第三回之一「デパートに刺激を」


オープニングテーマ:『アクション仮面賛歌』(作曲:荒川敏行)

Y はいこんにちは

K どーもー……これ(OP)えらい久しぶりに入れたな

Y 要るかなこれ

K なんやろ、たまにあって時々ないみたいな

Y ほっとんど無かったで、これまで

K 見る人に聴こえる訳でもないのにな

Y ははははは(笑)

K 俺らの気持ちを区切るだけや

Y まあまあ

K ケツに歌もってくるのも無いやんか。どないなったんやアレ?

Y あれもすでにウヤムヤや

K ウヤムヤやからなあ

Y トークやなんや言うて、収録なんかただダベってるだけなんか、

僕らにも判断ついてないのが挟まってるからね

K なあ(笑)

Y しかしまあ、もう2008年も終わりですよ

K 終わるねえ

Y クリスマスとかどうでした?

K クリスマスは特になんも無かったなあ

Y 無いか。無いわな、こんな不況下に

K うん……あのさ、これからデパートに行くやんか

Y デパート?

K 三十日ぐらいになったら。買い出しに行くやんか、デパートに

Y ああ、そういうこと

K けど、あれって家族で行っても盛り上がる時と盛り上がらん時の……
  なんやろ、差っていうか

Y(笑)まあ……あるわ。盛り上がらない時があんねんな

K それそれ。それはいかがなものかという話やねんけど

Y どうやったら盛り上がるんやったか必死で考えるねんけど……

K 結局よう分からんでしょ

Y ええモンをカゴに入れたらいいって話でもないしな

K そうそう

Y「うわあ、ロブスターやんけ!」とかそういう問題でもないわ

K もっとさみしいのが「掃除してるから買い物行ってきて」っていうパターンな

Y うわあ……(笑)

K これはさみしいで

Y「コレ買おうや」とか「そんなモンいらんやろー」とか……

K そんなやり取りもないからね

Y さみしいな

K もう決まってるからな

Y レールが敷かれてるわ

K そんな時にやっぱ……刺激のあるデパートが欲しいやんか

Y ……なんですか、刺激のあるデパート?

K 刺激のあるデパートです

Y この度は突然のことで……

K いやいや。もうそんなんええねん

Y(笑)そこまで行くと店次第ですね

K 店次第って言うか……まあ、ちょっと変なトコ行くと……

Y 変なトコ行くと

K 性交渉があるでしょ?

(頷く)

K うん。性交渉があるでしょ、で、あれはSMに分かれるやんか

Y うん……あ、え、なに言うてるんですか?

K(笑)だから、人間はそこでは……

Y え?なに言うてるんですか!?

K 人間にはSとMがあるやんか!

Y(笑)はい、はい、ありますけど

K 受け取る側と与える側があるでしょ

Y ちょっとデパートはこっち置いとくで(置いといて、のジェスチャー)

K 与える側ちゃうな……受け取る側と攻める側があるでしょ

Y はい、はい、ありますね

K 言うたらなんや……ピッチャーと……

 キャッチャー

K ありますでしょ

Y はあ、ありますね

K そこをデパートに取り入れたらもう……

Y はい

K『SMデパート』ですよ

Y 難しいですね!

K いやいや。中は遊園地みたいになってんのよ

Y エンタープライズなんですか?

K っていうか、遊園地の入口あるでしょ?あんな感じのがあるのよ、まず

Y あのグルグル回る入口が

K そうそう。まず入る時に、係員が訊いてきますから

Y なんと?

K「お客様、SとMのどちらでしょうか」

Y もう申告なんですね、そこは

K 申告しましょう。申告というかまあ、選択かな。好きな方を言ったらいいんです

Y 分かりました

K まずSの人コースから行きましょう。Sで入ったら、もう中は全てが「M」なんです

Y 全てが!(笑)

K あまねく「M」ですから

Y それはなんなの?それぞれ入口があるってこと?

K そうですそうです。建物が「S棟」と「M棟」に分かれてる訳ですね

Y なるほど。中は真っ二つで

K あ、売ってるモンは一緒よ!

Y(笑)ああ、はい

K そこはね!

Y そこはね(笑)ええと、S棟はSの人が入るの?Mの人が入るの?

K「S棟」の店員は受ける側です

Y ああ、もう完全に物欲しげな眼をしていると

K そうです。エスカレーターなんかもう……あれやからね

Y 踏むとこがね

K 店長がもう

Y 店長が!(笑)

K ステップに横たわって「踏んで」みたいな感じです

Y え、そんな感じなの!?

