第三回之四『仮面ライダー、じつのところ』
K オレね、ヨン様見てたらすごい思うんやけど
Y はあ
K あれ?ヨン様ちゃうわ……
Y なんやねんな
K 仮面ライダーや
Y(笑)全然ちゃうやないか!
K どっかでヨン様に引っ掛かってもうてん
Y どういうルートで落ちてきたんですか
K「ヨン様」「加勢大周」「若大将」ときて、誰やったっけ、仮面ライダー1号の人
Y「藤岡弘、」
K そうそう、それが、なんか似とるやんか……(笑)分かるやろ?
Y 分からんわ!芸名とニックネームもごちゃごちゃしてるし
K いや、パチンコのCM見てたら混ざってくんのよ!
Y そうかいな
K で、俺が言いたいのは、藤岡さんとかの頃は良かったけど、今のライダーって正直よう分からんことなってるやんか
Y そうねえ
K この前チラッと見てみたけど……なんやったかな、ライ何とかですわ
Y 僕もよう知らんけど、そんなんやってんのかな
K もうね……おまえら仮面ライダーのこと知ってんのかと
Y そら知ってるやろと思いながらも、まあ言いたいことは分かるわ
K なんで本郷猛が改造されたんかとか、そもそもの仮面ライダーが持ってる色んな概念のことをね、彼ら若手俳優はちゃんと理解してんのかなあと思うわけですよ
Y「仮面ライダー」の枠組みがもう分からんことになってるからね
K そうそう
Y「ウルトラマン」ならね、もう言い逃れができないじゃないですか
K「おまえウルトラマンやな」やもんな
Y「そうです、私はM78星雲の、光の国からキミらのために……」ってすぐ自己紹介いけるやんか
K そうそう。でも仮面ライダーはもはや「バイク乗って走ってくる」だけやからね
Y 最近もはや電車もアリやからな
K はははははは(笑)
Y なるほど、そこがうやむやになってると
K なんせ最初は改造やったわけやんか。そこのことをもうみんな知らんわけですよ
Y まあね。ライダーベルトで風を受けて変身する頃がありました
K 最初のライダーのことをね、もっと広めるというか、していかなアカンと思うわけです
Y 教えてあげて下さい
K「クウガ」で育ったこのボクが
Y それ大丈夫か
K(笑)本郷猛が改造される経緯について、あなたはどれぐらい話せます?
Y ショッカーが怪人を造ろうとして本郷猛を捕まえて……手術自体は成功したんやったかな?
K あのね。なぜ変身道具はベルトになったのか
Y 今そんな話してた!?
K ショッカーの中でもちょっと会議あったらしいで。「時計の方が良うないかあ?」言うて
Y え、ホンマにそっちへ行くの?
K(笑)なんかそこまで律儀に持っていこうとしたら長くなりそうだったから
Y ベルトの話がしたいんかいな
K うん
Y ……ええよ、それで
K ありがとうなあ
Y ええけど……なんやったっけ、ベルトになるまで?
K 最初は「時計の方が良うないかあ?」って話もあったのよ
Y まあ、時間も分かりやすいしね
K それで多数決んなったのよ。4人で
Y 奇数にせえやもう、割れるがな
K 創立時がもう4人やってん
Y 組織としてかなり最初の方のプロジェクトやったんやな
K 2人が「ベルトがええやん」て言うたのよ。「ドクロのバックルがカッコええやん」、当時ショッカーん中で流行ってたんやけどね、ドクロが
Y えらくパンクめいた趣味をお持ちのグループだったんですね
K ところがここで、もう1人が「時計がええですわ、ボク」と言い出したんですね
Y たぶん後輩やなあ
K「ボク時計がええですわ先輩」
Y こうなると4人目の意見が聞きたいな
K 4人目は「オレはネックレスがいい」言うてるわ
Y うーわ、ややこしなった
K これも後輩ですわ
Y うっとうしいなあ
K「オレのネックレス見て下さいよ、これドクロチャームついてんス。この感じで首からってカッコよくないスか?」
Y 時計のヤツより生意気やんか
K「先輩の言うベルトも分かるんスけど、やっぱコレっしょ、ネックレスっしょ」
Y むかつくわあ
K「おまえソレは違う」「おまえこれまで可愛がってきたけどソレは違う」
Y 先輩はえらい息が合うてんな(笑)
K 分かる?この感じな
Y うん、分かるよ、そんな感じやな
K「いや先輩、でもですね……」とネックレスの奴が言おうとしたとこで、時計の奴がガッと割り込んできて
Y ふむ
K「分かりました先輩、ボクはベルトでいいですわ」
Y ええ~!?えらい変わり身やな!?
