第三回之二「アナタの自由」


K やっぱり、そのー

Y はい?

K オトナの付き合い、みたいのがある訳よ

Y はい?

K ……俺みたいに、こう、働いてるとね

Y ああ、はい。働かれてますもんね

K うん。でまあ、夜に遊んだりするねんけど、やっぱり殆どがオッサンやから、
  大体は飲みやったり、その……

Y なんやねんな

K ……18禁やったりするのよね

Y あ、なるほど……(笑)

K 今から18禁の話をしますけど

Y しますか

K たまにはね、こんなんがあってもいいんじゃないかと

Y はあ

K その、中身みたいな

Y ……中身?

K(笑)あるじゃないですか、言葉にできないみたいなこと。今だから話せる、みたいな

Y 今だから話せる、ね

K 実録、みたいな

Y ははははは(笑)

K まあ、ある夜の話、オッサン4、5人のグループにくっついて飲みに行ったんよ

Y 職場の

K 職場の。それで結構終わった後も時間が余って。
  みんなで酔いながら「どうしますー?」言うてたら、割と金持ちのオッサンが言うたのよ

Y ふむ

K「行ってまお!」

Y(笑)ああ、はい。行ってまいますね

K イメクラなんやけども

Y ……ちょっと想像とズレたわ

K あ、違った?

Y うん、割とすぐに修正できたけど……あ、イメクラなんや?

K なんか好きらしくて、そのオッサンが。
  その辺の事情はまあ、聞くも聞かぬもアナタの自由みたいな話なんやけど

Y まあ、別に聞きたくはないわな(笑)

K うん、タイトルは「アナタの自由」でええと思うんやけど

Y とにかくそこへ行った訳や

K ボクは正直イヤなんですわ

Y(笑)まあね

K なんかね……まだコドモと言われればコドモなんやけど、
  ……そういうトコロではしたくないみたいな

Y(笑)そこはもう、一つ完全に角を曲がってもうてるからね

K 分かる?

Y 分かるよ。例え一歩踏み込んで行っても、分岐でちょっと辺りを見回したいわ

K そうやねん!

Y いきなり奥の暗がりへ消えて行きたくはないわな

K(笑)それで、誘われるモンやから入るやんか?

Y 誘われたらなあ、先輩に

K そしたら、アソコは色々なパターンがあるのよ。やれ教師や、生徒や、医者とかね

Y はいはい

K 一番上の人は「オレ教師行くわー」言うてササッと行って

Y 暗がりに

K ササッと暗がりに消えて。俺も「どこ行くー」って訊かれて。
  あの仕組みは……ええと、なんて説明したらええんかな

Y ドラマで見たことあるのは、廊下に個室のドアがバーって並んでて、
  設定ごとに「○年○組」とか「独房」とか表札が掛かってたけど

K ああ、まあ、そんなんをイメージしてもらったらええわ。
  そういうのがズラーっとあって「何するー」と訊かれたわ

Y 訊かれたか

K 何しますーって

Y「何しますー?」

K「ええっと、じゃあ……ボクも教師で」

Y わははははは(笑)教師行ったんかい?

K 独りは怖かってんもん!それに全然乗り気ではないですよ、断っとくと!
  もうパッと入って、テキトーに楽しんでる感じで終わらそうと思ってたんですよ。
  なんせ暗がりに行きたくないんやから

Y 暗がりに独りは耐えられないから

K バッと入って行ったらそこは、なんやったかな、確か「4年2組」で

Y 小学校やん!

K そうそう。いや、色々あんのよ、他にも「5年3組」とか「6年1組」とか

Y 高学年やん!