K そんな感じですよ。店員一同お待ちしております

Y 踏んだら?

K「ああ……いらっしゃいませ~」

Y(笑)そんなマットあるけど

K こっちが先ですから

Y さよかい

K ちょっと耐えてから言うからね

Y「……うぅ、いらっしゃいませ~」

K そうそう。そんなんが1階から5階まで

Y 嫌やわ

K(笑)まあまあ、全部の段がそうじゃないですけどね

Y あ、横たわってない段もある訳ですか

K そりゃそうです。2段に1つくらいは空いてます

Y「いらっしゃいませ」の嫌な人はここに立てばいいのね

K それをしたとしても、店長は興奮してまうねんけどな

Y ?

K それはもう「放置プレイ」ですから

Y(笑)それはそれで成立なんや

K 結局よがられてまうわ

Y うわあー……

K 買い物にいざ入ってもね、歩いてたら着いて来ますよ。

後から「あのー」言うてきます

Y 積極的なMやなあ

K「私を!」ですよ

Y はい、アピールが来ますね

K そこはサービス業ですから。彼らも精一杯のご奉仕を狙って来ますわ

Y ははははは(笑)スキあらばね?

K あわよくば「どうですか?」と来ますから

Y はい

K「結構です」と言いましょう

Y いいの?

K じらしましょう。これを挟んだ方が彼らは喜ぶんです

Y なるほど(笑)

K また、そういう感じで勧めて来るのは飲み物の場合が多いですから。

これをバーンかけてやったらもう……

Y 天にも昇る!

K(笑)嬉しそうなことったらないです。

コーヒーやらバーンかけて、そこで「さあ、飲めよ」と

Y そしたら「ああ、ありがとうございますぅ」と

K うん。そんな感じで「S」は捌きましょう

Y「こんなに真っ黒にして頂いてありがとうございますぅ」

K(笑)おまえ……なんか真に迫ってて嫌やねん

Y え!?そう!?

K ラインってもんがあるから

Y すいません

K デパートを性交渉と繋げた俺が言うのもナンやけども

Y ははは

K 次「M」行きましょう

Y Mの気分で行く方ですね

K 入口で「M一枚」って言いましょう

Y M一枚

K「M二枚」でもいいけどね

Y それはええがな(笑)何人で入るかはそれぞれやろうて

K「M五枚」でもいいですよ

Y おお、家族やなあ

K(笑)まあ今回は一枚で行きましょか。まず自動ドアがめちゃくちゃ速いです

Y うわ、うわ(笑)

K 開かない時もあります

Y 挟まったら店員はめちゃめちゃ笑うしね

K(笑)すぐに近くに寄ってきて「どうしてほしい?どうしてほしい?」訊いてくるわ

Y ははははは、いや、開けてくれよ!

K 開けるためのボタンはあるんやけどね

Y これもギリッギリの位置にあるからな

K(笑)ギリッギリやねん!

Y ギリッギリやわな

K ホンマに届くか届かんかの所や

Y 店員はちゃんとスイッチの付いた機械持ってるねんけどな

K そうやねん。これをずっと手でいじりながら「どうなの?どうなの?」訊いてくる

Y(笑)「どうなの?いけるの?あたしが押すの?」

「ボクが押しますう」

Y(笑)

K「グ~!バン!」いうて、やっとのことで入店ですよ

Y いらっしゃいませ~と

K エスカレーターは木馬です

Y うわああ、痛い!

K ここセット・オンで稼働開始ですから

Y 若干上下に揺れてるわな

K メリーゴーランドっぽい感じで

Y 楽しい音楽も流れて

K それはないです。館内放送では「まだよ!まだよ!」てお姉さんがずっと言うてる

Y(笑)いつもは手すりをつかめと言うてるあの優しい声が!

K やや恍惚として

Y「まだよ!まだよ!」

K 時々「足りないわ」とか言うてボタン押すみたいな音がする

Y 上から見てますね

K 苦しくて「うう~」言うた所で「それがどうしたの?」言われますから

Y 慈悲なしやな

K もうガンガン言葉責め

Y かといってエレベーターのドアは入口と同じことやろうし

K(笑)自分の階に来ても、まあドアは開かないですよ

Y「開かないんですけど……」

K「それがどうしたの?」て中からエレベーターガールは言うからね

Y ちょっとだけ開けて

K そう、目が見えるぐらいのスキマから「なんなの?どうしたの?」って。

でも最後は「分かったわ」言うて「開」ボタン押してくれるわ。

そしたらやっと手が入るぐらいだけドアが開く

Y それでもそんなモンなんや

K いや、ほんまにほんまに

Y ほんまにほんまに(笑)

K 自分でやるしかないわ。必死で動かしてる間はずっと中から

「どうしたの?それがどうしたの?」言うてくれる

Y 開けてくれや!