K 状況を見たんやろな。ネックレスの奴はもう「おまえちょっと待てや」と
Y ははは(笑)びっくりするわな
K「ここは二人で言うてくとこやんけ」と。同期ですからね
Y そうやなあ、焦るなあ
K「いや、俺はもうええから」と元時計は言うわ
Y なんか腹立つなあ
K(笑)「もうベルトでええやんか。ベルトで出てきて決め台詞行こうや」って
Y 決め台詞?
K ショッカーの……ね、あるでしょ?
Y ……ありますね
K(笑)「ハイ、言ってみましょうか」「いや、そんなんされたらオレ勝てへんわ」
Y 訳分からんことなってきたな
K「もうベルトでええんちゃうんけ!おまえこそ気ィ使えや!」「えええ?」なってきて
Y 飛ばしたいわー、この話
K ははははははは(笑)
Y ここが主題じゃなかったらすぐ飛ばしたいわー
K そこはしゃあないやんか
Y まあ、ええわ……で?
K そんないざこざがあって
Y だいぶいざこざしたよね
K「分かりました、先輩」とネックレスのやつが言うたのよ。「じゃあ時計でいいじゃないすか」
Y おお!?揺さぶりに掛かったね
K 揺すぶってくんねん、ここで
Y 2-2に持ち込んであわよくばのパターンや
K そうそう。でもそんなん言うたら先輩がキレてもうて。ショッカー先輩が
Y さすがに嗅ぎつけるよね
K「オマエの考えてることは分かっとるぞ」と。そしたらネックレスのやつはもう萎縮してもうて
Y なんやねん、早いな
K「ああ、すんません、分かりました……ベルトでええです……」て
Y 意見が一致したかてもう、直れへんで、この組織
K ははは(笑)
Y 最初の怪人の作り方でもう屋台骨ガタガタやんか
K(笑)……まあ、そういう訳でベルトになったのよ
Y はい。ベルト秘話、以上!
K 以上!で、その次は……
Y 続くんかいな
K ここからや言うねん。次は「誰を捕まえようか」いう話になったのよ。「エエの行こう、どうせやったら。よく食うやつな」って
Y よく食うのはエエのか?
K あと声出せるやつな
Y パンクめいてて体育会系寄りなんやね、ショッカーは
K そんなんで藤岡さんが狙われて、ガー改造されて
Y「声出すやんけー!」なって(笑)
K 次「どんなんします?」言うて
Y 捕まえてからそれ言う?
K 言うのよこの人たち。先輩が「俺はコレがええわ」って出したのが、カエルのなんか
Y いや、カエルのなんやねん
K ジャンプ力重視みたいなとこやったんちゃうかな
Y なるほどね
K 彼らは躍動感が違うみたいなこと言うてたね
Y ええように言うたねえ
K 後輩は「ボクはコレがいいスわ」てまた言い出すんやけどね
Y またかいなー
K 先輩は「そんなんええから」言うたわ
Y さすがに今度は聞いたげへんのか
K なんやったんやろなー、今となっては幻やけど
Y あ……(笑)もう、それは明かされへんねや?
K この件はもう闇の中やわ
Y そうかー
K「オレはこれなんやけど」と別の先輩が出したのがトカゲの写真
Y トカゲ?
