのよ。円盤状の何かが

Y まあ円盤やろうね

N ははは(笑)

K 円盤状の何かが飛んで来たのよ

Y もう円盤て呼べや

K(笑)あれ、何やろうと思って。あれは円盤状の何なんやって。そしたらこう光が出て、俺を吸いこんで行くわけよ

Y どこに?

K 円盤……状のものの中にやんか

Y(笑)おお、緊急事態や

K 俺は吸い込まれて行くわけよ

Y UFOの中に!

K 円盤状のもの言うてるやんけ

Y(笑)円盤状のものに吸い込まれた!

K 中に人がおって

Y おお、あっさりと(笑)

K「任してあげる」と言うのよ

Y ……何をですか?

「この円盤状のものの操縦を君に任してあげる」と

Y なんでや!?

N ははははは(笑)

K ははははは(笑)なんでやろうな?選ばれたんやろな。彼らは「操縦を任してあげる」とまた言うのよ

Y UFOの操縦を!

K 円盤状のもの言うてるやんけ

Y ごめん(笑)円盤状のものの操縦を任された!

K「ただこれには条件があるぞ。めっちゃキツイぞ。ええんか?

Y ええんかて(笑)

K まるで俺が求めてたみたいなこと言うねん

Y 勝手な話やなあ

K でもまあ、ええかと思うて、俺も。就職決まってなかったし

Y(笑)円もらえるんか、その仕事

K「一年内に三十人連れて来てくれ」いう事やねんな

Y 誘拐やあー!

N(笑)

Y えらいこと手伝わされてんで、あんた!

K「そしたらこの船をあげよう」

Y ははははは(笑)それもまたどんな事情やねん

K なんかあるんやろな(笑)「それが出来たらこの船をあげよう」

Y まあ、色々とそこまでにはあるんやろけども

K こっちに降りて来る情報はそんなもんやわな

Y(笑)そうやな

K「一年は君に仮の円盤を貸してあげる。それでノルマを越したら本船をあげる」

Y ホンマどういう話なんやろなあ

K よっしゃやるぞと

Y あの……三十人さらうことに関して後ろめたさみたいなものは?

K いや、そこは……ええんかなと思うて

Y ええわけないがな(笑)

K だって就職決まんねんぞ

Y ははははは(笑)まあ、そうやな。倍率三十の会社入ると思ったらええか

K そうそう(笑)そんぐらいの会社やったら三十人分の人生蹴落として来てるやろ

Y まあ、ええかあ

K それで一日二人くらい捕まえてたのかな、最初のころは

Y 早い。コレ早いわ

K ノルマ越す頃には慣れてきて。その後はスピード上げて、一日四人ぐらいはいってたかな

Y いやいやいや……適当に三十人で打ち止めにしたら良かったんちゃいますのん

K(笑)まあ、それでテクを掴んだみたいなことなのよ

Y なるほどね

K UFOの中ってどうなってるか知ってる?

Y ん、どうなってんの

K アレの内部ってのはね……

N いまUFO言うたよな

Y(爆笑)ホンマや!

K(笑)いや……じゃあ円盤状のUFO

Y また言うた!

K 略してUFO

Y 無理やがな!

K ははははは

Y ……まあ、円盤の内部はどうなってるんですか?

K あほ、円盤状のUFOや

Y もう、どないやねん

K(笑)まず矢印みたいのが「右」「左」ってあんのよ。横にボタンが「1」「2」ってあって

Y 俺それ知ってるわ

K(笑)

Y ごっつ知ってる!見たことあるわ!

K まあ、それで動かすのよ

Y カンタン操作やなあ

K なんでこんなカンタンなんかは俺にも分からんよ。そこは関与してへんわ

Y ……まあ、作りに関与はしてへんわな(笑)

K ……うん(笑)

(二人、しばらく笑い続ける)

K ……「右行って、上」やねん、とにかく

Y はあ

K 全ての操作がな

 ふはははははは(笑)

K ターゲット見つけたら、ずーっと「右」押すのよ

Y 行きすぎたら地球一周せなアカンやん

K でも頑張るやん

Y なんやねん、それ

K ちゃうねん、一日目に二人捕まえてきたら、ものすご喜ばれてん

Y それが?