K ははははは(笑)いや、そうやってんもん

Y 小学4年で教師にって……

K(笑)まあまあ、入ったら教室みたいになってんのよ。
  机が3、4個、何列かに並んでて。教壇には先生が立ってて

Y(笑)……うわ、なんか面白いなあ

K 名前は入口で言うてあるのよ、前もって

Y 出席番号はもう決まってんねやな

K ボクはその……正直なとこ本名は書いてないのよ

Y そうか、そうやな(笑)

K「スズキ」って書いたんやけど

Y(笑)スズキのドラマなのね

K「スズキくん、席に着きなさい」って先生が言うて。
  ちょっと厳しい感じで「もう授業の時間ですよ」って。
  ボクは「ああ、すいません~」って言いながら入って行くねんけど、
  なんやろ、なんか、この時すでに……

Y ちょっとオモロなって来てんねんな

K(笑)そう!なんかワクワクして来てんねん

Y 言うたら教室コントやもんな(笑)

K「Kくん、早くしなさい」

Y スズキくんね

K「スズキくん、早くしなさい」言われて。なんかの時間ですよーって。
  そこで一時間ぐらいあってんけど、その次に移動教室があんのよ。廊下出て並んで……

Y オモロイなあ

K(笑)で、着いたんが体育館みたいなとこ。広いワケでは無いんやけど

Y はいはい。書き割りというか、内装の感じが

K 体育館みたいなとこ。そこから体育の始まりですわ

Y うわあー、面白そう。内容は?

K 跳び箱ですよ

Y ほおー

K 2、3段くらいの

Y わはははははははは(笑)

K(笑)

Y ええわ、めちゃくちゃオモロそうやわあ

K で、先生が「お手本です!」言うて跳ぶねんけど

Y おお

K ミニスカみたいなん履いてんねんけど

Y はい(笑)

K もう……ぜんっぜん跳べへんのよ

Y わはははははははは(笑)

K なんか、分かるやろ?

Y 分かる(笑)分かる、そういう風にするわな

K そうそう(笑)

Y そういう手筈やわな

K 3段くらいの跳び箱やのに、先生、頭から行ってもうて(笑)

Y 大変や(笑)

K ボクも大変や思うて駆け寄ったのよ。そしたら……ちょっと、来てみて?

Y「大丈夫ですか!」

「イヤ!なにするのよ!」

Y(笑)なんもするかあ!

K なんかちょっと、そっち方面に行くのよ先生は

Y 行くわなあ(笑)まあまあ……

K そういうお仕事やから

Y チャートは決まっとるからね

K そう(笑)「大丈夫ですか!?」だけで「なにするのよ!」言われて。
  触ったことで反応したんかな

Y やろね。先生としては「そういうつもりで来たのね、ハイこう行くわよ!」と

K(笑)そしたら先生「それならいいわ」ってツンツンし出して。
  いきなりガッとこっち近づいて来て

Y ………(笑)

K ………(笑)

Y ツンツンし出して、来たんや?

K 俺も「ナニコレ」と思って

Y はははははは(笑)

K こっちが必死で「いや!なにするんですか!」言うてもうてる(笑)

Y(笑)

K「ならいいわよ」ってガバッと来るわけよ

Y「いや!なにするんですか!」

K そしたら「分かったわ」って

Y「分かったわ」?

K 抱きつくの止めて「ここじゃダメってことね」って

Y(笑)納得した!

K また、またなんかもう……(笑)

Y「あ、この道はナシなのね」と。そっちも織り込み済みなんや

K そう!(笑)

Y 幾つもの分岐路を、先の先まで……

K なんかあるんやろな!

Y 調べ尽くしとんねやろな!

K「このパターンなのね」みたいな

Y「Bに行くのね」みたいな

K それで先生は、なにかを静かに納得してるのよ。
  こっちを見ながら「ここではダメなのね」って言うから、
  ボクは「いや先生、なんか違うんです」と

Y 生徒の方から「そういうことじゃないんです」と(笑)

K「じゃあどういうことなの?」言うから、
 「ちょっと待ってくれ」って思わずタメで言うたんですよ。
  そしたら「先生になんて口をきくの!」って……

Y ああ、もう、ややこしいな!