K「こいつは危ないときに自分のシッポを切ってでも生きようとする、そこがいいやんか」
Y なるほど。躍動感に対抗して生命力を
K そこを押してきたわけよね。しかしここで一人の後輩が
Y またなんか言い出しよったんかいな
K「いいや、コレでしょう」と出してきたのが……
Y 出してきたのが
K ………
Y ………?
K なんやったっけ……なんに決まったんやったっけ?
Y え……バッタ?
K ……バッタ、バッタを出してん
Y あなた今それが出てこなかったんですか
K(笑)「バッタっていうのは、なかなか死にませんよ」と。「トカゲの生命力とカエルの躍動感を併せ持ってますよ」と
Y 巧みなプレゼンやな
K「ところで親子バッタって知ってますか先輩」
Y うっとうしいな……はい
K「これ作って、もしオレらのこと親やと思ったら……背中乗れますよ」
Y あぁ?
K「ごっつええですよ(上目遣い)」
Y(しばらく笑いを堪える)
K みんな「うわ、ごっつええやん!」言うて色めき立って
Y ベルトであんなにぎくしゃくしてたのが!
K でも、さっきのやつはまだ完全にノり切らん部分があんのよ
Y ああ、何を出そうとしたのかすら分からんあの子が
K で、こいつがまた、改造のけっこう大きな部分を手掛けてるやつだったのよ
Y 大まかなデザインとかを
K デッサンもするわ
Y ははははは(笑)
K 全然ヒジ動かさんと、こう、ダーツ投げるみたいにして鉛筆を動かすのよ。みんな「おい、おまえダーツしてんちゃうんか」言うてよくからかってたけども
Y そこにそんなディテールいるか?
K(笑)んで、まあ、図面出来上がってきて、これを機械にガッチョンして、もう後はオートで改造が進んでいきますわ。んで、みんなで見てたんやけど
Y ガッチョンて……うん
K「おまえ……これちょっとバッタとちゃうんちゃうか」なって
Y あ!
K「皆さんボクの意見を無視したでしょ。復讐ですわ。ちょっとトンボにしたんです」
Y(笑)あれトンボやったんや!
K あんまりバッタっぽくないと思ってたやろ、おまえも?
Y 思ってたなあ
K これを本郷猛は台の上で聞いてるわけよ
Y あははははは(笑)「俺はトンボにされるのか!」
K ここまでも、横で話を聞きながら、ある程度心を作ってたのよ
Y「俺はバッタになるんだ、バッタ、バッタ」と
K それをもう受け止めようと思ってたらしいねん。逃げようと思えば逃げられたんやって、でもなんか、この場のノリを壊したくないみたいな
Y えらい潔さやなあ
K そんなとこにいきなりトンボや言われたもんやから
Y「話が違う!」
K 手足を台にくくられてるのが首だけグッと上げて「ちょっと、それ聞いてないよ」
Y ははははははは(笑)
K「いえ、これはコイツが勝手に……」「一人が勝手にやったことだろうがさあ、機械に入れちゃうまでの間にそこんとこ確認が取れてないっていうのはどうなのよ。それって全面的におまえらの責任じゃん?」この間も改造はどんどん進んでるんやけども
Y すごい画やなあ
K だからねー、みんなそこらへん分かってんのかなって。バッタ人間やいうのもアレ、ライダーが自分で言うてただけやからね
Y 実際はちょっとトンボなんやけども
K 自分ではバッタのつもりで腹決めてたからな。せめてバッタとして語り継がれたいっていうか(笑)だからもう、毎回勝ったあとは「おれ、バッタだから」言うて去ってったらしいけどね
Y なるほどなー
K だからね、みんなライダーに関して「改造人間としての悲哀」みたいなとこまでしか語れないけども
Y「バッタのつもりやった改造人間」としての悲哀も語れと(笑)
K 皆さんはちゃんと二重の悲哀まで語ってあげてください(笑)