K ……嬉しくて

Y(笑)認めてもらえたことが

K 彼らの喜びがボクの力になるみたいな

Y(笑)彼らの笑顔が見たいから

K 見たいからな

Y どれが目なんかも分からんけど

K ふははははは(笑)……うん、愛する彼らの為なら、しゃあないなと思って

Y なに言うとんねん

K(笑)で、あるとき休暇を取ったのよ。ええかげん働き過ぎたから

Y はい

K とりあえずゲーセンに行ったら……見たことあるよな機械があんのよ

Y うん、みんなそっちを先に見るねん

N(笑)

K「UFOキャッチャー」って書いてあんねん

Y うん、みんな知ってんねんそれ

K「右」「左」「1」「2」言うて見覚えあるボタンもあるのよ

Y それめっちゃ楽しいねん

K ……(笑)で、まあ、中にある人形も気に入ったし、やろうかな思うて。そしたらまあ、面白いように取れるわけよ

Y なんせ経験あるからな

K(笑)経験あるからな。そこまでが「僕はいかにして技術を得たか」っていう話

Y なるほど

K で、本題ですけど……ええと、どういう質問でした?

Y『Kさんがワンコインで取れなかったものとは何ですか?』

K ああ、はいはい。あれは……千円かかったね。一回100円の時代やったから、10回かかったんかな

Y おおー、手こずったね

K けっこう大型のゲームセンターに行ったときよ。見たら「UFOキャッチャー」言うのがあって。俺は「なんやろ?UFOキャッチャーって?」と

Y そこからかい

K(笑)「今日はここ行こう」と思って。パッと中見たら、宇宙人みたいなのの人形が60個ぐらい入ってんねんな

Y びっしりと

K(笑)うん、直立不動で並んでるわけ。でも俺は「なんか見たことあるなあ、この人形」と思うて

Y なんでやろなあ

N ふ……(笑)

K なーんか見覚えがあると。これ取ってみようと思って。コイン入れてボタン押して、掴んだ、と思ったのよ。コレ3つ一気にいけたんちゃうか、ぐらいの手ごたえで

Y ふむ

K そしたら人形が……きゃーって言うて

Y きゃーって言うた?

K きゃーって言うた

Y ………

K ………

Y めちゃ怖いやん

K(笑)おかしいなと思って

Y おかしいなあ

K 磁石かなんかかなと思ってたんやけど、500円超えたあたりから……「これ、あの人らの?」と思い始めて

Y(笑)「連中の?」と

K「あの人らの関係者かな?」と。700円くらいまで行ったときにパッと後ろみたら……おんのよ

Y 連中が(笑)

K サイズ大きめの人形が

Y いや、奴らやろ!

K めっちゃ小銭持って

 はははははは!

K 両手パンパンに持ってんねん、小銭を。そんなんが三人ぐらい並んでんねん

Y おおお……(笑)

K なんやあいつら、とか思いながら8回目のチャレンジ。これもミスってもうて。したら後ろはガッツポーズですよ

Y 小銭ジャラジャラの手を握りしめて(笑)

K で、9回目。これは穴の近くに運んだところで落ちたのよ。ここまで来ればいけるかなと思って。で、10回目でようやっと穴に落とした

N うわ、取ってもた!

K したら後ろは号泣ですよ

Y 察してやれやー

K 俺はそれを持って帰ったけどね。だって1000円かかってるもん

Y まあな(笑)

K んで俺が機械から離れたとたん、後ろのやつらはダッシュで突っ込んでって

Y 持ってかれた奴は諦めたんやな

K「待ってろ!待ってろよ!」言いながら

N(爆笑)

K そしたら、さっきあれだけ逃げ回ってた中のやつらが全員手を伸ばしてたね

Y 我先にかいな

K 我先にやな(笑)クレーンにガバガバ抱きついてたわ

N ははははは

Y なるほど(笑)……それがクレーン名人のKさんを手こずらせたものなんですね

K はい

Y ……ちなみに、獲得した人形は元気にやってます?

K うん、きのうまで動いてたよ

Y はい、では、また来週―!

K はーい

N はははははははははは