K 僕は「あっ、ゴメンなさい」言うて

Y 探り合いやな。もう「この子はどこへ行きたいの?」と

K そうそう。相手もプロやから、色々と考えてるんやろな

Y なんかもう……行きたいわあ

K(笑)

Y ちゃうねんで、そういうワケではないんやけども……(笑)

K で、なんか教室に戻されんのよ。先生はなんか考えたんやろな。
  戻った途端に迫って来んのよ

Y 教室で

K「たぶんここがいいのね」という結論やったんやろな

Y「机が必要だったのね」と

K とにかく僕は「先生、やめてくれ」

Y ははははは(笑)

K 僕はこうこう、こういうワケで来てるんやと……そのつもりがあんまりないと

Y 説明したんやね

K 成り行きで「先生」になったんやと。とにかくやる気がないんやと

Y 客としてメチャクチャかも知れないが分かってくれと

K「先生、やる気はないんですボクは」と。なんかもう「先生」って呼んでまうねんけど

Y すごい。すごいわ

K そしたら先生も「分かった」って言うて、そこから一時間ぐらい二人っきりですよ

Y おおー……(笑)

K 僕は席に座って、先生は教壇とこ立って……先生もさっきと違うヘンな感じやねん

Y 何していいか分からんからなあ

K いろいろ探したったのに、コイツ(自分を指して)が「全部あかん」て言うもんやから。
  お金はもろてるし、もうええわみたいなんもありつつ

Y もう受け持ちやないしね

K そんな感じのヘンな空気やねん……なんもしてないのによ?

Y ははははは(笑)なんかするのが前提なんがすごいわあ

K それで一時間経って、まあ、終わりやんか。立って「それじゃあ……」みたいな感じで。
  向こうも「うん……」って

Y なんも……なんもしてないのに!(笑)

K それで出て来たら、なぜか他のみんながおらんのよ。探しに行こうと思って。
  その、フロアに札が掛かってんのよ。どこにおる、どこにおるってのが出てるわけ

Y はい

K 表示のトコ見に行ったら、そこにもおらんのよ。
  あちこち探して、さっき入った体育館のとこに入ったら……みんなおんねん

Y みんな?

K 全員。さっきまで一緒におった先生も含めて。
  なんか……変なプレイご希望みたいになってんねん

Y ………

K ああ、そういう世界もあるんやなと思って

Y(笑)なんやそれ?

K タクシー券もらってたから、そのまま帰って来たんやけど

Y ちょっと待てや、なんやそれ!

K そんなもん……知らんよ

Y(笑)

K でも、あれがイメクラという世界なんやろな

Y それは……面白い世界やなあ

K 面白いわ

Y コントを売ってる場所なんや

K うん、ホンマにそんな感じ

Y 金だけ払って「好きに展開して下さい」と

K そう

Y「エロも選択肢にあります」ってことでしょ?

K そうそうそう(笑)

Y いいなあ、なんか色々ありそうやな

K ある。絶対あるで

Y マニュアルを本屋で売ってたら買うわ、たぶん

K ははは(笑)

Y エロが無かったら行きたいなあ……でもそうか、無いと出来へんか、そんなとこ

K まあな。やっぱりエロかったのはエロかったし

Y そういう場所をそういう風に売ろうと思ったら、エロも入れなアカンねやろなあ

K それはな

Y あってもいいのになあ、そういう場所は

K まあなあ……

Y ただまあ、センスない奴が行ったらどうしようもないけどね

K それはもう、完全にアカンわ

Y なんせテクニックがいるわ……オモロいなあ、しかし

K オモロかったけど、俺としてはもう行きたないわ

Y うん。そういう道は行きたないけど、でも魅力的やな

K そんな訳で、それがボクの初めてのソーププレイでしたけどね

Y そうかあ……

K 世界は色々あるのよ

Y あるんやなあ

 

(サザンオールスターズ『勝手にシンドバッド』)

 

Y あっちの世界は色々オモロいことがありそうやもんな

K エロはな。オモロいわ

Y オモロいな

K うん

Y もう、イッコ上に行ってもうてやってるからな

K そうそう。先生なんか凄かったし

Y(笑)

K ホンマにホンマに。オモロかったわ

Y なあ

K アレはな、とりあえず一回行った方がいいかもな

Y 勉強になるよな

K なる!

Y ホンマに勉強になるよなあ

K 違う方に入ってもうたらアカンねんけどな(笑)

Y うん……うわあ、でもやっぱり、僕は行かんのやろなあ……

K いや、そのうち二人で(笑)

Y ははははは

K 今は言うてもコドモですから、ボクら。二十年か三十年して、そしたらよーく考えて

Y ヘンな気だけは起こさんようにして

K 何があっても、真っ直ぐ生きましょう

Y はい、そうしましょう(笑)