K やっと開いたらすぐさまボタン押す。

そしたらせっかく空きかけたエレベーターがピューン上に行ってまう訳ですよ

Y え、なぜ?

K「どうしたの!?」

Y(笑)訊いてきた!

K 館内放送に切り替わって

Y ははははは

K「どうしたの!?どうしたの!?」そっちから訊いてみてや

Y「あの、乗りたいんですけど……」

K「それがどうしたの?」

Y(笑)

K「上りなさいよ」

Y「いや、でも……」

K「なに!?反抗する気!?」すぐ係の人が来て「パチーン!」やられる

Y 係の人がおんねやな

『広告の品』で

Y わはははははは

K 折込チラシのやつで

Y「売れてます!」のやつで(笑)

K「仕方ないわね」言うてまた戻って来てくれんねんけど、

そしたら扉が和室っぽくなってんねん

Y ……フスマになってんねや?

K んで乗ったらまた閉まらへんねん

Y もう、面倒やなあ!

K エレベーターガールはボタン押さんと、これをじっと見てるわけ

Y「あのう、どうしたらいいんでしょうか?」

K「丸いやつ見えてるでしょ?」

Y 丸いやつ?

K「取っ手見えてるでしょ?」

Y ……ああ、フスマのね?

K「閉めなさいよ。そこは手動なのよ」

Y「分かりました……シャーッ」

K ちょいちょいちょい

Y なによ?

K なに閉めてんの

Y なんで?

K 閉まるワケないやんか

Y なんでえな、いま手動でやれ言われたんやんか

K 手動なんかウソやがな

Y(笑)ウソかい!

K そこはもうプレイの一環やんか。自動のもんを手動で閉めろと言う

Y 負担かけてくるなあ

K そこはご奉仕ですよ

Y お客様も満足かいな

K(笑)目指してますから、そこは。客が「ウ~!」、エレベーターガールは「まだよ!」

Y「ウ~!」

K「まだよ!」

Y「ウ~!」

K「もっと!」

Y「ウ~!」

K「足りないわ!」

Y(笑)いまボタン押したやろ!

K さらに重くなったドアを!

Y なんとか客は閉めました!

K「足りないわ!」押したらドアがガー開く

Y もうええわあ!

K(笑)そう?もういい?

Y もうええわ!もうここでは満足したわ!

K あ、そう? じゃあドアは閉まりましょ。エレベーターガールが「何階へ行くの?」

Y「3階にお願いします」

K したら5階に行くわけですよ

Y まあ基本やな(笑)

K「なによ?」

Y「あの、3階って言ったんですけど……」

K「分かったわ」

Y 今度はどこなん

K 2階

Y おしいな

K「なによ?」

Y「3階なんですけど……」

K「分かったわ」言うて、あとは3、2、3、2と

Y 焦らすねえ

K 焦らすやろ。ここはもう「あの、5階って言ってるんですけど……」って、

Mやけど強めに言いましょう

Y このまま3、2やってても進展ないからね

K そう。買い物したくて来てるからね、やっぱり。

家族に「早う買って来い」言われてて、

でもこんなんで時間取られてじりじりじりじり、でもこんな感じもええやないかって

Y なに言うてんねん(笑)

K(笑)そんな訳で、強めに言うのよ。そしたら4階に止まるねん

Y まだやるんかい!

K ちゃうねん。4階に止まって、ちょっとだけドアが開くわけよ

Y なにがちゃうねんな?また嫌がらせされとるがな

K ちゃうねんて。4階でボタン押したやつがおんねん

Y なんや!しゃあないなあ

K 4階の客も必死に開けようとするねんけど、バーンて閉まってまうのよ。

そのままエレベーターは5階に着く

Y っていうか、それはもうその時だけの話やんけ。毎回あるわけちゃうねんから

K 毎回あるがな

Y 毎回あるんかい!?

K 降りる階の一個手前でそういうアトラクションがあんねん。

これにもちゃんと係の人がおる

Y「M」だけなんや、手が込んでんなあ

K(笑)いや、サービスの質としては均等なつもりなんですけどね?

Y そうですか

K だから、乗る前にエレベーターだけ上がって行ったのもそういうことなのよ。

降りる階の一個前に係の人を置いて来てんねん

Y なるほど……(笑)

K で、5階に来ると

Y やっと来ると

K そこはオムツコーナーです

Y 全部が?

K 全部がオムツ!「全漏れタイプ」の!

Y あかんやろ!なんやねんそのオムツ!?

K「早熟タイプ」みたいなんもあるわ

Y 上から看板が吊り下がっとんのか

K そうそう(笑)看板が「全漏れ」「早熟」って並んでるわけよ

Y 基本として店員は訊いても教えてくれへんし

K ははははは(笑)そうやねん。で、客はこれを見て「あっ、階間違えた」と思うのよ

Y オムツを買いに来たわけじゃないんや?

K そう。本当はトイレットペーパー買いに来たんやけど……

まあ、なにを求めてどこの階に来ても、そこはオムツコーナーと化してるわ

Y エレベーターガールが時間稼ぎしてる間にか

K 大道具さん大集結ですよ

Y ホンマ手が込むなあ「M」だけは

K(笑)そしたら近くに、下に降りる階段があるわ。

看板があって、行きたい場所へはこっちって書いてある

Y 客はその階段に行くわね

K この階段自体はあんまりS的ではないのよ

Y そうなんや?

K なんかフワフワしてるねん。それで下に降りたら、そこもまたオムツコーナー

Y(笑)二階に跨るんかいな

K うん。それで店員に訊いたら「もう一つ下になります」って

Y そこはちゃんと答えるんやな?

K そこはちゃんと答えんねん(笑)

で、階段に向かうときに「お待ち」って館内放送が掛かる

Y 出た、館内放送!

K「いいもの見せてあげるわ」って言うのよ

Y おお、蠱惑的やなあ

K「3階にいらっしゃい」

Y おお、ちょうど行くとこや

K それで降りてったら……なんや女王様みたいなんがいて

Y 来たね!

K 来たよ!赤い蝶のマスク付けて

Y ラメまぶしたやつ付けて

K 鞭持って待っとるわけよ

Y 来たねえ

K 後ろにはトイレットペーパーが山積み

Y ここまで来たねえ

K 来たやろ。でもなんか変な匂いがすんねん

Y 変な匂いが

K うん……トイレットペーパーは全部、ヒタヒタに湿っとんねん

Y うわあ~!

K「どれでも好きなものをお持ち帰り下さい」って女王様が言うのよ

Y あはははははははは!敬語なんや!?

K 敬語やねん。ここだけ接客態度ふつうやねん(笑)

Y びっくりするなあ

K でもここは「湿ってるのはちょっと……」って一応言わなアカンわ。

俺はMやけど家族はMちゃうねんと

Y ホンマやな(笑)嫁なんかはSやもんな

K だから合っとんねんと

Y ははははは

K「これ持ち帰ったらちょっと……」言うたらもう

「なに!?歯向かう気!?」って言い出して

Y 本性を現して

K ピシーン!

Y うわあ、鞭食らったね

K そしたらトイレットペーパーに火が点いてもうて

Y そんな具体的なことが起こるの!?

K(笑)鞭ってあれ、使い方によっては音速超えるからね

Y だからってなんで火が点くねんな!?

K なんでかっていうと、トイレットペーペーに染み込んでたんはガソリンやったのよ

Y ………

「女王様の巧妙な仕掛け」や

Y(笑)いやいやいや……

K「どれでも好きなのを取って行きなさい」と、

燃え盛るトイレットペーパーの山をバックに女王様は言うのよ

Y もうわけわからんわ

K「これなんかいいんじゃないの」言うて2個ぐらい投げてくれるのが、なんやろ……

あんまり上手いこと油が掛かってなくて、湿ってるけど湿ってないみたいな

Y 分かるで。まだらになって波打ってるやつやろ

K(笑)それ!

Y 上半分キューって萎んでるのに、下半分はもうガバガバんなってもうて(笑)

K はははははは(笑)

Y そんなん買って帰ったかてしゃあないやろ!

K そんぐらいのインパクトで買って来られたら文句言われへんやろ!

焦げ焦げの親父がガバガバのトイレットペーパー抱えて帰って来とんねんぞ

Y(笑)そうやけど!

K 怒ろう思ったら怒れるし、ちょうどええやんか

Y やっぱり怒るんやないか!

K そらそうや、トイレットペーパー買って来い言うて出した親父が、焦げ焦げの……(笑)

Y 嫁ブチギレやんけ

K でもそれで「ピシーン」出来たら、もう夫婦は円満やろ?

Y「なにしてるのよ!ピシーン!」

K「ぶるるるるるる!」

Y そこで成り立ってんねやったらもうデパートは普通でええやないか

K(笑)そうかなあ?